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Le monde brûlé  作者: フーデリッヒ
ビフレスト島にて
1/17

Début de étrange.

これはある時代、ある世界の話。そこには大きな2つの国と、その他の小さな国が点在している世界だった。その小さな国のうちの一つ、ビフレスト島は温暖な島だった。とても平和で、住人はほんの100人弱だった。そこは独立していて、他の国と違って外部との交流は数百年の間一切なかった。

その島でも祭りはあった。

1年間で数十という祭りがあったが、1年の間で星が一番多く見え、もっとも輝きの強くなる日に行われる「ルミエル・デ・シェール」という祭りは長い間この島で盛大に行われてきた。


そんな平和で温かみのある島で、アファナシエフ・ユーリーは暮らしていた。

彼は今年で15になろうとしていた。働き者の少年である。

彼には姉がいるが、父と母はかなり昔に死んでいる。そのためユーリーの面倒は彼の姉、アファナシエフ・ライサがみていた。

ちなみにユーリーは友人達からは「ユーラ」の愛称で親しまれている。


ある夏の日、ユーラは普段通り朝早く起き、畑へと向かった。作物に水をやり、ふと空を見る。

「今日も空は青いなぁ…。」

ビフレスト島は基本的に高気圧が滞在していて、空に雲があることはほとんどなかった。そのため、日射もよくあり、作物は育ちやすい環境にあった。しかも独立した島なので、その地に適応した作物ばかりで、住民はあまり苦労もせず農作ができた。


「ユーラっ!何さぼってるの!」

ライサが遠くから叫ぶ。

「そ…そうじゃなくて…。」

「いいから働けっ!」

「は、はいっ!」

暖かな太陽の光の中、この島の時間はゆっくりと進んでいるようで。そこの木々は鮮やかな緑色をしていて、海はエメラルドブルー。その景色はまるで宝石のようだった。

そんな島では農作も漁業も盛んだった。そもそも貿易がないので、島人は当然自給自足の生活をしていた。

「ユーラーっ!」

少年が叫びながら走ってくる。

「あ、ヴァンだ!」

「はぁっ…はぁっ…ユーラ…あ、朝から働き者だな…。」

「あはは…いつものことだから…ってそんなに急いでどうしたの?」

「ああ、俺のとこで取れた魚を分けてやろうと思ってな」

そういいながら少年はおもむろに木箱から魚を取り出した。

「うわっ、大きいっ…!」

その魚は少年の腕ほどの全長があった。

「へへっ、魚は鮮度が命だ、早いうちにライサちゃんに料理してもらいな!」

「う、うん…ありがとっ!」

「じゃあなっ!俺はこれから漁に出るからよ!」

「うん、いってらっしゃい!」

そう言うと少年は凄い勢いで走り去っていった。

「ヴァンは忙しいなぁ…。」

「で、それを私に料理しろって?」

「うわっ?!お姉ちゃん!?」

「まったく…貸して、やるから。」

「うんっ…。」

そう言うとライサは木箱を持ち上げようとする。

「重っ…やっぱり運んで…。」

「分かった、じゃあ料理の用意をしておいて?」

「言われなくても…。」

そう言いながらライサは家の中へ入っていった。

「そんなに重かったかな…?」

箱を持ち上げてみる。

「うわっ、重っ!」

そう、重いのは箱だった。

「う~ん…手で持っていっちゃおっと…。」

ユーラは魚だけ取り出し、大急ぎで家に入った。

「じゃあ…って箱は!?」

「箱が重かったんだよ…。」

「まったく…男のくせに力のない子ね…。」

「ご…ごめんなさい…。」

「いいの、じゃあここにおいて、ユーラは待ってて。少しかかるから。」

そう言うとライサは手早く受け取った魚を捌きはじめる。

ユーラはすることがなくなったので2階へ上がった。建物も少し古くなっているので、階段を一段登るたびにぎしぎしと音がなる。しかしユーラはその音が楽しくて、よく意味もなく上り下りを繰り返しているものだった。



椅子に座り、机に向かう。

「さて…ちょっとならできるかな…。」

ユーラは趣味で島の様々なところから集めた石版のようなものの解読をしていた。それは恐らくこの島の先住民が残したものであるが、実際興味のある者はあまりいないので誰も解読をしないのだ。しかし彼にも特別な知識があるわけではなく、ただなんとなく集めた欠片を並べて繋げるだけだった。

「何が書いてあるんだろうなぁ…。」

と、いつもこの石版達を見ては同じことを呟く。その石版には絵のようなものもあった。しかしその絵には人らしきものとよく分からないものが書いてあるだけで、説明は読めない。

