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無限ライフ  作者: ひなのなの
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1〜彼は初めて己の“異”に気付く。〜

第一話です。お楽しみいただければ、光栄です。

真っ黒。視界のすべてを埋め尽くすのは真っ黒な闇だった。

視界なのは定かではない。

何故なら自分は一体この光景を“目”でみているのかが分からないからだ。

人の姿は確認できないのに、声は聞こえていた。

それは、呟くような....囁くような....小さな....

「....ち....〜...!.ちー........」

真っ白。目が覚めた時、最初にそう感じた。

長らく暗闇にいた目は光を拒絶した。

眩しい、目が痛い、此処は....?

「あ、やっと起きた。ちー、大丈夫?」

千歳だから『ちー』俺の事をそんな変なあだ名で呼ぶ奴は一人しか覚えがない。

「........遥香(はるか)....なんで....」

「なんでって....そりゃあ、幼なじみがトラックにひかれた、なんて聞いて黙って家にいる程鬼じゃないけど....?」

安心したような顔をしたそいつはそう言って小さく微笑んだ。

その笑みに少し気恥ずかしくなった俺はつい目をそらし、

「........鬼って自覚はあるんだ。」

「....ばか。心配して損した。この野川遥香さまを捕まえて鬼呼ばわりできるくらいなら全然元気ね。」

花の水を変えてくるわ、と立ち上がった遥香に慌てて声をかけた。

「その....ありがと........」

小っ恥ずかしさから、若干うつむき加減にそう呟くと、遥香は小さく笑い、頷いてから、部屋を出た。


千歳優真、彼は養護施設育ちだった。

その赤ん坊は、山のふもとにある児童養護施設『ひだまり園』の脇に置かれたダンボールの中で眠っていた。

身元は分からなかったが、ただ一つ、『優真〜yushin〜』と刻まれたプレートが、チェーンで首からかけてあった。

苗字は、園の親たちがつけたものだ。

か細い腕を、足を、必死に動かし、やつれた頬を引き上げ笑う優真を、見て『長寿』の意味を込めた苗字にしたという。

その後彼はすくすくと育った。

因みに野川遥香(やがわはるか)は、施設横の住宅地に、住む、普通の女の子だ。

言われた事はきちんとこなすし、面倒見もいい。

皆が、彼をいい子だと褒めた。

そんなある日。

彼は中学の下校中、バイクに引かれた。

白昼堂々の飲酒運転が原因だった。

誰もが彼を死んだと認識した。

しかし....医者は園の親たちにこう言った。

「彼は....死にませんよ。」

親たちはてっきり、助かりました、一命を取り留めました。そう言ってるのだと思った。

しかし、医者の表情(かお)は嬉しい知らせを語っている顔には到底見えなかった。


そうだ。おもいだした。

「俺は2度、死にかけてる....。」

1度は中学の時にバイクにひかれ、2度目は今回、トラックに衝突された。

「そして2度とも、、死んでない。」

「........深刻な顔して何言ってんの?死んでないなら良いじゃない。なにか問題ある? 」

「遥香、俺は2回とも、周りにこう言われた」

『生きてたなんて、奇跡だ』と。

「....2度も奇跡に、救われるなんて幸運な男ね。」

「何言ってんのさ。生きてる方が変なん....」

「いい加減にしてッ!!!」

遥香は膝の上に拳を作って叫んだ。

「ちーは生きてる....。それでいいじゃない....。。」

怒鳴られて気付いた。

遥香がずっと、俺の目が覚めるのを待っていたことに。

待っていたときの、不安に。

「....ごめん。」

その言葉は自然と喉から滑り落ちた。

「こっちこそ、、急に怒鳴ってごめん。」

遥香は優真の目を見なかった。


それから優真は3ヶ月の入院を余儀なく宣告された。

歩けるようになる迄の目安とした日程だった。

遥香も家に帰るようになり、優真には一人の時間ができた。

その間に色々なことを考えたが頭に響く鈍痛と軽いめまいが激しくなり、それもできなくなった。



個室部屋のドアが音もなくゆっくりと開いた。

優真は窓を開け、カーテンを踊らす夜風に心地よさを感じながら、既にウトウトとしかけていた。

「 チトセ....ユウシン....くん....」

ゾクッと、身体中を何かが走る感覚がした。

「ハジメ....マシテ....」

彼は独特の間のあけた喋りで、ニヤッと口角を引き上げた。

風はピタリと止んでいた。



お読みいただき、感謝致します。次話も宜しくお願いします!

率直な、感想など頂けると嬉しいです!

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