出会い
とある高校の校庭にて
「いっでェェェ‼」
清々しい卯月の空のした、深風虎優は倒れた。決して寝てしまったのではない。あくまで倒れたのだ。そのまま意識が飛び掛けたその時…ぐにっ
「いっでェェェ‼」
叫び声再び。虎優は誰かに踏まれたのである。日曜日の校庭に悲痛の叫びが響き渡った。
「いや~すまんな」
先ほど顔面を思いっきり踏んできた少女が言った。詫びれているように見えないのは錯覚だろうか。
そんなことを考えながら、虎優は少女をまじまじと見た。
幼さの残る可愛らしい顔立ち。綺麗な漆黒の瞳は、好奇心に満ち溢れている。今にもキラキラという効果音が聞こえてきそうだ。
「ん?」
ふと虎優は気づく。少女は笑っているのだ。笑うたびに後ろで1つに束ねられた黒髪が揺れた。
「何で笑うんだよ」
そう言いながら俺は少しばかり期待した。俺とこいつは知り合いで、俺がこいつを忘れているから笑われているのだ、と。
しかし期待は大きく外れた。
「か、顔…いや何でもない。」
「顔!?」
目の前の少女は肩を震わせながら驚くほど失礼な事を言った気がする。
「違うんだ。…うん…くっ」
「何が違うんだよ」
俺がそう言うのと同時に、ものすごい勢いで正面の窓が開いた。
そして……
開いた窓からものすごい勢いで上履きが飛んできた。
何がなんだかよくわからなかったが、それは俺に命中した。
「何で上履きが…?」
俺はそういうと意識を失った。
上履きは見事に頭に当たったのだ。
深風の意識が旅立つとき少女は目を見開いて言った。
「こいつ…あのすげぇ速さで飛んできたものが上履きって気づいた。」
すると、上履きが飛んできた場所から良く通る声が返って来た。
「へぇ…夜叉の人以外に初めて見破られたわ。てか凛狙ったのに…残念」
それを聞いた少女、黒雪凛音は苦笑した。
目の前で倒れた少年、深風虎優の頬には黒雪に踏まれた跡がくっきりと残っていた。ちなみにこれが笑った原因だ。額は上履きを受けたためか赤くなっていた。
そんな彼を見ながら黒雪は呟いた。
「ドンマイ、虎優」