VS泥棒
「後は泥棒だけだな」
それで全ての数字が揃うが、見た目で判別がつかないのはキテレツの時と同じである。
「でも、泥棒っていう位だから、やりそうなことも大体想像つかないですか?」
人混みに紛れてスマホを盗む、といった所か。
「……怪しいやつがいないかよく見とけ」
しかし、人混みと言ってもそこまで密集している訳では無く、照明も点灯している為、泥棒にとっては悪条件である。
また、外見的な特徴というだけで、相手がスリとは限らない。
無駄か? と竜が思い始めた時、幸がつぶやいた。
「先輩、もしかしたら最後の数字、9かも知れないです」
「何でだよ」
「今まで出た数字は2、8、4ですよね? 並び替えると428。 シブヤって読めるじゃないですか。 そして、最後に続く言葉があるとしたら……」
シブヤク、つまり、渋谷区である。
「……他に手もねぇし、それで行くか。 ダイヤルをミスって退場とかもねぇだろ」
2人が脇の螺旋階段を上ると、ボディガードが立っている部屋の前についた。
「暗証番号は?」
ボディガードに問われ、竜が答える。
「4289 」
「……正解だ。 ジュリエット嬢に失礼のないようにしろ」
少し拍子抜けした竜であったが、これで遠藤樹里に会える。
スマホのミラーで身支度を整え、扉を開けた。
すると、既に先客がおり、何やら揉めている。
「なぁ、一緒に行こうぜ」
「行きません! あなた、泥棒でしょ? 私は紳士にしか興味ないの」
部屋の窓が開け放たれており、どうやら泥棒はハシゴを使って中に入ったようだ。
「遠藤さんよぉ…… 頼むよ」
「誰それ? 私はジュリエット、14才のうら若き乙女よ」
遠藤樹里の演じているジュリエットは、一筋縄ではいかない女性であった。