Collision dans la fabrication
「...ということだ。異議のある者は。」
新型AAFSの試験から数ヶ月が経った。今、ノーアヘルムは内陸の戦力も動員してヴィーグエルンに総力戦を仕掛けようとしている。
AAFSが撃墜された時の映像に映っていたのは人型の物であった。それを分析班が総力をかけて解析に当たったが、結局それ以上の事は一切分からなかった。
「はい。」
青年が挙手する。
「何だ。」
「今回の作戦の指揮者は。」
「今君の目の前にいる。」
「貴方、ですか...?」
「いいや、この子だ。」
そう言うと今作戦の作戦総司令官になると思われていた第1空挺降下師団出身のエヴァゲーノフ大将がブリーフィングルームの最前列に座っていたエレーナを見る。
「私...?」
「じょ、冗談ですよね?」
青年の顔に不安が表れる。ブリーフィングルームに集められた将官達も次第にざわつき始める。
「彼女は以前反乱を起こした人物じゃないですか!」
「しかし、我々は彼女に頼るしかない。」
「彼女が一人の兵であるのなら何の疑問もありません。しかし何故キャリアも何もない、しかも外部の人間である彼女に!」
「彼女の扱う兵器は我々が行えるものの数十、数百倍もの情報の収集、整理が可能なのだ。それに前回の反乱で明らかになったのは彼女自身の能力だ。彼女はそれほどの情報をあの箱と意識が同調しているかのように扱ってみせる。」
「その情報を司令部が受け取って指示を出せば...」
「分からないのか。我々にはとてもじゃないが扱えない。あんなもの全て受け取っていたらこちらのコンピュータがいつダウンするか分からない。」
「ですが...!」
「ちなみに、これは元帥直々に命令されたものだ。」
「っ...」
「この件について更に異議がある場合、元帥に直接すること。」
「....は。」
青年は着席する。視線が私に集中している。
「尚、作戦の決行日時については後日追って連絡する。内陸部といざこざがあるようで。」
「解散!」
場の者が重々しそうに腰をあげる。エレーナはというと、その場に座ったままだった。
「どうした、エレーナ君。」
「今の話は、本当ですか?」
「ああ、君に伝え忘れていた。」
「そんなの...無理です...」
「無理でもやってもらわねばならない。」
「総力戦ですよ!?何も知らない私が、指揮なんて...」
それを聞くと、エヴァゲーノフ大将は彼女の肩に手を置いて言った。
「いや、いざとなればやれるさ。」
「そう、ですか...」
「危うくなったら私が指揮を取る。思う存分やるんだな。」
「...はい。」
エレーナは敬礼をし、そそくさとブリーフィングルームを出て廊下を歩き始める。何故、元帥は私を指名したのだろうか。考えても無駄だが、彼女はつい考えてしまうのだった。
そして作戦決行までまだ日がありそうだったので、気分転換も兼ねて彼女は旅行を申請してみた。
意外な事に申請はあっさり通り、エレーナは高級官僚数人を誘い、今は亡き島へと向かう事にした。しかしあの島には空港などないので、長距離兵員輸送機から空挺降下することになった。当然高級官僚はそれを嫌がったので、結局エレーナと、希望者数人のみが向かった。十人程度の小規模な旅行団だ。
前日、それまでこの国では軍服しか着ていなかったエレーナはここに来て初めて私服を着る事を許可されていた事を思い出した。外出許可をもらい、街へ出て、可愛らしい服を選んだ。特別支給ということで、洋服代は付き添った士官が出してくれた。
