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彼女は正義の味方だった

最終回です。どんでん返しとかそういうのはありませんがお付き合い頂けたら幸いです。

 地下駅から地上に出て、建物の間を走り抜けると寂れたブランコとジャングルジム、砂場がある公園に出た。周りは雑居ビルに囲まれてるうえにすぐ側の道路を歩く人影も殆ど見えない。

(よし、ここなら誰かに通報される心配もない)

 正直、この前みたいな男が相手だったらどうしようもないけど相手が喜多川なら話は別だ。一日中逃げ回るっていう手もなくはないがそれだと俺の体力が持ちそうにない。よってここは各個撃破に努める。

「ふっ……ようやく観念したか?」

 周囲の状況を確認し終えたと同時に道路側から喜多川が姿を見せる。洗脳(あくまで俺の見立てだが)されてるとはいえ、身体能力が上がる訳ではないらしく、軽く息を切らせながら俺との距離を縮めていく。

「観念とは心外だな。せめて腹を括ったと言って欲しいものだ」

「この僕に大人しく殴られ倒される覚悟かい?」

「いーや、どっちかと言えば戦う覚悟だ」

 喜多川との距離は目測で凡そ三メートルを切った。大丈夫だ、こいつの身体能力なら俺も良く知っている。体育の授業でも俺がこいつに負けたことなんてただの一度もない。それにこいつは喧嘩に対する知識もないと俺は踏んでいる。

「僕と戦うだって? ハハッ、随分と面白い冗談を言うじゃないか……ッ!」

 俺の言葉を挑発と受け取ったのか、俺との距離を二メートルを切ったところで喜多川が急に加速し、一気に距離を詰めてきた。フェイントも何もない、単調な動き。初撃は恐らく右からのフック。喜多川の体勢から推測するに、攻撃目標は顔ではなく脇腹辺りの筈……!

「──!」

 集中する。下手に攻撃に出て相手に反撃の隙を与えるよりは防御に徹して確実に反撃できる機会を探った方が勝機が高い。そう判断した俺は右側から迫って来る攻撃に対して右肘でガードする。所謂、エルボーガードという奴だ。勢いがそんなに無いとはいえ、裸拳で肘を殴れば当然、拳に相応のダメージを負わすことが出来る。

「ぐっ……、お前……!」

「俺は仮にも正義の味方に本気でなろうとしてた馬鹿野郎だぜ? 独学だが戦い方ぐらいは習得してるぞ」

 流石にここまで本格的な戦いはあの男を除けば今回が初めてだが、今でも暇を見つけては公園でシャドーをするのは俺の日課だ。喧嘩なら本当に数える程度だがあるが到底、実戦と呼べるような内容じゃない。言うなればこれは俺の初実戦デビューとも言える。にも関わらず、俺は自分でもビックリするぐらいリラックスして戦いに望んでいた。

(あぁそうか……。相手が喜多川だからこんなに落ち着いているのか、俺)

 冷静に自己分析してみた結果、俺が落ち着いていられるのはこいつを無意識にあの日、遭遇した男と比較してるからだ。確かに今の喜多川は正気の状態よりも良い動きを見せるが、それだけだ。ベースはあくまで喜多川だし、何より居心地を悪くさせるような闘気がない。一言でまとめるならコイツはやり易いんだ。と言っても防御一辺通しで勝てるほど甘くはないからこっちが攻撃する隙も作らなきゃならないけど……。

「くっ……そうやってまた僕のことを見下すつもりか? そうやって余裕でいられるのも今のうちだぞっ」

 ……今思ったんだがこいつ、さっきから雑魚キャラばりの台詞ばっか吐いてないか? なんかもう俺に倒されるフラグが総立ちしているように見えるのは気のせい──じゃあないよな。いつもの俺ならここで気の効いたジョークでも言ってやってるところだが今の俺にはそんな余裕なんてない。

 僅かな小休止を挟み、再度接近を試みてくる喜多川。ただし、今度はジワジワと歩み寄るような移動だ。そして充分な距離をつめたところで一気に加速してタックルしてくる。しっかり反応したつもりで避けたが躱しきれずバランスを崩し、それを見た喜多川がラッシュを掛けてくる。

(……っ。喜多川の奴、段々と上手くなってきてるな……)

 最初の方は動きもぎこちなかったけど攻撃の回を重ねるごとに硬さが取れていってるのが分かる。あとこれは洗脳の影響かどうか分からないけどエルボーガードしてるから相当拳を痛めている筈なのにこいつ、全然そんな素振りを見せやしない。やはり意識を刈り取るにはこっちも手を出さなきゃ駄目ってことか。

(それなら……っ)

 左からの攻撃をガードしながら一気に距離を取る。離れまいと肉薄してくる喜多川。そのまま砂場まで逃げ込むと同時に上体を捻りながら姿勢を低くし、右手で砂を振り上げながら喜多川の顔面目掛けて投げ付ける。即席の目くらましってところだ。

「う……っ! よくも僕の顔にそんな汚いものを──」

 奴が台詞の途中なのは百も承知だがこれは特撮アニメの撮影じゃないから律儀に待つ必要なんてない。側面に回りこみ、充分な距離を詰めて顎に掌手を打ち込む。

「──!」

 突然の衝撃に身体がついて来れず、糸が切れた操り人形のように倒れ込む。意識までは奪えなかったがすぐには回復しないだろうが──

「さっきのお返しだッ」

 言うなり、喜多川は立ち上がりと同時に砂を無造作に掴み、投げ付けてくる。咄嗟に右腕で目を庇うが完全には防ぎきれず、右目に砂が入り一時的に視力を奪う。

(浅かったか? いや、そんな筈はない……)

 格闘技に熟達している訳じゃないが少なくともさっきの一撃はキチンと顎を捉えていた。だが現実として、喜多川の奴はすぐに立ち上がってきた。一応、効いている素振りは見せてたから全く効いてないって訳じゃないだろうけど……洗脳の影響で打たれ強くなったのか? だとしたら結構厄介だな。脳への攻撃は下手すりゃ障害が残る恐れがある。殺る気満々の敵ならまだしも、こいつはそういう類の人間じゃないから出来るだけ頭部へのダメージは避けたい。

(いや、迷うな! 今の喜多川と戦うことに躊躇すればこっちがやられちまうッ!)

 見えにくくなってる右側に注意を払いつつ喜多川が視界から消えないよう正面に捉え、牽制するように睨む。向こうも片目だけで俺を見ているのか、それとなく動きが緩慢になっているのが分かる。

 喜多川が正面に立ち、両腕で壁を一枚作るよう構えながらゆっくりと肉薄してくる。くそ、アレやられると懐が遠く感じるんだが……アイツ、無意識にやってるのか? ……いや、今は余計なことを考えず作業をするだけだ。

「はっ!」

 掛け声と共にステップインと一緒に打ち込まれる右ストレート。見切ったつもりで動いたが左頬を殴られる。予想してたよりもずっと重い打撃に少々驚くが決定打には程遠い。と言っても何発も受けたら危ないがな。

(よしっ。この距離なら取れる!)