「海から何かを引き揚げてるのかな…。」

そうとしか見えない絵だった。しかし手がかりはそれだけ。石版に刻まれたその絵はとても状態が悪く、あまり詳細には見えない。

「ユーラーっ!」

下から叫び声がする。

「今行く!」

石版をしまい、一階へ駆け下りる。

テーブルの上を見ると、豪華な食事があった。

「うわ…すごい…。」

「ふふん、でしょっ?」

自慢げにライサが言う。

「朝とお昼の間だね。」

「ん、このくらいはなきゃね!」

そこには魚と共に今朝収穫された野菜の類も出ていて、テーブルを皿が埋め尽くしていた。

「いっただっきまーす!」

食べ始めてみるとなくなるのはあっという間だった。

「ごちそうさまでした…っと。」

ライサは食事の済んだ食器類を洗いはじめる。それも気にせずユーラは外へ飛び出す。

これから日が落ちるまで、石版とそれを読むヒントを探すのだ。


海岸へ出ると、少女が海を見ていた。

「お、エレーナ!」

ユーラは呼びかけたが、反応はなかった。

エレーナとユーラはいわば幼馴染で、小さい頃から一緒に遊んでいた。

シャリエ・エレーナという。

「おーい…?」

「うわっ!」

エレーナは驚いて飛び上がる。

「どっ…どうしたの!?」

「ごめん…ちょっとボーっとしてたんだ…。」

「いや、見れば分かったけど…。」

「ん~…。」

何か考え事をしているようだった。

「何を考えてるの…?」

「えっ?」

きょとんとした顔でエレーナはユーラを見る。

「えっ…?」

「え…?」

少しの間、沈黙が続いた。

しかし、場の空気に耐え切れず2人とも思わず笑い出す。その光景はとてもほほえましいものだった。

「いやぁ…じゃあ僕はいつもの場所に行くよ。」

「うんっ、行ってらっしゃい!気をつけてねっ!」

手を振るエレーナに背を向け、軽く右手を揚げて走り去る。そして少し岩場を歩き、洞窟へ入る。

洞窟の中は涼しくて、風が怪しい音を立てていた。そこは薄暗く、入り口から遠ざかると光がなくなる。そのためここに来るときにはいつも決まってたいまつを持ってくる。でなければ少し進めば真っ暗になってしまう。


ユーラはこの洞窟でたくさんの石版と、壁画を見てきた。ほとんどの石版はここから持ってきた。人はこないようなとても入り組んだ場所で、ユーラにとっては一人になって研究に没頭できる最高の場所でもあった。

「今日は少しだけ掘ろうかな…。」

カバンを降ろして壁を見る。そして彼はピッケルを手に取り、掘り進める。

この島の岩はとても硬いのだが、ここのエリアだけは柔らかいため、ユーラの力でも簡単に掘り進めるのだった。


そしてしばらく掘っていくと、石版を見つけた。

「おっ、あった!」

ユーラはそれに手をかけ、引っ張った。しかし少しの力では動かなかった。力いっぱい引っ張ると、石版は壁から抜けた。

しかしその瞬間、ユーラの頭に小石が当たった。

「ん…?」

ぱらぱらと天井から砂と小石が降ってくる。

「まずいっ…!」

そう思った瞬間だった。大きな音とともに、天井が崩れた。そのせいで洞窟の入り口への道は閉ざされた。

「危なかった…。」

今さっき掘り進んだところに駆け込んで、ユーラは間一髪岩の下敷きになるのを免れた。天井には穴が開いたので、そこから出るしかなかった。しかし高さが足りない。

「これじゃ死んじゃう…。」

しかしここで死ぬわけにはいかないので、少年は考えた。そしてしばらく考えたが、結論はこうだ。

「壁を伝って登ればいい!」

ロッククライミングの要領で壁を登る。そんなに高い壁ではないのでそんなに大変ではなかった。

外に出ると、そこは見たことのない場所だった。

「ここ…どこ…?」

広場のようだが、あたり一面は草木に囲まれている。

「とりあえず帰らなきゃ…。」

太陽の方へ向かって草木をかきわけながら進む。だが少し進むと、壁に当たった。

「あれ…?」

その壁には文字と絵が書かれてあった。

「これって…。」

「ふふっ、驚いた?」

女の子の声がした。

刹那、激しいめまいに襲われてユーラは意識を失った。崩壊する世界の中、彼は一瞬、女の子の影を見た。




次に目覚めると海岸にいた。

「ん…。」

「お、大丈夫かっ!」

そばにはヴァンとヴァンの父親がいた。

「まったく…こんなところで寝て…。」

「何があった?」

「ぼ、僕は…。」

洞窟での話はできなかった。それ以前にユーラは石版と洞窟の話はエレーナ以外にはしないことにしているのだ。

「泳いでたら溺れたか?」

「でもこんな格好で泳ぐか?」

「誰だって突然泳ぎたくなることはあるだろ?」

「でも服とか髪は濡れてないんだぜ?」

「う、確かに…。」

息子に言い負かされる父親の姿がそこにはあった。

「うぅ…も、もう大丈夫です…ありがとうございます…。」

ゆっくりと半身を起こし、2人の方を向く。

「おい、無理して動くなよ!」

「大丈夫です、もう大丈夫ですから!」

「そうか?ならいいんだが…。」

「じゃ、僕は家に帰りますね!」

「ああ、気をつけて…。」

そう言うとユーラは家の方へ走って行き、少しして再び戻ってきた。もう一度洞窟の様子を見ようと思ったが、日も暮れていたので大人しく帰ることにした。

「おかえりー。」

ライサが草を眺めながら言う。

「ただいま…何それ…?」

「ん?いや…よく分からないんだけどさ…。」

そう言いながらライサは見ていた草をユーラに渡す。

「これ、何か変だと思わない?」

一見しても何もおかしなところはなかった。

「いや、別に…。」

「ほら、見てごらん。」

ライサは草を取り上げ、光にかざす。それをユーラが覗き込む。

「道に落ちてたんだけど、このあたりじゃ見ない草だよね…。」

そういわれればこれまで見たことはなかった。

「たまたまじゃないかな…?」

「この狭い島で、十数年生きてて見つけられない植物があるっていうの?」

「ないことはないんじゃないかなぁ…。」

ライサは消極的なユーラに対して、少し苛立ちを覚えた。

「じゃあいいよ。」

「あ…うん…。」

その後もライサはしばらく草を見つめていたが、埒が明かなそうだったのでユーラは2階へ行った。2階へ上がるとそのままベッドへ寝転がる。

「何だったんだろう…。」

今日の昼過ぎにあったこと。何もかもが納得できなかった。


あそこには何があったのか。


何故あんな場所があるのに誰も気づかないのか。

「また明日探そうかな…。」

そんなことを考えてるうちに、ユーラは深い眠りについた….。

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