翌日。旅行へ行く十人はそれぞれ特徴的な私服を着て大型機専用滑走路である第4滑走路へ向かっていた。内三人は同じ地方の出身で、民族衣装のようなものだった。これがとても楽とのことだった。
一人の男が口を開く。
「なあ、お嬢さん。」
「はい...?」
「今から行く島って、どんなところなんだ?」
そう、彼らは恐ろしい物を見る。それを承知の上でついてきているのだ。何故私がここまで彼らに対して怨念を持っているか。それを知るために。
「あそこは暖かいところで、外界との接点は一切持っていませんでした。なので、皆漁業をしたり、島独特の作物を育てたりして、自給自足の生活をしていましたね...。」
「なるほど...」
「しかし、ヴィーグエルンが侵攻して、無差別攻撃をして、島民は皆死にました。ほとんどの建造物は破壊され、島の形までもが変わった程です。」
「酷いな...何かそこにあったのか?」
「それは分かりません。突然でしたので...。」
「ふむ...島民はどんなだったんだい?」
「そうですね...皆、優しくて...面白く...て...」
「...」
「いい...人たち...ばっかりでしたっ...!争い事なんて...おきなかった...平和で...みんな...みんな幸せで...島の人皆が隣人で...皆いつも笑顔で...」
「そう...か...」
「お祭りが...あったんです。ルミエル・デ・シェールっていう...」
「lumiere de ciel...“空の光”か...」
「そうです。言い伝えによると...あの島が出来た頃からやっていて...いつも見守ってくれる空の星や月、太陽...そんな当たり前のものに、精一杯の感謝をするんです...」
エレーナの話は続いた。
「あの日になると...みんなはりきって...かざりつけ.....とか.....したんですよっ....」
「とくべつな..りょうりを...つくっ...て....みんなわらって...しあわせな......しあわせ...でした....」
「あははっ...ごめんなさいっ.....おもいだしたら....つい....」
エレーナは泣いていた。泣きながら微笑んで、男の目をまっすぐに見ていた。男はと言うと、申し訳なさそうに自分のつま先を見ながら話を聞くだけであった。
「何か...楽しい話、しましょ...ねっ...?」
涙を拭い、満面の笑みを振りまく。しかし彼女の瞳からは止めどなく涙が溢れる。
その度にエレーナは下を向き、袖でその涙を拭って、笑って見せた。そうしている内に、新しかった服の右手の袖はすっかり濡れていた。
すると、後ろの方で話を聞いていた衛兵が歩み寄ってきて、彼女にハンカチを渡した。
「だ、だいじょうぶですっ...ありがとうございますっ...!」
受け取って、すぐにエレーナは返そうとする。
「しかし、私はそれを使わないので...。使ってもらえる方がそのハンカチも幸せでしょう。」
「でも...」
「第一、間違えて上着に入れてきたものなので、見つかると怒られちゃいます。当番終わりがあなた方の帰国と同じ日なので、その時まで持っていて貰えるとありがたいです。」
「...ありがとうございます....。」
エレーナは受け取ったハンカチで涙を拭い、笑って見せた。
「この戦争が終わったら...」
一緒に旅行に行く男が口を開く。
「こんな醜い領土争いと人殺しが終わったらさ、皆でその島を作り直さないか...?」
「おお、それナイスアイデア!」
「なら今回はその計画を行う為の視察も兼ねて、かな。」
「いいね~!」
皆、口々に賛同の意を表す。
そう、“私”がヴィーグエルンに勝ちたい理由、それは恨みを晴らしたいという事もあるが、平和を取り返したい。ただそれだけなのかもしれない。ふとエレーナはそんな事を思う。