 向こうから接近してきたのはこちらとしては好都合だ。要らないダメージを貰ってしまったがそれは手数料としておこう。喜多川が身体を引くよりも早く右手で手首を取り、背を向けるよう身体を捻りながら左手で二の腕をガッチリ掴む。後は腕と上体の力を利用しつつ、左足で思い切り蹴り上げるよう足を上げ、右足でしっかりと踏ん張りを効かせる。柔道の代名詞とも言える必殺技、一本背負いだ。

「くっ、こんな技で僕が──」

 喜多川の言葉を待たず、俺は力を振り絞り地面に叩きつけることだけに専念する。体重が五○キロ強ある人間を投げるのは苦労したがどうにか不恰好ながらも投げ付けることが出来た。

「……ッ!」

 腕を通して衝撃が伝わる。喜多川は一本背負いなんて大したことないと思ってたようだがその実、路上において柔道技は非常に強力な技となる。人間の拳は殴り続ければ腫れるし、下手をすれば骨折してしまう。だが柔道の投げは拳を痛めることがない。しかも落下地点はアスファルト。畳みなら受け身を取ってそれで終わりだがコンクリートで固められた地面では例え受け身を取ったとしてもダメージは免れない。とはいえ、俺も本格的に柔道習ってた訳じゃないし動画を見つつ遊びの中で覚えただけだから本家からすれば練度も完成度もあったものじゃないけどな。

 一本背負いの余韻で動けない喜多川に追い討ちを掛けるように全体重を乗せた掌打を鳩尾に落とす。未曾有の衝撃と激痛が身体を支配し、喜多川の顔が苦悶の色に染まる。

「止めておけ、喜多川。喧嘩で俺には勝てないぞ」

「勝てない、だって? ふざけるなよ、勝てる勝てないは僕が決めることだ……ッ」

 裂帛の気合いと共に跳ね上がるように起き上がり、不安定な姿勢のまま強引に攻めに転ずる喜多川。フェイントも策もない、ただ正面から攻めてるだけの行動に対し俺は造作もなく顔面に拳を打ち下ろす。

 だが──

「なっ……!」

 俺がそれを確認するのと喜多川の拳が俺の顔を捉えたのはほぼ同時だった。捨て身で放たれた拳は深く入り、衝撃が突き抜ける。顔が大きく仰け反って側頭部から地面に不時着する。大した威力じゃないのに、不意を突かれたその一撃は想像以上に効いた。

(やべっ、足に来た……っ)

 すぐに離れなきゃならないというのに俺の身体は言うことを聞いてくれやしない。一刻も早く動かなければならないのに足に力が入らず、避けようにも避けることが叶わない。

「──!」

 不自由な身体に悪戦苦闘しながら上を見上げると肩肘を突き出し、全体重を掛けて攻撃を仕掛けようとする喜多川が眼に飛び込んだ。衝撃に備えようとするがあいつの肘が脇腹に突き刺さる方が速かった。

「あっ、が……ぁ…………」

 瞬間、過去最大級の痛みが俺の身体を襲った。鋭く食い込んだ肘はかつてない苦痛を与え、鈍りのように身体の芯に残る。たまらず脇を抑えてうずくまるがその直後に腹に蹴りが入り、俺を混乱させる。

 呼吸をしようにも痛みで思わず息を吐き出してしまう。自分が必死で酸素を求めているのに供給量が足りない気がして更なる酸素を求めようと肺が呼吸を命じるが、痛みをそれを妨げる。

 相反する二つの命令が脳内で目まぐるしく出て、身体が上手く動いてくれない。

「ハッ! いいザマじゃないか! キミみたいな庶民が僕を見下すからこうなるんだ! 正義の味方になる? そーいうのはな、世間じゃ偽善っていうんだよッ!」

 ありったけの罵詈雑言を浴びせて、それでも飽き足らず何度も蹴りを入れてくる。最初に受けたような痛みはない。身体が慣れてきたってこともあるけど充分な力が入ってないからだ。そう判断できるようになった頃にはようやく脳も冷静さを取り戻してくれたのか、思うように身体を動かせるまで回復していた。

 相変わらず頭上では喜多川が何かを言ってるがそんなのは耳に入らない。甘く入って来そうな蹴りを見定めて足を取る。起き上がりと同時に取った足を掬い上げようとするが体中が痛みを訴えるように叫ぶ。その痛みに平伏しそうになる心をどうにか繋ぎ止め、力を一気に解放する。

 急に足を取られたことでバランスを崩す喜多川。突然のことに慌てふためく姿が、その仕草が全てスローモーションで再生されてるかのように俺の脳裏に焼き付く。辛うじてバランスを取っている喜多川にトドメを刺すよう足をしっかりとホールドしたまま倒れ込むようにタックルを決める。すると自分でも驚くほど簡単に姿勢を崩すことが出来た。

 一瞬の浮遊感。そして衝撃。無我夢中での攻撃だったからそんな余韻に浸ることもなく、そのまま寝技に持ち込む。幸い、喜多川と俺はそれほど体格差がなかったのでどうにか取り押さえることが出来た。

(締め技で落としたいとこだが流石にそれはまずいだろうな……)

 技の掛け方ぐらいは知っているが俺は専門家じゃない。下手すりゃ落としたことに気付かずそのまま締め続けるなんてことになりかねん。よってここはより確実にダメージを与える方法に出る。

 腕を取り、打撃を打ち込みやすい体勢と角度を保持し、肘関節の側面(丁度身体の内側に位置する場所)目掛けて穿つ。

「~~~~っ!」

 予想外の痛みに悲鳴をかみ殺す喜多川。そりゃそうだろう。押さえ込んだ時、お前は馬乗りになってたこ殴りにされるか締め技を想定してただけに鋭い痛みに対しては全く警戒してなかっただろう。

「驚いたか? よく学校で椅子の角に肘がぶつかった時に痺れるところを狙い撃ちさせてもらったぞ」

 多分これは誰もが一度は体験したことのある痛みだ。何かの弾みで肘が椅子の角にぶつかった時、ごく稀にズキッと、鋭い痛みが走ることがあるよな? その部分はファニーボーンと呼ばれてる。何度もやれば流石にまずいが一撃だけでも効果は充分らしく、さっきの俺みたいに痛みに堪えてながら患部を抑えている。

「授業料だと思って受け入れろ。で、もう二度と喧嘩で俺に勝とうなんて馬鹿なことは考えない方がいい」

 それは別に見下してるからとかじゃない、俺からの純粋な忠告だ。人間誰しも得手不得手があるように、この漢に喧嘩は全く向いてない。むしろそんなことする暇があるなら少しでも将来の為に知識を蓄えておくべきだと俺は思う。腕っ節が強くったって今の時代、格闘家にでもならない限り何の役にも立たないからな。

