表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/5

5話

 そして一年後、あたしは素性を隠し、またイーリスの王宮に戻る事が出来た。そして妹のすぐそばに行く事も出来た。それからあたしは妹の影となり支え続けた。

 カインお兄ちゃんにはばれそうになったこともあるけど、基本的には話をする事無くすごすことが出来た。

 今は会いたいと思っていた妹の傍にいる事が出来て幸せだと思っている。妹はあたしと違って純粋で、優しすぎる所がある。それに、妹はすべての人は基本的に善人だと思っている所がある。もちろんそんなことは無い。しかし、妹は一度裏切ったり、罪を犯した者でも基本的には許してしまう。でも、人間は妹みたいに綺麗な人間ばかりじゃない。妹が許してきた人間の中でも、何度も妹に復讐しようと考えているような輩はいくらでもいた。でも、それを事前に摘み取る、汚い裏の世界の仕事……それがあたしの役割だと思っている。

 そして、妹がした大きな決断は、あたしのそういった裏の仕事が必要だったし、増え続けた。妹は気が付かなうちに、あたしがいろいろな物を処分している。

 もちろんあたしがやったとは気が付かれないように細心の注意を払いながら。

 妹の決断からどれくらいの月日が流れたのか……カインお兄ちゃんの国の様々な人達、それ以外にもいっぱい力を貸してくれた人達がいたおかげで、妹の大きな夢は達成されようとしていた。あたしもその夢を一緒に見て来たが、それが実現されようとしている事は解っていた。

 しかし、いつもそれは一番幸せになれるだろうと木に起こる事になる……

 もう後少し、そう思っていた矢先の事だった。あたしもあいつには気を付けなければならないとは思っていたが、まさかこのタイミングで事を起こしてくるとは思いもしなかった。こんな事なら、もっと早くあいつを始末しておけばよかった……

 しかし、もうそれは後の祭り。とにかく妹を逃がさなくては。今となっては誰が味方で、誰が敵なのかはもうわからない。とにかく信用できるのは、あたしとカインお兄ちゃんだけ。その二人をとにかく逃がせば、後はカインお兄ちゃんが何とかしてくれるはず。

 できればあたしもずっと一緒に妹の傍に居たい。でも、恐らくあたしの悪運もここまでだろう。とにかく、非常用の抜け道からカインお兄ちゃんとリーゼを逃がす。そして、その抜け道を入り口が解らないように隠す。その後あたしはこの場所が解らないように陽動を行い二人が逃げる時間を確保する。

 もうこれしかあの二人を無事に逃がす事は出来ないだろう。そして、あたしはリーゼとカインお兄ちゃんを抜け道に連れてくる、リーゼはあたしも一緒にと言うが、それは難しい。あたしはカインお兄ちゃんに眼で合図する。カインお兄ちゃんも解ってくれたようで、リーゼを連れていってくれた。でも、最後にあんなこと言うなんて、カインお兄ちゃんやっぱり解ってたんだな……

 そして、あたしは二人が行った後の抜け穴を見つからないように偽装するが、その最中に見つかってしまった。何とかおどけて見せてごまかそうともしてみたが、さすがにそんな事は通じず、仕方なくあたしはそこに居るすべての兵士と戦う事になった。何人いるか、なんてことは関係ない。とにかく、あの二人が逃げる時間を作れればそれでいい。たとえそれであたしの命が潰え様とも、それがあたしの役目。それからあたしの記憶はほとんどない。最後の兵士にあたしが剣を突き刺したところであたしは周りの状況を見ることが出来た。

 そこは酷い物だった。何人の人間がいたのか解らないが、とにかく地獄のようになっていた。まあ、その総てをあたしが一人でやったのだろう。そして、あたしの周りにはもう敵の兵士はいない。とにかく、あたしは二人が逃げる時間を作る事は出来た。後はカインお兄ちゃんに……

 ああ、結局あたしはこういう生き方しか出来なかったな……でも、それでも最後はあの子の……リーゼロッテの為に生きることが出来た……ごめんねリーゼ……もうあなたの傍にいる事は出来ない。でも、カインお兄ちゃんならずっとあなたの事を護ってくれるはずだから……

 あたしは幸せだった……最後にあたしはこう思える事が出来たんだから……あたしは幸せだったんだよね? お父さん、お爺ちゃん今から会いに行くね……

 さよならリーゼ……

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