「さて、給油が完了しました。」
巨大な兵員輸送機がエレーナ達の前へ牽引され、後方の大口を開く。中から乗組員が手招きしている。
「さあ、行きますか!」
「今から俺達は現実を見る事になる...。」
「そうだな、偵察隊の話も聞いたことがある。」
「覚悟はできてるさ。」
エレーナは搭乗する直前、振り返って衛兵へ言葉を放った。
「帰ってきたらお返ししますね。」
しかしその言葉はエンジン音に掻き消され、衛兵の耳へは届かなかった。
最後の一人が乗り込み、後部ハッチが閉められる。そして、この冷たい鉄の壁で仕切られた空間は、今から死んだ場所へと向かう。
空気は重かった。
そして、それから数時間。その重い空気から開放される時が来た。
「皆さん、パラシュートは装着しましたね。」
「問題ない。」
「ああ...。」
「ご無事を。後部ハッチオープンします。」
再び怪物が大口を開ける。
「私から行きます。」
覚悟を決めたエレーナは、我先にと海に向かって飛んだ。世界がひらける。真っ白な雲の海を突き抜けると、ビフレスト島が見えた。
上空からこの島の全体を見るのは初めてだ。そう思っているうちにも海は急速に接近してくる。パラシュートを開き、ゆっくりと方位を調整する。そしてエレーナは見事に入り江に着陸した。
上空を見上げると、続いて九人がほぼ同じ地点に降下してきていた。すでに死体のほとんどは分解されていた。ここには何か特殊な微生物でもいるのだろうかと思うほどだった。しかし、建造物は酷い状態だった。風化が進み、この島が死んでいる事を顕著にあらわしていた。だが、自然は成長していた。荒れ放題だったが、島はすでに自然に戻ろうとしていた。だとしたら、この島は死んでいない。この島で死んだのはただ文化のみなのだ。
人間が死んだ。そこに文化は残っていない。唯一残っていると言うなら、人工の物、即ち建造物群である。
「すごいですね...」
後ろの青年が言った。
何がどう凄いのか、エレーナにはまったく伝わらなかったが、しかしここの景観が一種の廃墟であることに違いは無かった。この男はこれを見る為に来たのではないか、そう思うと怒りがこみ上げてくる。感情は連動する。怒りの感情は怒りを呼ぶ記憶を掘り起こし、エレーナは怒りを更につのらせていった。
「よし、ここに簡易拠点を建てるというのはどうだろうか?」
「突然何を言い出すんですか...?」
「そうか...こちら側に対して警戒はされてない...」
「確かに...。」
「しかし、それはさせません。」
「何故...?」
「ここは、私達の島です。私達の国です。あなた方に黙って占領される訳には行きません。」
「...そうか。そうだよな。悪い。」
「いえ、ならば我々は協力体制を取りましょう。」
「えっ...?」
「島の建造物、地形、とか...に一切手を加えないことを条件にします。」
「当たり前だよ、俺達もここを残しておきたい。」
「では、本部に戻ったらその話をしよう。」
「とりあえず...だなっ!」
一人が歩き出す。
「ま、待てよっ!」
慌てて皆が追いかける。すでにエレーナの怒りは収まりつつあった。
「...そうですね。」
自分でも何に対して言ったのか分からない言葉を何かに対して投げかけ、エレーナも後へ続いた。
それから、彼らは休暇のほとんどを使って島をある程度掃除し、元々エレーナの家だった場所で寝泊まりした。
瓦礫から出てくるのは、絵や貝殻のネックレス、それから、抱き合ったままの姿の骨、手をつないでいる者、石版...
