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時空を越えて異世界へ  作者: シン
序章 異世界へ
4/8

リルの考察

 翌日。

 リルは自室で考え事をしていた。


(まさかあんなに凄いとは思ってなかったなー)


 昨日の魔獣との戦い。

 実際はリル1人でも勝てたのだが、3人の実力を見てみたいと思い一緒に戦ってもらったのだった。その結果は予想以上だった。

 まずは拓人だが、回避能力が優れている。

 能力を使ったのかは不明だが、先程の戦いで魔獣の攻撃を全て避けていた。盾などで防ぐわけでも、武器などで弾くなどでもなく全ての攻撃を避けたのだ。

 あの魔獣の岩石による攻撃はそこそこ強力だった。速さはそれほどなかったが、とにかく数が多かった。いくつかなら避けられなこともないが、あれだけの数を避けるのは難しかった。

 それを魔獣からかなり距離を取ってはいたものの、1度も当たることなくすべて避けて見せたのだ。

 攻撃の方はどうかわからないが、攻撃を避けるという点においては優秀な方だと考えられる。


(凜華もスゴかったなー)


 次に凜華だが、彼女の剣の扱いは見事なものだった。

 飛んできた岩石を避けつつ、避けきれない物は切っていた。また、魔獣の硬い皮膚も斬り裂いていたのだ。

 おそらく今までにかなりの鍛錬を積んできたのだろう。

 能力を使用した可能性もあるがそれだけではあのような真似は出来ない。かなりの実力があるのは確かだ。

 最後に(のぞみ)だが、彼女は間違いなく現時点での最高戦力だろう。

 彼女の能力は現在わかっているだけでも非常に強力だ。

 魔獣の突進から屋敷を守った光のバリア。

 飛んできた岩石を全て防いだ光の盾。

 そして、魔獣を消し去った強力な攻撃。

 おそらくあの3人の中で1番強いだろう。

 しかし、不可解な点もあった。

 能力を使ったとはいえ、魔獣を消し去るなど簡単に出来ることではない。

 ましてや彼女は能力を手に入れたばかりのはずだ。

 そんな状況であれほど強力な攻撃を繰り出せるはずがない。

 しかし、彼女はそれを実際にやって見せた。

 昨日3人に説明した通り最初から強力な能力を使うなことは出来ないはずだ。だが、もしかしたら、奇跡的に能力に適性がらあったのかもしれない。そうであって欲しい。

 もしも、そうでないというのならある可能性がでてくる。

 彼女の能力はおそらく魔法だろう。

 そして魔法だった場合はその可能性が考えられる。

 だが、それは有り得ないはずだ。

 それに、彼女は鍵を持っていると言っていた。ならば、その考えは破棄するべきだろう。その者たちが鍵を持っているはずが無いのだから。――もし、(のぞみ)が嘘を吐いているというのなら話は別だがそれは無いだろう。実際に鍵を見せて貰って確認を――いや、していない。拓人の鍵は確認したが、他の2人の鍵は見ていない。

 つまり、嘘を吐いている可能性もあるということだ。

 そして、(のぞみ)が鍵を持っていなかった場合、元からあのような力を持っていたということになる。その場合は先程の考え――(のぞみ)()()だという可能性がかなり高くなる。


(そうだとしたらマズイな)


 もしも(のぞみ)が魔族ならば、最悪の事態が起きたと考えていいだろう。

 リルは急いで3人を集めることにした。

 鍵の確認をする為に。

 しばらくして、3人はリルの部屋に集まった。


「ごめんね、急に呼び出して」


「それはいいけど、どうしたの?」


「キミたちがこの世界に来る時に手に入れた鍵を見せて欲しいんだよ」


「鍵、ですか?」


「うん。あの鍵は時間とか空間とか次元の壁とかを越えるための鍵なんだけど、少し気になることがあってね」


 リルに言われた通り、3人はそれぞれの鍵を取り出した。

 青い玉が付いている拓人の鍵、赤い玉が付いている凜華の鍵、そして()()()が填まっている(のぞみ)の鍵を確認したアストは首を傾げた。


(あれ? この色……)


 リルが気になったのは(のぞみ)の鍵に付いている玉の色だった。

 リルの記憶が正しければ、拓人たちの世界に送った鍵の玉の色は赤、青、緑、黒の4つだったはずだ。

 (のぞみ)が持っているのは黒で、送った中にあったのは間違いない。

 しかし、昨日あれだけの力を使ったにも関わらず、玉の色を真っ黒だった。

 これは一体どういうことだろうか。

 リルは考えを巡らせたが答えは出ず、この事は置いておくことにした。

 (のぞみ)が持っているのは間違いなく本物だ。

 鍵はリルが造り出して送った物の為、何者かによる意図的な妨害でもない限りは、それが本物かどうかわかるのだ。

 今、目の前にある鍵は本物であり、おそらくもう1つは拓人たちの世界あるはずだ。つまり、4つの内3つを3人が持っているということで間違いないだろう。


「ありがとう。もういいよ」


 リルにそう言われた3人は不思議そうにしながら鍵をしまった。


 その時、窓から天使が舞い降りてきた。


「リル様。ケルフィス様がお呼びです。すぐに天界まで来られるようお願いします」


 天使はリルに淡々とそう告げた。


「わかった。すぐに行く」


「それでは」


 リルの返事を聞いた天使は、軽く頭を下げながらそれだけ言うとすぐに窓から飛び去っていった。

 それを確認したリルは再び3人の方へ向き直った。


「そういう訳でボクは今から天界に行ってくるよ」


 そう言うとリルは、2人の返事を聞くと1枚のカードを取り出した。

 カードは白く輝いており、門のような物が描かれている。


  「――Dゲートオープン!」


 3人に背中を向け、カードを掲げたリルがそう唱えるとカードから眩い光が放たれ、それが収まると目の前の空間に穴が開いていた。

 長方形で人が通れるほどの大きさがあり、中は先程のカードと同じように白く輝いている。


  「じゃあ、行ってくるね!」


 リルがそれだけ言って穴に入ると、穴は小さくなっていき、やがて消えた。


「……」


「さすが異世界、なんでもありですね……」


「そうだね……」


 残された3人はただ呆然とそこにいた。

 ――が、すぐにソレ(・・)に気づいた。


「この気配……魔獣!!」


 (のぞみ)の能力は本人(いわ)く魔法であり、魔力を感じることも出来ると言う。そのため、魔力を与えられた獣である魔獣の気配も感じることが出来るのだろう。


「――っ!」


「それも5体いて、こっちに向かって来てる」


「すぐに迎え撃ちましょう!」


 このままではマズイと判断した凜華はすぐに迎撃しようと提案する。


「うん」


 そして、3人は魔獣の元へと急いで向かった。


 ――3人がいなくなった部屋の中では、黒いローブを来た男が不敵な笑みをうかべていた。


 ――同時刻、天界、神王の宮殿。

 そこにある1室には、リルを含め、神々が集まっていた。


 神王の側近ケルフィスは、全員が揃ったのを確認すると静かに口を開いた。


「神々よ、集まって頂いたことに感謝する。今日は重大な話がある。――神王様がお亡くなりになられた」

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