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ジュリエット

 泥棒は、原作に沿った侵入方法だったんだけどな、とぼやきながらハシゴを降りていった。

遠藤樹里こと、ジュリエットが2人の方に向き直る。


「あなたたちは入っていいわよ。 少し話をしましょう」


「先輩、僕は外で待ってますんで」


「……えっ、マジかよ」


 一人取り残され、ドギマギしながらジュリエットの近くに向かう。


「座っていいわよ」


「あ、はい」


 しかし、どこに腰を下ろしていいのか分からず、床に正座する。


「……それでいいならいいけど。 あなた、名前は?」


「な、名前? 安藤竜です」


「アンドリューね。 私はジュリエット、将来に悲観しているかわいい女の子よ」


 話によると、ジュリエットはイタリア人で、わりと名家の出身らしい。

趣味は音楽鑑賞と演劇で、毎週コロッセオで行われているオペラを見に行くとのが楽しみとのことだ。

そこで恋愛を題材にした話などを見て、そういったものに憧れを抱いているようだった。


「でも、恋愛なんてあり得ないのよね。 結婚相手は親が勝手に決める。 多分、そこそこの家の相手だろうから、偉そうなやつに違いないわ」


 竜は妙に共感してしまった。

別に自分は恋愛をしたいと思ったわけでは無かったが、もっと色んな相手を知っておきたい、という願望はあったからだ。

竜は結婚しているが、付き合ったのはその相手だけであり、しかも強制的なものであった。


「何か、すげぇ分かるわ。 だったらよ、結婚するまでに他のやつと恋愛したらいいんじゃねぇの?」


「……あなた、話分かるわね。 私、お酒を飲んでみたいと思ってるんだけど、付き合ってくれない?」


 興味を持つものはどこの時代も一緒だな、と竜は思った。


「ちょっと待ってろ、コンビ…… 雑貨店に行ってくるからよ」


 一応雰囲気を壊さないよう気を遣う竜であった。

コンビニでワインと紙コップを購入し、戻ってくると、ジュリエットに注いで渡した。


「あなたって、最高ね!」


「……大したことしてねーよ」


 この後、しばらく話をし、舞踏会はお開きとなった。

帰り際、竜は思い切って遠藤樹里をデートに誘った。


「なぁ、今度映画に行かないか?」


「……それは私? それとも姉さん?」


「姉さん?」


「もう、鈍いわね」

 

「あ、そういうことか。 姉さんに伝えといてくれよ」


「分かったわ、連絡先はお友達に聞いてね」


 こうして、その夜は終わった。







 






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