 ともかく、喜多川が痛みに屈服している間に早くこの場から離れて──

「何処へ逃げようと言うんだ、六条星夜」

「っ!」

 名前を呼ばれ、振り向く。その瞬間、俺は確かに驚きのあまり息が詰まったのをハッキリと認識した。

 昨夜、俺を襲った電気使いの男。それだけでも手に余るってのにその隣には細身の男が待機してる。……やばい、これ完全に逃げ場ないジャン。

「友達相手に随分と時間を浪費したな。……全く、こんな男が次期当主だと思うと心底嫌気が差すな」

「だったら見逃してくれないか? その方がスッゲーありがたいんだけど?」

 動揺を悟られないように軽口を叩きつつ、冷静に二人を見比べる。俺を襲った男は左手をポケットに入れたままだが多分、あそこにはスタンガンが入っているに違いない。

 対する、細身の男は特に何かを持っている様子はない。見た目も理系っぽいし白衣に眼鏡なんて組み合わせからして直接的な戦闘要員ではないってことは何となく想像が付くんだが……。

「いえ、それが私共としても簡単に見逃して差し上げられない事情がありましてね。残念ですが星夜さんには大人しく捕まって頂くしかないんですよ」

 俺の提案を一蹴するように白衣を着た男が答える。そりゃそうだ。詳しい事情は知らないが少なくとも六条家は今頃になって第一子である俺を必要としてるんだ。しかもこいつらは見た限りじゃ下っ端。そんな奴等に拒否権がないのは火を見るより明らかだ。

「ふぅ……困ったものですね。素直に申し入れを聞き入って下されば私としても余計な手間を省くことなく、穏便に任務を遂行できると思ったのですが……」

「ガイ、この男に妥協案を提示したところで無駄だ。こいつは大人しく従うよりも戦って勝ち取る選択をする人間だ」

「そのようですね。全く、ベイに楯突いただけのことはありますよ」

 ガイと呼ばれた白衣の男は何処か面白そうに笑い、ベイと呼ばれた男は左ポケットからスタンガンを取り出す。いきなり実力行使に出るとかどんだけ気が短いんだこいつ等は。

(いや、そんなことより今は逃げ切ることだけに集中するんだッ!)

 不幸中の幸いとも言うべきか、俺の身体はそれ程ボロボロではないからまだ思うように手足を動かすことが出来る。状況は最悪であることに違いはないがもしかしたら……という淡い希望は抱いている。というか今は藁にも縋ってないと心が折れそうだが──

「ソイソル、この男を捕らえろ」

 ガイが指を鳴らすと何処からともなく全身網タイツの戦闘員が現れ、俺を取り囲む。あぁくそ、これで文字通り完全に退路を断たれたじゃねぇか……ッ!

「キーッ!」

 近くにいたソイソルとか言う雑魚キャラが如何にもな叫び声を挙げながら飛び掛ってくる。あまりに不用意な接近だと思いながら俺は当たり前のように顔面目掛けて拳を打ち抜く。するとどうだろう──これまた面白いようにソイソルの身体が空中で大きく回転して派手に地面へ不時着する。えっ? なんで今のでやられたりする訳? これじゃあまるでかませ犬じゃねーか。だがそんなことで他のソイソルたちが臆する筈もなく、二人三人と続けて俺に飛び掛ってくる。一人ずつならともかくまとめて襲われてしまえば瞬く間に取り押さえられる。だからここは防御に徹するのが一番だ。

 腕を伸ばしてくるソイソルから巧妙に逃げつつも袋小路にだけは追い込まれないよう必死で逃げる。だがこの時の俺はあることを完全に失念していた。

「ふんっ、隙だらけだぞ?」

「!」

 しまったと……そう思った時にはスタンガンを媒介にした電撃が俺の身体を直撃した。バリバリという効果音でも付きそうなくらい、身体が痺れて四肢の自由を奪おうとするが、目の前に迫ってくるソイソルを見た瞬間、動かないだろうと思っていた身体が急に動いてくれた。

「…………」

 その様子を見ていたガイは顎に手を添えて考え込む素振りを見せ、ベイは驚いた様子で俺を凝視する。自分でもなんで急に動けるようになったのかは謎だが、そんなことを考えてる余裕なんて一秒もない……ッ。

(突破するならベイにした方がいい!)

 見た目だけで判断するなら如何にもインテリ系のガイにした方がいいかも知れないが奴の実力は未知数。それならある程度、手の内が分かっているベイのいる側から突破した方が逃走できる確率が高いと俺は判断した。

「この俺を簡単に抜けるとでも思ったか?」

 しかしそれは所詮、確率の話であって現実の話ではない。充分な距離を取ってフェイントを混ぜて抜こうとするがあっさりと見抜かれ、簡単に取り押さえられてしまう。悪足掻き程度に力の限り抵抗してみるが片腕で簡単に抑え込まれた。

「コイツでも喰らって大人しくなるか?」

 右腕で俺を押さえ込みながらベイは左手に持ったスタンガンをこれ見よがしに見せつけ、スイッチを押してアピールする。あれを首裏に押し当てられればあっと言う間に意識を奪われ、バットエンドを迎えてしまうのは明らかだがハイそうですかと素直に頷けるほど、俺は利口な人間じゃない。最後の最後まで抵抗して何がなんでも逃げ切ってやるという想いだけで抵抗するものの、それを嘲笑うかのように奴の左腕が無慈悲に降ろされ──

「──!」

 スタンガンの電極部分が押し当てられるよりも早く、変化は起きた。何かに気付いたかのようにベイが飛び退き、かと思えば俺のすぐ上を何かが高速で通り過ぎた。何が起きたのかと思い、上体を起こしながらその方向を振り向くと──

「君江さんッ!?」

 なんとそこには、育ての親である君江さんがいるではないかっ! しかもなんか黒い忍者衣装なんか着込んじゃって……。君江さんって確か技術部の人間じゃなかったっけ? 人づてに聞いた話だからあまり信じちゃいないけど……。

「ふんっ、誰かと思えば裏切り者のご登場とは……。わざわざ俺達に殺されに来たとでも言うのか?」

「あら? 私が年中引き篭もってるだけの女だと思ったら大間違いよ」

 あぁそうか。そういえば君江さんも昔は六条の姓を名乗っていたんだっけ。だからコイツ等が君江さんを裏切り者と言うのは納得できるんだけど……やっぱり今でも信じられないな。君江さんがその昔、六条の姓を名乗っていたなんて。

「それより聖、立てる?」

「えぇ、まぁ大丈夫です」

 気丈に答えながら起き上がって、上着やズボンに付いた汚れを叩き落とす。君江さんが手にしている武器は日本ではポピュラーな手裏剣と小太刀サイズの忍者刀。科学者って言うぐらいだからもっと近代的な武器を想像してたんだが……。

「合図したら一気に走りなさい。そして公園を出てからまっすぐ東に向かって頂戴」

「分かりました」

 事情を訊きたいのはやまやまだが悠長に構える隙など皆無に等しい。君江さんがどうして夜城に組したとか、六条家を見限った理由とか、知りたいことは山ほどあるけどそれは全部終わってからだ。

「やれやれ、まさか疾風の君と呼ばれてた貴女と戦う日が来るとは、人生何が起こるか分からないものですね」

「そういう貴方は何者? 少なくとも私が居た頃にはアンタみたいなヒョロイ男なんていなかったと思うけど?」

「えぇ。私は裏切り者である貴女に代わりに補給された人員ですから」

 眼鏡をクイッと上げて、何処か愉しそうに語るガイ。今までの素振りや会話からしてこいつが君江さんに勝てるとは思えないんだが……。

「ですが、何事も油断は禁物ですよ?」

「っ!」

 その言葉を引き金に、ハッとした表情をする君江さん。かと思えば電光石火の早業で手裏剣を後ろへ投げる。釣られるようにして振り向くとちょうど喜多川が手裏剣を避けていた。

