プロローグ~始まりはここからだった。~
新シリーズです。
暇つぶし程度にも、お楽しみいただけたら、と思います。
お読みに頂いた後は、励みとして感想などを頂けると嬉しいです。
参考にしたいと思いますので、宜しくお願いします。
では、お楽しみください。
何でもない日々が過ぎ去ることなど気に咎めることもないだろう。いつものように学校へ行き、 いつものように授業を受け、いつものように帰宅する。共働きの両親が滅多に帰ってこない侘びしい家もまた、いつものことだ。
だがその日はそんないつもと違った。
事は下校前の、放課後から始まっていたのかも知れない。
「よぉ、ユウ。一緒に帰ろうぜ。」
俺は千歳優真という名からユウと呼ばれることが多い。
必要なときだけかけている黒縁の眼鏡を外し、 話しかけてきた友人の鷲宮奏汰に問い かけた。
「別にいいがお前部活は?」
「今日は雨だぜ?陸上部は中止。」
そう言われ、窓に目をやると確かに外は土砂降りだった。バケツをひっくり返したような…とはまさにこの事だ。
それにしても昼間は、まだ四月だというのに夏かと疑う程に快晴だったのだが。
ともかく傘を持っていなかった俺達は濡れて帰ることになった。一応意味が無いながらも通学鞄を頭に乗せて抵抗を示したが、ゲリラ豪雨には適うまい。傘を持っていようと効果が無かったところを見ているとどちらにせよ濡れたことに変わりはないのだろう。
「じゃぁな!ユウ!!」
「おぉー、またな。」
いつもの倍近い声を出そうと雨音にかき消されてし まいそうになる。
奏汰と別れ、一人家路を歩く。別段急ぐ訳でもなく、呑気に歩いていた。
「キーーッ!!」
嫌な金属音がした。
辺りを見回すも金属音の元らしきものは見当たらず、不思議に思いながらも足を進めると、今度は衝撃音がした。
丁度突き当たりにさしかかった辺りでの出来事だった。
衝撃音が聞こえた所にはコンビニがあった。
そしてそこにあるはずのコンビニには一台の大型トラックが突っ込んだようで、そこだけ崩れているようだった。
様子を見に行こう。
そう思い、足を前へ進めようとするのだが、なぜか自分の身体が石になったかのように身動き一つ出来やしなかった。
それどころか今更ながら自分は倒れていることに気が付く。
どうしたのだろう。
目の前には真っ赤なトラックが見える。
視界がぼやけてきて初めて、 優真は自分がコンビニに衝突したトラックに当たり、倒れたのだと気が付いた。
「俺は…死ぬんだ…」
目の前は真っ赤だというのに痛みが全くないのは死ぬ前の予兆なのかも知れない。
『速報です!!今日の午後五時頃、 貿易業者の大型トラックが近くのコンビニエンスストアに衝突し、中学生が意識不明の重傷との事です。』
『ですがその中学生はあの実験の実験台だということで、一命を取り留めることにはまず、間違いないかと思われます。』
『いやぁ悲惨な事故でしたね。雨で視界が曇って… という理由でしたが、あの実験台なら心配ないでしょう。』
『本当に、犠牲者がアレでよかった。奇跡ですよ、これは。』
プロローグ終了です。
ここから物語は始まります。
どうぞ、お付き合いください。