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竜の奮闘

 竜は幸から遠藤樹里のメアドを教えて貰い、仕事終わりに映画の約束を取り付けた。

集合時間は20時で、場所は新宿である。


「っしゃ、帰るか」


 現在時刻は18時。

今日は事務所に帰らずそのまま家に帰り、そこから映画館に向かう予定である。

その時、スマホの着信が鳴った。


「はい」


「お前、最近日報付けてなかったろ? 事務が文句言ってたから今日は帰ってこいよ」


「あっ、マジっすか……」


 頭をフル回転させ言い訳を考えるも、何も思い浮かばず、結局事務所に戻ることになった。

それでもそのまま映画館に向かえばまだ余裕はある。

竜は営業車を目一杯飛ばし、事務所に戻ってきた。

デスクに座ると、日報を打ち始める。


「ちっ、めちゃくちゃ溜まってんじゃねーかよ……」


 これでは時間ギリギリになってしまう。

それでもめげずに手帳を見ながら行き先を入力していくと、ポン、と誰かが肩に手を置いた。


「飲み行くか」


「はぁっ? 行か……」


 しかし、振り返るとそこにいたのは上司であった。


「行くよな?」


 満面の笑みでそう尋ねてきた。

このタイミングの悪さ、どこかで自分がデートに行くという情報が漏れたのか? と思わず勘ぐる。


「……行きます」


 今までの努力は全て水泡に帰した。

そう思った矢先、幸が助け船を出した。


「あ、主任、今日は先輩結婚記念日で帰らないといけないんですよ。 だから僕が付き合いますよ」


「結婚記念日? そいつは行かなきゃマズいな! よし、帰っていいぞ!」


 去り際に小声で、「頑張って来て下さい!」

とエールを送られた。


「あいつ…… 貴公子だわ」





 駅まで走った。

もたついたが、次の電車に乗れば間に合う。


「はぁっ、またこのパターンかよっ」


 走りながらパスモを取り出し、改札にかざそうとした瞬間、電光掲示板が目に止まった。


「人身事故!? っざけんなっ」


 駅員に復旧の目処を聞くも、分からないと言われ、電車を諦める。


「もう時間がねぇ……」


 20時以降の映画では、帰りが遅くなり、お互い次の日の仕事に支障をきたしてしまう。

既に相手は準備を済ませて映画館に向かっているだろう。

変更もできない。


「うらあっ!」


 竜は道路に飛び出した。

体を張ってトラックを止める。


「バカヤローッ! 死にてぇのかっ!」


「俺は死ぬわけにはいかねぇ! 遠藤さんが待ってんだよ!」


 運転手は全てを察した。


「……乗りな、連れてってやる」


 



 20時ジャスト。

どうにか映画館にたどり着いた。

どこで待っていようか、とウロウロしていると、遠藤樹里がやって来た。


「お待たせー。 メール送ったんだけど…… 映画何見る?」


 急ぎすぎて全く気づかなかった竜であった。






 


  

 



 

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