「なっ……うそ、だろ?」

 それは喜多川が立ち上がったことに対してではなく、超人的な回避を見せたことへの驚愕。ついさっきまで俺と戦っていたあいつはあんな動きを見せなかった。しかも今の喜多川はなんか様子がヘンだ。……いや、俺と対峙した時から様子がおかしかったけど今はそれ以上の違和感を感じる。なんていうか……死んだ魚の眼でこっちを見てるような気がするんだが。

「余所見をしたな?」

「ッ!」

喜多川に気を取られた隙を突かれ、ベイが電撃を飛ばしてくる。完全に不意を突かれた形での攻撃はあっさりと決まり、一際大きな音を立てて君江さんの身体を貫く。

「ふんっ。昔のお前ならあの程度の奇襲など造作もなく避けられたというのに……夜城家では相当ぬるま湯に浸かっていたようだな?」

「あら、言ってくれるじゃない……」

 電撃を受けた直後であるにも関わらず、君江さんはすぐに忍者刀を構えて俺を庇うように立ち回る。さっきからずっと逃げ出すタイミングを伺ってるんだがその隙が全くない。……ま、向こうに言わせりゃそれは当たり前っちゃあ当たり前なんだが。

「けどベイ、貴方如きが私に勝てるとでも思ってるの? 私にただの一度も勝てなかった貴方が……」

「見くびるな、君江。昔の俺と一緒にすると痛い目を見るぞ」

 言いつつ、ベイは右ポケットから新たなスタンガンを取り出す。左手に持ってるのと全く同じタイプのように見えるが……まさか映画でいうところ二丁拳銃的な奴か?

「スタンガンの両手持ち……なるほどね。確かに私も覚悟を決めないとまずいかもね」

 そういう君江さんの表情は険しくなっていた。前には六条家お抱えの幹部に後ろは操られてる喜多川(それも異様に強くなってる!)に加え、外堀を埋めるように待機してるソイソルとかいう雑魚キャラ達……。

「(聖……)」

 ふと、何の前触れもなく君江さんが小声で俺を呼ぶ。ベイから少しも眼を離さないままで。

「(三秒後、眼を閉じて耳を塞いで。良いわね?)」

「えっ……?」

 俺の承諾を待たず、君江さんは電光石火の如く手裏剣で二人を牽制する。飛来してくる手裏剣に対してベイが最小限の力で全ての手裏剣を弾き落とし──

「ハズレ。こっちが本命よ……ッ!」

 ベイが手裏剣に気を取られた僅かな隙を突いて、懐から円筒状の物体を取り出してピンを抜く。それが何なのか理解するよりも早く、俺は言われた通り眼を閉じ、両手で耳をちからいっぱい塞ぐ。

 刹那──巨大な音と光がその場を支配した。対テロ組織で特殊部隊が使うスタングレネードって奴か……!

「今よ、早く!」

 君江さんにせかされるように俺は疾駆した。喜多川とソイソル、そしてガイは光と音の余韻で動きを封じられたがベイだけは違った。誰よりも早くダメージから回復して俺の行方を阻もうと立ちはだかる。だがそれでも俺は足を止めない。ここで止まってしまえば俺は君江さんの信頼を裏切ることになるからだ。

 スタンガンが光り出し、電撃が飛んでくる。そう認識した時、俺の前に別の影が躍り出た。影の主を確認することもなく、俺は真っ直ぐベイの横をすり抜け、未だフラフラしてるソイソルを押し退けて全力で公園から去っていく。

 だが──

(これで本当に良かったのか……?)

 後ろを振り向かず、指定された通り東へ向かって走っているけどその実、俺は酷く悩んでいた。冷静さを欠いてた訳じゃないし、俺が取った行動は多分正しいものだと思う。普通に考えて、正義の味方気取りの俺が手助けしようと息巻いたところで何も出来ないのは自明の理。

それは違う──

 いや、そんなことはない。だってそうだろ? これはゲーム感覚で参加できるようなものじゃない、本物の戦いだ。俺に限っては命を奪われるようなことはないにしろ、俺が足を引っ張ることで君江さんが死ぬことは充分考えられる。だから俺に出来ることなんて何もないじゃないか。

 本当にそれでいいのか──?

「………………」

 走って逃げなきゃならないのに、急に足を止めて道の真ん中で棒立ちする。本当にそれでいいかって? そんなに良くないに決まってる。君江さんの言葉に従うってことはつまり、俺のかぞく栂野君江を見捨てるってことじゃないか。

(これじゃあ、夜城と同じじゃねぇか……)

 数十秒前に取った自身の行動を振り返り、心底自分が情けない野郎だと思う。偉そうに大口叩いたクセに、ちょっとトラウマと遭遇しただけで逃げ腰になってそれを正当化しちまってるんだ。その選択は世間から見れば正しいものであり、皇聖からすれば間違いでしかないってのに……。

 俺は──無意識に自分を押し殺していた……。

 なら戻るべきか? 紛いなりにも今でも無謀な夢を見続けてる自分を騙さない為にあの場へ舞い戻って助けようとして、足手まといになるか? いや、足手まといになるとは限らない。少なくとも俺への殺害命令は出てないからそれを逆手に取れば或いは……。

だがもし喜多川を盾にされたらどうだ? いくら家族を助けるとは言え、その為に友人を見殺しにして──

「~~~~っ! あーもう! 面倒なこと考えるのは後回しでいいだろッ!」

 思考の螺旋に囚われる前に額に一発、ゲンコツを入れる。恐ろしく原始的な手段だが実際、俺みたいな単純な人間はこれやるだけで随分と落ち着きを取り戻すことが出来るもんだ。……あぁ本当、周りに人がいないのがせめてもの救いだなぁ。

 とにかくこれで腹は決まった。足手まといとか喜多川がどうとかもうそんな面倒なことは考えず、ただ君江さんを助けることだけを考えよう。後で叱責されようが説教受けようがそんなのは知らん! その時はその時で考えればいい! そう思い、一度来た道を引き返そうとした時、曲がり角から見覚えのある人影が目に飛び込んできた。

「何処に行く気? 六条星夜」

「その声……夜城か」

 何とも最悪なタイミングで遭遇しやがる。つーかお前、少しは空気読めっつー話だよ。

「急いでるんだ。退いてもらうぞ」

「栂野さんを助ける気?」

 まるでこちらの事情を知っているかのような口ぶり。まさか夜城の奴、一部始終を見てたのか?