遺品を見つけ出し、そして追悼を繰り返すたびに、彼らのヴィーグエルンに対する憤りは高まっていった。
休暇が終わり、小型の輸送船からゴムボートで士官が向かってくるのを岬から眺める彼らの決意は固かった。本国へ戻るとすぐに彼らは上層部に掛け合い、ビフレスト島を簡易拠点とすることを決定した。そしてそれから19日後の早朝、試験艦隊に護衛されながらビフレスト島へと大型輸送船が4隻出港した。
しかしその集団にエレーナはいなかった。彼女は立方体でそれを静かに見守っていた。特に何も無いと思われていたこの配備計画だったが、試験的にほぼすべての航空機に集中管理システムを搭載し、一斉侵攻の際司令部が状況を把握し、コントロール出来るような改造がなされた後だった。
密かに総攻撃を計画していたエレーナは、基地内の爆撃機に爆装させ、その援護を担う戦闘機や対地攻撃用の攻撃機にも武装を搭載、燃料の補給をしていた。
そしてエレーナは何者かが超音速機に搭乗しようとしているのを発見し、警告を発する。しかしその機は一切の警告には応じず、飛行機は滑走路へ出る。
「あれは何だ?」
「試験機です。」
「違う、ミッションを受けているのかという事だ。」
「確認できません。おそらく独断による行動だと思われます。」
「落とせ。」
エレーナが指示し、基地の対空防衛システムが作動する。しかし試験機は離陸体勢になってすぐ、一瞬のうちに高空へと舞い上がり、小さな点となった。
「速い...本部に再び確認を取り、応答がない、または情報がない場合は即座に撃墜する。」
「再度確認を取りましたが、本部からは照合中との返答。」
「ならば待機だ。警戒のため待機中の哨戒機に監視させろ。」
「了解。」
試験機と識別された機体がすさまじい速さで基地から離れてゆく。このままのルートをたどればヴィーグエルンへと着く。
「本部はまだか」
「応答ありません。」
「攻撃させろ。」
「了解。」
そう言うと彼女は意識を集中させる。世界が、見える。神になった感覚だった。箱が自分の支配下におけるすべての機体のコントロールを自動的に集中させる。エレーナはまるでシミュレーション・ゲームでもするかのように海空の半数の勢力を指一本たりとも使わずに動かせるのだ。
空からの支援にあたっていた機体のほぼ半数にも当たる機体が一度に方向転換を始める。速度の遅い旧式機でも、一度だけ、ビームアタックが可能な計算だった。ハードポイントはほぼ空。あるのはきっと中距離ミサイルが10発程度だ。機銃の一斉掃射しかあるまい。そう読んでいた。
加速の様子は見られない。きっとこれは成功する。エレーナは確信を持った。ポイントに到達して、30機ほどの支援機のうち、6機からミサイルが放たれた。
しかし目標機はそれをフレアで回避した。
最早機銃しかない。一斉に砲門は開かれた。
その瞬間、目標機は驚くべき機動を見せたが、少々遅かった。搭載していた武装をすべて破棄して、ロールする。エンジンに数発とキャノピを剥離させる程度に至ったが、完全に仕留めきれはしなかった。
「よし、分かった。ならば着陸後にすべて叩き潰す。」
そう言いながらエレーナは、基地内で準備されていた8割の航空戦力を移動し始めた。そして次々と各々滑走路を隙間なく使い、ヴィーグエルンへと向かわせたのだ。
全機発進、巡航高度に達したのを確認して、エレーナは深呼吸した。
「...あれを。」
「了解、IIAP、カタパルトに装填します。残り40秒。」
それは、全長170mもある巨大な核弾頭だった。
「装填完了、固定されました。」
「ブースター点火。」
「ブースター点火。」
カタパルトを搭載した巨大なロケットが水平方向に加速する。
「順次シーケンスをクリアし、発射せよ。後は任せる。」
「了解。」
これを撃ちこめばヴィーグエルンは全滅だ。我々の勝利なのだ。
「IIAP、射出されました。」
「よし、後はモニタリングだ。」
しばらくして、箱はこう言った。
「先頭の超音速爆撃機隊を後方にまわしては。」
「何を言っている。」
「他の戦爆連合を囮とするのです。」
「しかしあの戦爆連合にはサーモバリック爆弾を搭載した機が6機いる。」
「それは投下すればいいはず、超音速爆撃機隊のNOE飛行を行っての一撃離脱戦法を提案します。」
