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時空を越えて異世界へ  作者: シン
序章 異世界へ
3/8

魔獣戦

 「さて、と……どうしようかな……」


 案内された部屋で日課の軽い筋トレを終えた拓人は、置いてあったベッドの上で天井を見上げながら呟いた。


「とりあえず能力は手に入ったはずだけど、明日1日である程度使いこなせるようになれるか?」


 拓人は既に鍵に付いている石の力で能力を手に入れた。先程の話を完全に信じた訳ではなかったが試してみたら実際に能力が使えたので、あとはどうやって使いこなすかをかんがえていたのだ。


「……まぁ、とりあえず明日考えるか」


 そう呟いた拓人はこの直後に起こる事など何も考えていなかった。



 ――拓人が考え事をしていたのと同じ頃。

 凜華も同じく考え事をしていた。

 最初はリル達のことをうたがっていたが先程の話は嘘をついているようには見えず、完全にではないが信用することにしたが、能力を今決めてもいいのか悩んでいた。

 今考えている能力にしてもいいが、戦いでどんな力が必要になるかわからない。今は決めなくてもいいだろう。そう判断した。


 その頃、(のぞみ)は部屋のベッドに腰掛け、じっとしていた。

 何をする訳でも無くただただじっとしている。その様子は少し緊張しながら、何かを待っているかの様にも見える。

 そのまま少しの時間が経過した時、不意に呟いた。


「……来た」


 ――その直後、外でとても大きな音がしたと同時に大きな揺れが拓人たちを襲った。


「は!?」


 拓人は急な揺れと音に驚きながらも何が起きたのか気になり、屋敷の外に出てみることにした。


「っ!?」


 外に出た拓人が目にしたもの。それは――巨大な生き物だった。

 まるで巨大な岩が歩いている。そういう表現がしっくりくる生き物だ。


「っ、魔獣······!」


 後から出て来たリルがそう呟く。


「これは……一体何事ですか!?」


 凜華が外へ出た瞬間にそう尋ね、続けて(のぞみ)も外へと出た。


「アレが魔獣だよ……魔獣は魔力を与えられた獣で、与えられた魔力によって体の色、見た目が変化して、その魔力に応じた魔法を使うことができるんだ。……いきなりで悪いけど、倒すの手伝って貰ってもいいかな? ボク1人じゃちょっと難しいかも……」


 リルの頼みに対して3人の決断に時間はかからなかった。


「っ、わかった」


「もちろんです。私も戦います」


「私も······!」


「ありがとう、みんな」


「その前にリルさん、何か武器はありますか? 出来れば貸して頂きたいのですが……」


「これでいい?」


 リルは何もない空中から剣を出し、そう言いながら凜華に差し出した。


「ありがとうございます」


 こうして、拓人たちにとって異世界で最初の戦いが始まった。


 ――夜の静寂の中、その生き物は猛々(たけだけ)しい雄叫(おたけ)びを上げると同時にその視界に捉えた4匹の獲物に向かって猛進(もうしん)した。

 それが、開戦の合図となった。


「ぅおっ!」


「っ!」


「わっ!」


「うわわっ!」


 拓人たちはそれぞれに魔獣の突進を回避する――が、その先には拓人たちが今さっきまでいた屋敷があり、その中には子供たちがいる。

 このままでは屋敷もろとも子供達が潰されてしまう。


「――っ、光の障壁(ライトバリア)!」


 (のぞみ)がそう言った瞬間、ドーム状に展開した光のバリアが屋敷を包み込んだ。

 魔獣はそれに構わず突っ込んでいったが、光のバリアに弾き飛ばされた。


「……間に合った」

 

 屋敷と子供たちは守ることが出来たが、それに安心している暇は無い。

 魔獣は再び拓人たちへと突進し、先程のようにそれを避ける4人。


「あの魔獣、猪だね」


 リルの言う通りこの魔獣は猪のようだった。

 4本の足に寸胴な体、そして鋭い牙が生えている。岩石のような皮膚を除けば、見た目だけで猪だとわかる。加えて、先程の突進。あれは猪突猛進と言うに相応(ふさわ)しかった。


「やぁっ!」


 魔獣が3度目の突進を仕掛けた時、リルが動いた。

 どこからともなく剣を取り出し、突進を避ける際に相手の右前足を斬りつけた。

 斬られた痛みによりバランスを崩した魔獣は、突進の勢いまま木々をなぎ倒していく。

 続けて攻撃をしようとする4人だったが、痛みに耐えながらも体勢を整えた魔獣が再び突進を仕掛けた。


「――フッ」



 一閃。凜華が回避をしながら左の前足を斬りつける。


(くっ、今はこれが限界か……)


 完全に切断するつもりで刀を振るった凜華だったが思ったよりも相手は硬くそれには至らない。

 だが、深手は負わせた。

 それにより魔獣は完全にバランスを崩し、後ろ足のみではどうすることも出来ず、頭から木々に突っ込んだ。

 いくつかの木々をなぎ倒した魔獣は、なんとか4人の方へ向き直ると突進を諦めたのか今度はその場で全身に力を込め始める。


「――っ!」


「な、何!?」


「これは一体……!?」


「地面が……揺れてる」


 そう。魔獣が力を込め始めると同時にそれに呼応するかのように地面が揺れ始めたのだ。

 その揺れが収まった時、魔獣の周囲にはいくつもの巨大な岩石が浮いており、次の瞬間にはそれら全てが拓人たちへと向けて射出された。


「うおっ!」


「やあっ!」


「ハッ!」


光の盾(ライトシールド)!」


 4人はそれぞれ避ける、切る、守るという動作で対抗する。

 しかし、岩石の数が多いため防戦一方となっていた。

 そんな中、(のぞみ)は防御をしながらも右手に意識を集中させていた。


焼き尽くす地獄の炎バーニングインフェルノ!」


 希が右手を魔獣へ向けてそう唱えると同時に、魔獣を灼熱の炎が包み込んだ。

 魔獣は苦しみながらなすすべもなく炎に飲み込まれる。

 炎は轟々と燃え盛り魔獣を焼き尽くす。

 炎が消えた時、そこには何も残っていなかった。







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