「事情は分からないけど今のあなたに栂野さんを助けられるって本気で思ってるの? 身体はボロボロ、しかも敵は一度キミに恐怖を植え付けた幹部クラスの人間。上手くやりあったところで勝ち目なんてないよ」

「勝ち負けの問題じゃない」

 厳しい表情で俺を凝視する夜城を睨み返すように見つめ、俺は力を込めてその言葉を口にした。戦う時の夜城は別人かと思うほど表裏が激しいがこうして対峙してみると改めて分かる。夜城が口先だけで正義の味方になったんじゃないってことが……。

「前に一度言っただろ、あの人は俺にとっては家族も同然なんだ。例え俺が悪名高い六条家の人間だったとしても、家族を思うのは当たり前のことだ」

「そう。……でも、キミは一つ勘違いをしてる」

 勘違いだって? 一体何を言っているんだ夜城の奴は。

「確かにあいつ等はキミの確保を命じられてる。でも場合によっては殺害することも許可されてるのよ。……分かる? あの場に戻ればキミは高い確率で殺されるってこと。死ぬのが怖いなら──」

「それでもだッ!」

 夜城の台詞を遮るように、大声で夜城の言葉を否定した。

「俺だって死ぬのは怖いって思うさ! けどな、たった一人しかいない家族を失うってのはある意味死ぬよりも辛くて悲しいんだ。自分の死は一瞬でも人のそれはきず深い後悔として残っちまう。そして俺は傷を負う前にそれに気付くことが出来た。だから、君江さんを助ける」

「………………」

 依然として厳しさを保ったまま、夜城の視線が俺を射抜く。夜城に伝えたいことは全部伝えた。それでも駄目というならやっぱり俺は彼女と戦わなきゃならない。それは悲しいことだけど、失うものの大きさを考えれば仕方のないことだ。元より俺は欲しいもの全てを手に入れられるほど器用な人間でもなければスーパーマンでもないんだから。

「…………」

 二秒、三秒とお互い無言での睨み合いが続く。このままこう着状態になるのではないかと危惧し始めた頃、夜城の方から沈黙を破った。

「……やっぱり皇君は根っからの正義の味方なんだね」

「夜城……?」

 えーっと……これ一体どういう状況? なんかいきなし夜城が俺を元の呼び名で呼ぶしいきなし微笑みを向けたりとか……一体全体どうなってるワケ?

 俺が一人で混乱してる様子に気付いてる筈なのに夜城はそんなの何処吹く風とばかりに歩み寄ると服の下から手の平サイズの金属棒を渡した。

「これは……?」

「うちの開発チームの作った特殊警棒。今は収納状態だけど棒の長さは小太刀ぐらいまで伸びるから」

「そ、そうか……。けど夜城、なんで急に──」

「栂野さんを助けたいんでしょ? だったら早く行こっ」

 そうだった。今は悠長に話してる場合じゃない。どうして夜城が急に協力的になったかは置いといて、これに便乗しない手はないんだ。

「行くぞ夜城。優しくふんわり且つエキセントリック的に登場するぞ」

「分かった──て皇君、冗談なんか言ってる場合じゃないでしょ!」

 うん、分かってる。分かってるんだけどなんかさっきのお前を見て急に懐かしさっつーか何というか……まぁそういうのがこみ上げてきたからつい、いつものノリで言っちまっただけなんだ……。いや、本当今の俺、超マジだから、な?


 時は少し遡り、聖が逃げ出した直後の現場にて──

「閃光弾とは賢しい真似を……。だが、俺にそんな小手先の技は通用しないぞ!」

 覇気を纏い、咆哮と共に二つのスタンガンで電撃を溜め、一秒足らずで放出する。先のものとは威力も速さも比べ物にならないその一撃に対して、君江は手裏剣を頭上に投げる。するとどうだろう。真っ直ぐ標的へ向かう筈だった電撃は急遽、方向転換をするように手裏剣が向かった方角へ軌道修正しようとする。

(……ッ。やっぱりそう上手くはいかない、か……)

 完全に軌道が逸れた訳ではないが、逃げる時間だけは確保できただけでも上出来だと思いつつ、君江は忍者刀を抜刀する。先の電撃を受けた際、君江が隠し持ってる金属製の武器は帯電状態になった。それはつまりベイの能力である電撃を引き付けやすい状態にある。君江はそれを逆手に取り、攻撃の軌道を逸らそうとわざと手裏剣を明後日の方向へ投げたのだ。結局失敗に終わったけれど。

 攻撃の軌道が僅かに逸れたことに多少驚くものの、ベイは休むことなく電撃を飛ばす。スタンガンで宙を切る度に鞭に変化した電流が蛇のような動きをして君江に襲い掛かり、それらを一つずつ確実に忍者刀で切り払う。

「おっと、疾風の君。僕の人形がいることも忘れないでもらおうか?」

「くっ……!」

 ベイが繰り出す攻撃の間隙を埋めるように宗谷が側面に回りこみ、野獣のような動きで腕を振るう。斬り伏せたい衝動が襲うが自制心を働かせ、どうにか身体に防御を命じる。相手がソイソルのような人間ならまだしも、彼は巻き込まれただけの民間人だ。無闇に殺してしまえばそれは正義の味方としてのポリシーに反する。

(この子を止めるなら元凶を叩くのが一番なんだけ……ど!)

 強引にガイへ接近しようとすればベイから手厳しい電撃が飛んでくる。致命的な損傷を受けない限り、操られた人間は半永久的にマスターの指示通りに動く。行動不能になるまで叩くのも一つの手だが、ベイがそれを許すとは思えない。

「また隙を見せたな?」

「!」

 宗谷をどうにか引き離し、ベイと向き合おうとしたその瞬間、君江は見た。両手にスタンガンを持った男が自分の懐深く潜り込んでいる姿を……。

 まずいと、思った時には既に二つのスタンガンが脇腹に突き刺さり、電流がダイレクトに流れ込む。悲鳴を上げるよりも早く、引き離していた筈の宗谷が既に距離を詰め、無造作に君江の腕を掴み、そのまま力任せに地面へと投げ付ける。

「あぐっ!」

 意思とは無関係に声が出る。ダンッと、衝撃が背中を襲うが大したことはないと自分に言い聞かせ、立ち上がろうとするが全く力が入らない。

(くっ、力が入らないというより身体が麻痺してる状態ね……)

 その事実に気付き、舌打ちをする。いくら身体が痺れているとはいえ、完全に動けない訳ではない。たったままの状態でならまだ反撃のしようもあるが仰向けのままでは流石に攻撃のしようがない。

「もう少し骨があると思ったんだが……とことん失望したよ、疾風の君」

「女の扱いがなってないわね。そんな乱暴ばかりしてるとモテないわよ?」

 言ってから、『聖の軽いノリがうつ伝染ったかしら?』と思う君江。いや、もしかしたら彼ならばもう少し気の利いたジョークを混ぜるかも知れない。と言ってもこの場にいない人のことを考えたところで答えが出る筈もないが。

「遺言があれば聞いてやらないこともないぞ?」

「そう、じゃあ言わせてもらうわ。……聖のことなら諦めなさい。あの子はどうしたって六条家には戻らないから」

「それならそれでいい。その時は奴を殺して俺が新たな当主となる」

「!」

 その解答は君江にとっては予想外のものだった。近代社会となった今も六条家の跡取りは直系の人間でなければならないという不文律が存在する。それは自分が六条家に籍を置いてた頃から健在だったのだが──

