表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

イトトスガタ

作者: 羽宮悠夜
掲載日:2015/11/25

私が私のままでいる。それはどういうことなのか、今一度思惟してみる。


私の心はみっつの層から成り立っている。

ひとつ、決して他人の目に触れることのない真実。

ひとつ、大切な人間を欺く虚偽。

ひとつ、無関心な人間をもてなす優しさ。


どれも私であることに相違ない。ただ、本来私の心はひとつであったというのもまた事実だ。

弱きものは私に縋ろうとし、強きものは私を不幸に貶めんとする。

愛されなくて当然だ、私の真実が拒むのだから。


私の真実には、一度だけ君という名が存在した。愛を含んだ手が抵抗なく相手の躰を貫く感覚。その手は熱くて、でもそれは目頭に感じるような痛みで、そしてその手は、心まで伸ばしはしなかった。

そうして君との間を結ぶ糸は、繋がることなく絡まった。それを私たちが絆と呼ぶようになったのは随分と後のことだ。

君は僕の腕を引きちぎった。

手が触れた時からそれはもうわかっていて、その痛みに負けない強さを、私は既にもっていた。

絶たれた糸は二度と絡まりさえしなかった、張りを失って1本ずつ先端が触れているだけの偽物だった。

私から離れるのは容易なことで、対してその逆は、きっと不可能なことだった。

互いが互いを、そう思っていた。

それが唯一私たちが知るのことの出来たことで、私たちの全てだった。

優しさの内側、愛の外側は窮屈で、それ故に君の白さだけに染められていた。

けれど、いつしか糸は、君の心と共に離れていった。


私に恋人ができても、その白が穢れることはなかった。今も触れれば傍に姿を感じる。それは多分時間の止まった君ではなくて、今もどこかで笑っている……


私たちの生きた世界がもし同じだったのなら、他の誰よりも深く、結ばれていたのだろうか。


そうして私は思い出になった君を思い出して、寝息を立てる恋人の隣でまだ、私は泣くのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