「...よし、飲もう。」
すぐさま空間を切り裂いて進んでいた超音速爆撃機隊は減速し、左右に散開して地形追従に入った。
しばらく経った。やけに静かで、不安が出始めた頃だった。
「目標機、沿岸への到達を確認。」
「届いたか。まあ、今となっては関係ない。」
「戦爆連合も続いています。距離5000。」
「かなり速いな。」
「目標機ロスト。」
「...?撃墜されたか?」
「墜落した模様です。」
「ならば構わん。戦闘開始だ。」
「了解、マルチコントローラー起動。」
「全機、TALD一斉放出。」
「TALD放出確認。」
爆撃機と攻撃機から戦闘機とほぼ同じ形状をしたTALDが切り離され、地上へと向かう。
「敵要撃機の上昇を確認。」
「おもちゃで遊んでいるがいい。電子戦機、AWACS、ジャマー作動。」
「ジャマー起動まで60秒。」
「要撃機が雲を抜けたらAWACSの目を使って全砲門を向ける。雲を抜けたらだ。」
「了解。」
「...来た。」
彼女には、見えた。雲を抜けてくるその男たちの瞳が。
「真っ直ぐだ...。」
恐怖すら感じるほどだった。しかしその直後、100機近くが一度に火を噴き、爆発し、炎上し、墜ちていった。
「固まり過ぎだ。SOD投下。」
「SOD投下。2,7,14番。」
「私の合図で散布、2度目の合図で起爆だ。」
「了解。」
投下されて4秒程。
「散布!」
瞬間、小さな爆発を起こし、数百という小型爆弾が帯状に散布される。
「...起爆。」
上昇した要撃機群が一度雲中へと退去しようとしていたところであった。規則正しく編隊を組んでいた物が崩れ、しかし退却を同時に行ったので横一列になったのだ。雲の海は一瞬炎の海と化し、巻き込まれた鉄屑達が炎をまとって海へと墜ちた。
「上々だ。」
「ジャミング装置用意完了、起動します。」
電子戦機から強力なジャミングが開始される。おそらく敵軍は今や全機孤立無援に近い状態であろう。
「敵残党、急上昇。」
「言われなくとも。もはや脅威ではない。爆撃準備。」
「爆撃準備。」
僅か4機になってしまった爆撃機の内、1機を残して爆弾槽の開放が確認された。
「まあいい。投下。」
3機から、サーモバリック爆弾が投下される。これが落ちれば最早超音速爆撃機が搭載している小型核弾頭も必要でないだろう。しかし、作戦はそうも上手くはいかなかった。
「なっ...!?」
敵要撃機の内の一気が機銃を掃射しながら爆弾へと突っ込んできたのだ。
「何をしている!」
直後、サーモバリック爆弾は高空で爆発し、UVCEで周囲の爆撃機が吹き飛ばされた。更にその爆風が他のサーモバリック爆弾にも誘爆を起こし、結果全爆撃機と電子戦機とAWACS、戦闘機のほとんどを失ったのだ。
「く...超音速爆撃機隊を突っ込ませろ!」
「了解。」
A/Bに点火し、超音速爆撃機がその本領を発揮する。随伴する特殊戦闘機も負けじと加速し、音速の壁を軽々と超える。
「今度こそ...!」
次の瞬間、エレーナは視界が暗転した。
「何...何だっ...!」
激しい頭痛。吐き気、めまい。
「う...くぁっ...!」
悶えながらも、目を開ける。しかしそこには一面の闇。誰かが彼女の名を呼ぶ。
「やめろ...やめろっ!」
頭痛はさらにひどくなり、視界が歪むのが暗闇でも分かった。
自分は、堕ちている。
どこに...?どこに堕ちているんだろう...。しかしそうではなかった。自分は、闇から、引きずり出されている...。
誰かの声が近づく。
「やめろ...近づくなっ...それ以上...私に...!」
はっと目を開け、身体が跳ねる感覚。その瞬間、超音速爆撃機と特殊戦闘機が自爆した。
「っ...はぁっ...はぁ...!」
何があったのか、全く分からなかった。
「ぅ...残存戦力は...!」
「こちらはIIAPのみです。」
「...まあいい...あれなら...沿岸に当たっても...」
しかし、何かがおかしかった。IIAPは超音速爆撃機より速度があったはず。
「本当にIIAPは残っているか...?」
「いいえ。」
「...!?」
全く理解できなかった。
「そう...こうなったら...」
エレーナは大きく息を吸い込み、言った。
――――ならば、私達が、行く――――