「血に囚われるだけの時代は終わったさ。……まぁ、気が向いたら俺の身代わりとして傀儡の当主にしてやらないこともないがな」

 会話はこれで終了だ。そう言わんばかりにベイは懐からナイフを取り出す。確実に心臓を刺して終わらせるつもりだろう。未だ麻痺する身体に鞭打って動こうとするが依然として自分の身体は言うことを聞いてくれない。このままでは自分が避けるよりも早く、鈍い光を放つ凶刃が心臓を穿つだろう。

(聖、ゴメンね。あなたのこと守れそうにないわ……)

 この場にいない彼に謝罪し、眼を閉じて痛みに備え、ベイは無慈悲に腕を──

「俺の家族に手ぇ出してんじゃねぇえッ!」

 ──振り下ろそうとした刹那、場違いな叫び声がその場の空気をぶち壊した。


 君江さんが目の前で殺されそうになったのを目撃した瞬間、俺は全力疾走していた。限界まで走って駆けつけていたつもりだったんだけどやっぱ大事な人のピンチになると真の力が解放されるんだなッ。

(つーかこれフツーに走ってたんじゃぜってぇ間に合わねぇ!)

 そう判断した俺は一瞬の躊躇もなく、大きく跳躍してベイにドロップキックをかましてやった。格好良さもクソもあったもんじゃないが取り合えず気分は晴れた。やられっぱなしは性に合わないからな。

「聖……?」

「はい。言いつけ破って済みません」

 君江さんを一瞥してから俺は特殊警棒を抜き、ベイを見据える。夜城は既にソイソルの駆除に取り掛かっている。これだけ騒ぎを起こしているのに警察が駆けつけ来ないってことはやっぱ、コイツ等がここに来る前に何かしらの手を打ったんだろう。……いや、今はそんなことどうでもいいか。

「……っ。驚いたな、まさか一度逃げ出した弱虫がもう一度戻ってくるとは思わなかったぞ?」

「知らないのか? 真打ちってのはな、いつも遅れて登場するもんなんだぜ?」

「そうは言うけど皇君は一度逃げたでしょ?」

 ソイソルと交戦しているにも関わらず、夜城から手厳しい突っ込みが入る。あぁくそ、やっぱり雑魚相手だとそんな余裕があるのかよ。

「だが、戻ってきたのは失敗だったな。確かに俺達はお前の捕獲を命じられてるが、同時に殺害権も与えられてる」

「ハッ、始めから捕らえる気なんかない人間が何を言ってる?」

「…………」

 図星だったのか、ベイは言葉を続けず黙り込む。別に根拠があった訳じゃない。ただコイツは初対面の時から出世欲が強いっていう印象があったから多分、本能的に大人しく従ったところで殺されるだけだと思ったんだろう。

「来いよ、悪党。そして教えてやるよ。いつの時代も悪は必ず滅びるってことをな!」

「減らず口を……」

 皮肉を込め、吐き捨てるように言うとベイは一瞬にして電気鞭を形成し、それを飛ばしてくる。あれを見るのは初めてじゃないからある程度の特性は熟知している。不規則に動いているように見えるがあれは目くらましだ。攻撃のタイミングは接近してから気持ち一拍待ってから。

「おりゃあ!」

 腹の底から声を出して気合いを入れて特殊警棒を振り下ろす。たったそれだけで電気鞭は簡単に霧散した。……おぉ、ここに来るまでの説明でこれが能力に対する抵抗力が強い武器だってことは聞いてたけどやっぱ自分の目で確かめると感動の度合いが違うな。初めて会った時なんかは無抵抗も同然だったし。

 立て続けに二発、三発と電気鞭を飛ばすベイ。だが一度タイミングを掴んだ俺にそんな攻撃など通じる筈はない。タイミングさえ合えば防ぐのはそれ程難しくはないし、電撃の速度だって目で追いきれないって程じゃあない。

「ふんっ。ならこれはどうだ?」

 鞭では駄目だと判断したベイは更に距離を取る。そのままアイツに肉薄しようとしたが溜めモーションを見て、その考えを改める。俺と奴との距離があり過ぎるから技の発生前に出を潰すのは無理だと即断した俺はすぐさま回避運動に勤めるべく同じように距離を取る。

 僅か一秒で電撃の溜めが終了し、両手を頭上にかざす。ベイの頭の腕で小規模ではあるが電気の球体が形成され、俺をロックオンする。

 ベイが腕を振り下ろすのとその球体がビーム状に変化して高速で飛んで来たのはその直後だった。

「聖ッ!」

 背後で君江さんが悲愴に満ちた声を上げる。それに対して夜城は何処か楽しそうに俺を見てる。

「皇君、まだ動ける?」

「あぁ。大丈夫だ」

 夜城の言葉に答えつつ、特殊警棒を握り直して俺は接近する。電撃を受けたせいで服がかなりボロボロだ。これは少し高い請求をしなきゃ割りに合わないな。

「……ッ。お前、たった一日で何があったと言うんだッ!」

「たった一日で強くなれるほど人間は優れてないよ。あの時と違う点を挙げるながら彼は能力の使い方を覚えただけ」

 俺の言葉を代弁するように、夜城が自慢の銃をベイに突きつけ、発砲する。純白色のレーザーが等間隔で射出されるがベイはそれら全てを際どいところで躱してみせる。

「皇君の能力は純粋に能力に対しての抵抗力をあげるもの。でもそれは常時発動するタイプじゃない、本人の気分とか体調に左右されるタイプ。まぁ、私もそれに気付いたのはついさっきのことなんだけどね」

 そう──俺が始めからこの身に宿っていた能力は防御力を底上げするという、非常に地味でヒーロー向きとは言えない力だった。俺のXP数値の最低値と最大値に大きな開きがあるのはその辺が原因だと、ここに来るまでに夜城が教えてくれた。そりゃあ、確かにこれを夜城から教えてもらった時は自分でもショボイと思ったけど、これって裏を返せば訓練次第では敵の攻撃を無力化できるって知った時はスゲーって思ったよ。

 しばし感動の余韻に浸ってた俺だがすぐに本来の目的を思い出し、ベイに急接近して特殊警棒をナイフのように突き出す。俺如きの実力で当てることが出来るか不安だったけど夜城に気を取られてたことが功を奏し、当てることが出来た。

「ぐっ……!」

「隙だらけだよ」

 ベイがよろけたところに夜城が手厳しいコースを狙って中距離から狙撃してくる。そのうちの何本かは外れたけどベイの反撃を封じることは成功した。

「皇君、あまり無茶しないで。ベイは私が引き受けるからあっちの相手してあげて」

「チッ、仕方ねぇ。ヒーロー役は譲ってやるよ」

 軽口を叩きながら全力でベイから離れて、ガイと喜多川を視界に収めるよう位置取りを調整する。奴に背を向ける形となるが夜城ならバッチリフォローしてくれるだろう。だから俺は夜城の方に敵が流れないようにすればいい。

「賢明な判断……と、言いたいところですが星夜、キミに友達と戦う覚悟があるというのですか? 彼の身体はボロボロ。下手をすれば何てことない一撃が致命傷に繋がりかねない彼と戦う覚悟が」

「…………」

 害の質問には答えず、黙って奴だけを見据える。思えばこいつは定位置からあまり動こうとはしない。もしかしたら操作系の能力にはそれ相応のリスクがあるかも知れないと俺は踏んでる。

「やれやれ、嫌われたものですね。……喜多川、始末してもいいぞ」

 ガイの言葉に従うように喜多川は一度だけ頷くと、真っ直ぐ俺に向かって突撃し、俺がガイへ特攻を決めたのはほぼ同時だった。

「マスターである私を叩く。策としては悪くありませんが、今の彼は壊れかけてるとは言え、君よりずっと早いですよ?」

 その言葉を証明するように、奴との距離が二メートルを切ったところで袖口を掴まれる。力任せに振りほどこうとするがしっかりと腕をホールドしてくる。

「柔道には両手で袖をしっかりと掴む技巧がある。六秒立てば反則になってしまうがここは路上。それに一度掴まれば脱出なんて──」

「随分、安く見られたなものだな」

 それが挑発だと分かっているさ。けどなんかこいつの喋り方は俺の神経をいちいち逆撫でしやがる。何ていうか……このガイとかいう男は生理的に受け付けないんだ。

「俺を──」

 ホールドする喜多川ごと引きずりながら距離を縮めていく。大方、腕を取ってからガッチリホールドするつもりだったんだろうがそれなら最初にダッキングなんかを決めて体勢を崩すべきだったな。

「──舐めんじゃねぇぞ三流がッ!」

 力の限り声を張り上げ、特殊警棒を反対の手に持ち替えて渾身の力を込めて振り下ろす。頭は流石にまずいので狙いは肩。かなりの大振りだが完全に学者肌のコイツがそれを避ける術など持っている筈がない。

「ひっ! ちょ、ちょっと待て──」

 肩口を押さえ、見っともなくうろたえるガイが酷く滑稽に見えて思わず吹きそうになるがどうにか堪えながら、トドメの一撃とばかりに鳩尾に特殊警棒を叩き込む。散々高みの見物決めといていざ自分の身に危険が迫れば命乞いだの取引だの言うとかマジ古典的な小悪党じゃねーか。……まぁ、そう思える時点で俺も大概アニメの見すぎかな。

 そして俺の目論見通り、奴の集中力が途切れた影響か俺の腕にしがみ付いていた喜多川はぐったりと地面に突っ伏した。ふぅ、取り合えずこっちはこれで一段落ってとこか。

「夜城ー、こっちは片付いたぞ。手伝いが必要か?」

「平気」

 チッ、可愛げのねぇ女だな。まぁいい、夜城が平気だって言うならまずは君江さんの元へ行くべきだな。

「驚いたわよ。聖が沙耶ちゃんと知り合ってたってこともあるけど、あの沙耶ちゃんが死んだ家族以外の人にあんな風に喋るなんて」

「夜城が時々人格変わるのって、その辺が原因なんですか?」

「えぇ。……と言っても、こればかりは本人のプライベートに関わることだから私からは何も言えないけどね」

「分かってます」

 俺も人の過去を根彫り葉堀り穿り返す趣味もないしな。気にはなるけどそれはアイツの口から語ってくれるまで待つことにしよう。そう思いながら夜城の方に目を向けると丁度ベイに接近戦を挑んでいるところだった。銃ばっか使うからてっきり近接戦闘は苦手とばかり思ってたんだが……。

「くっ……流石は夜城家の次期当主と言ったところか。衰えた疾風の君とは格が違う」

「当たり前よ。だって私、現役なんだから」

 皮肉の類は一切込めず、思ったことを口にしたように告げて、尚も接近戦を仕掛けてくる夜城。カポエラ(いや、テコンドーか?)を習得しているのか、肉弾戦は主に蹴り技が多く、その足技は正確に急所を捉えてる。だがそれはあくまで牽制目的に過ぎず、隙が出来れば間髪入れず銃で追撃を仕掛けてくる。

最初は性別と体格差で夜城の方が早くスタミナ切れを起こすのではないかと懸念してた俺だがどうやらそうなる前に決着は付きそうなムードが漂ってきた。

ベイが力任せにスタンガンを持った腕を振るう。それを夜城はスウェーで流し、適度な距離を取ると同時に出力を抑えたレーザーで弾き飛ばす。あぁもう、見ているこっちが鮮やかに思っちまうじゃねぇか……ッ!

「幕引きよ、ベイ。私自らが引導を渡してあげるわ」

「ふんっ、生憎こちとら諦めが悪い性質でね。今日のところは大人しく引き下がらせてもうらよ」

 負け惜しみか? と、誰もが思ったが次の瞬間、余ってたスタンガンを限界以上の出力を出し、電撃を四方八方に放電する。狙いなんてあったものじゃない、完全にデタラメな動きだ。その不規則な動きに付いて来れず、俺と君江さんは反射的に地面へ伏せた。

「クッ……待ちなさい……!」

 この場にいた誰よりも早く夜城はダメージから回復し、足音だけを頼りに応射する。だが行動に移るのはベイの方が早かったこともあって、簡単に奴を逃がしてしまった。

……えっ? ちょ、なんだこれ? ギャルゲーで言うところのバットエンド? 途中でフラグ回収し損ねたからこうなっちゃったって訳!? しかもなんか夜城の奴はまったりしてるし!

「ちょ、夜城! 今すぐアイツ追いかけなくていいのかよ!?」

「うん。身元は割れてるし今回私に与えられた任務は戦闘じゃないから」

 あー、はいはいそういうこと。要は任務外のことはしないってことね。そのことを指摘されて冷静になってみれば今は無理して戦う必要なんかないよな。ちょっと反省……。

「それより栂野さん、怪我の具合はどうですか?」

「えぇ、思ってたよりも酷くはないわ。……それより沙耶ちゃん、、、、、、、、私の言った通りの展開になったでしょ?」

 と、ここで急に含みのある笑みを夜城に向けて面白そうに語りだす君江さん。えっ、なに? 今度は一体何なんだ?

「君江さん、何の話ですか?」

「えぇ。実を言えばね、これは賭けだったの。聖が口先だけじゃなくて本当に正義の味方を目指す覚悟あるかってことの、ね」

「あの、皇君? 一応言っておくけど皇君が六条家の人間だったのは本当に知らなかったことだから変な誤解はしないで、ね? ただ、私は栂野さんの悪巧みに一枚噛んだだけというか、その……」

 いや、全っ然状況が分からないんですが? 君江さんと夜城で俺を担ごうとしたのは分かるけど何処から何処までが二人の計画なんだ?

「簡単に言うとね、皇君に電話してしばらく経ってから栂野さんから電話があってその時に話を持ちかけられたの。皇君のことを助ける気はないかってね」

「それがどうして俺を助ける理由になったんだ?」

 少なくとも俺に電話をしたあの時、夜城は俺を捕らえる気満々だった。だからこそ、俺は急に夜城が心変わりしたことに対して半信半疑だったりする。

「栂野さんから電話を受けるまでね、色々考えてたの。で、そこで私は気付いたことがあった。私は望んでこの道に進んだ訳じゃないってことを。勿論、今さら投げ出したりはしないし、今では生活の一部だと思ってるよ。ただ……」

「ただ、なんだ?」

「……どうせ正義の味方するならさ、皇君みたいに胸張って笑いながらやった方が何倍も得かなって、思っただけ」

「それじゃあの時、俺の前に現れたのは俺の決意を確かめる為か?」

「そうよ。それに沙耶ちゃんに出来る限り協力するって、聖約束したでしょ? 途中でその誓約を反故しても最終的には共闘戦線張れば守ったことになるでしょ?」

 なんと! 全ては君江さんのシナリオ通りという訳か。わざわざ俺の前に現れてピンチっぽくなって(いや、これはかなり本気っぽく見えたが)極限状態で俺の気持ちを確かめる。漫画じゃよく見かける手法だが自分がそういうのを体験するなんて、世の中何が起こるが分からないものだな。

「何だか凄まじい屁理屈のようにしか聞こえませんね。……でも俺、そういうのは嫌いじゃないですよ」

「ふふっ、聖ならそう言うと思ってたわ。……それよりこの子、早く手当てした方がいいんじゃない?」

『あっ……』

 君江さんに指摘され、俺と夜城は今頃になってガイに操られていた喜多川の存在を思い出す。なんかもうコイツ、途中から完全に空気だったな。あと俺と夜城、結局学校サボッちまったし……あぁ、明日藤原先生に会うのが怖い……。


 あれだけ騒ぎを起こしたにも関わらず、翌日の新聞やニュースには何も報道させてなかった。いくら正義の味方に悪の秘密結社が秘匿とされた組織だからと言って都心の真ん中であれだけのことをやらかしたんだ。そのことを夜城に話したらたった一言、俺に言ってきた。

『皇君、権力ってこういう時の為にあるんだよ』

 具体的に何をしたのかなんて分からないがその一言が何を意味するかはすぐに察した。考えてみれば夜城家は政界にも大きな影響力をもたらしているところだ。その気になれば報道規制ぐらい訳もないか。

 で、とばっちりを受けた宗谷はどうなったかと言えば全治一ヶ月の怪我を負って入院している。先日、夜城と一緒にお見舞いに行ったけど俺の顔を見るや否や、気まずそうに顔を背けたのはちょっとだけ傷付いた。

 薄々は分かっていた。喜多川が俺に対して劣等感を抱いていたってことは。そうは言ってもそれはあくまで俺の勝手な予想だし、喜多川宗谷という男はそこまで弱い人間じゃないという俺の先入観がもたらしたものだと思うとちょっとやりきれない。

 そして現在、俺は何をしているかと言うと──


「皇君、準備はいい?」

「問題ない」

 夜城の問いに答え、俺は調子を確かめるように手を握ったり開いたりする。全身を包むのはトレインチコートに良く似た真っ赤な戦闘服。まさに俺の為にあつらえた衣装だ。

「皇君……作戦、分かってるよね?」

「心配するな。まず俺が先陣を切って敵陣に飛び込む。で、そこで俺がヘマして捕まって人質になってこう叫ぶ。『夜城、俺に構わず撃てー!』そして夜城、お前はこう言うんだ。『出来ないよっ。皇君を撃つなんて私には無理だよ!』ってな」

「全然違うよっ!」

 むぅ……相変わらず夜城にはユーモアというものが理解できないようだな。非凡な身体能力を見込まれて夜城と一緒に六条家の下部組織を叩く手伝いをしてしばらく経つけど未だに夜城は俺にペースを掻き乱されまくってる。……学校でもこんなことばっかしてるから夫婦漫才なんて言われるんだろうな、きっと。

「なぁ夜城……実はお前冗談と本気の区別が付かない人間なんじゃないのか?」

「皇君がややこしいだけだよっ。……まさか本当に私の話、聞いてなかった?」

「俺が奇襲掛けて敵を混乱させる。頃合いを見計らってお前と入れ替わればいいんだろ?」

 いくら夜城の手伝いをすることになったとは言え、俺の身体能力が優れていようとも結局はただのアルバイトに過ぎない。とはいえ、他のお仲間たちは各地に派遣させてる上に早々会えるような立場じゃないから俺が手伝いをしてくれることは夜城としても結構助かっている……らしい。あまり実感ないけど。

「いつも思うんだがな夜城。別に小規模程度の作戦なら俺がいる必要ないんじゃないか?」

「いーの。作戦の成功率は一パーセントでも上げておくべきなんだから」

 清々しい程に正論だな。それ以前にバイトである俺が口出し出来る問題でもないからこれ以上は議論する必要もないし、研修期間と思えば実りもある。

「雑談はこのぐらいしてそろそろ行くよ」

「分かってる」

 頷き、立ち上がりながら目的の建物を見やる。一見、ただの雑貨屋(ご丁寧に休店の札が掲げてある)のように見えるが侮るなかれ。あれでもれっきとした下部組織のアジトなのだ。ふざけているように思われるだろうがこの前潰した基地はもっとふざけてたんだぞ? カレー屋の地下と聞いた時は流石の俺も呆れるしかなかった。

「いつも通り、皇君は後ろを気にしないで思い切って暴れていいよ」

「あぁ。俺もお前が後ろにいるから安心して暴れられる」

 互いに視線を絡ませ、笑い合う。それが合図となり、俺は悪の根城を潰すが為に風となって疾駆した。

 子供の頃、俺は正義の味方に憧れていた。そして今、俺はその正義の味方をやっている。それは夢の終わりであって、現実の始まりでもある。まさか子供の頃から渇望してたものに俺がなれるとは露ほども思ってなかったけど、確かに今、俺は夜城と肩を並べているんだ。今はまだ夜城の後ろを走るだけの存在だけど、いつかは夜城を守れるだけの存在になりたい。いつまでも女の影に隠れるのは格好悪いからな。

 目的の雑貨屋が眼前に迫ってくるのを確認し、急ブレーキを掛けて一度深呼吸をする。この瞬間だけは何度体験しても慣れない。そして多分、これから先も慣れることはないだろう。

「…………」

 大きく深呼吸をして高揚する胸の高鳴りを落ち着かせる。よし、もう大丈夫だ。大きく息を吐き出すと共に俺は気合いを入れて雑貨屋へと踏み込んだ。

「動くな、悪党共!」

「なっ……! 貴様、何者だッ!」

 何者かって? そんなの決まってる。俺は──

「この世の悪を裁く正義の味方、皇聖だ!」

改めて読み返してみると自分でも正義の味方という着眼点は良かったと思う反面、しっかりとその設定を活かしきれなかったこと、現実と遊びの区別をキチンと仕切っていないと思いました。というよりもこれ書いていた時は自分でもしんどかった記憶しか……。

さて。彼女は正義の味方だった、如何でしたでしょうか? この話はこれで完結ですがそのうち、また別のオリジナル小説を投稿します。こちらも今作と同様、既に完結済みの作品なのでそれなりのペースでupできます。正義の味方と違って自分でも楽しく書いていたものですので多分、これよりはいくらか面白いかと。


でわでわ~。

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