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【番外編】『背が高いだけの私が、美形兄弟と!? 〜妹ミクの恋物語②〜』

ヨウコとヨウヘイの恋が実ったあと――

妹のミクにもまた、心を揺らす出来事が訪れます。


切なくて、少し苦しくて……でも確かに胸を温めるような。

そんなミクの物語の続き、ぜひお楽しみください。



ヨウコとヨウヘイの関係が落ち着いてから、ミクの心には小さな引っかかりが残っていた。

――トウジさんは、どうしてあんなにお姉ちゃんを想っていたのだろう。

二人が出会ったのは最近だと聞いているのに、あの深さはまるで何年も、何十年も一緒にいたかのようで。


「お姉ちゃんとトウジさんの間には……何があったんだろう」


その疑問は、夜になると胸の奥で膨らみ、彼女を眠らせてはくれなかった。



---


そんなある日。


「今度の休日、少し出かけないか?」


放課後、ふいにトウジからかけられた一言に、ミクの心臓は跳ね上がった。


「えっ、え、ええっ!? で、デートってことですか!?」


声が裏返り、顔が真っ赤に染まる。慌てて否定しようとしたが、彼の笑みはどこまでも穏やかで。


「まぁ……そういうことになるな」


頭が真っ白になったミクは、帰宅してすぐにヨウコへ相談した。

姉の反応を恐れていた。怒られるかもしれない、困られるかもしれない――。


けれど、返ってきたのは思いがけない言葉だった。


「えっ!デート!? すごいじゃないミク! トウジさん、いい人だもん。……ミクになら任せられるよ」


「えっ……任せられるって、どういう……」


思わず問い返そうとした瞬間、ヨウコははっとして笑い直した。


「あ、ごめん! 変な言い方しちゃったね。デート楽しんできて! 洋服、一緒に選ぶ?」


そのはしゃぎように、胸が温かくなると同時に、得体のしれないざわめきが広がっていった。

――任せられる、って……。

まるでお姉ちゃんがトウジさんを、自分に託そうとしているみたいで。


けれど、言葉にはできなかった。



---


デート当日。


ヨウコと一緒に選んだワンピースを身にまとい、待ち合わせ場所へ向かうミク。

胸は期待と不安でいっぱいだった。


駅前に立つトウジは、すでにそこにいた。

背の高い姿は目立ち、周囲の女性たちがちらちらと視線を送っている。


その光景を目にした瞬間、ミクの心に冷たい影が差した。


――やっぱり、こんな人が私なんかを誘うはずない。

――きっとお姉ちゃんの代わりなんだ。


笑顔で歩み寄ろうとした足が止まり、不安が胸を締めつける。


「無理だ……」


小さな声が漏れた。

彼に気づかれる前に、その場を駆け出してしまう。


胸に刺さる痛みは、どうしようもなく苦しかった。

涙があふれて前が見えない。


「なんで……私なんかが……」


夕暮れの街のざわめきに、掠れた声が溶けていった。



---


一方その頃、待ち合わせ場所に残されたトウジは――

人混みを探すように、しばし視線を彷徨わせていた。


「……ミク」


小さく呟いたその声は、冬の風にかき消される。

黒曜石の瞳には、追い求めるような熱が宿っていた。



---

ミク視点の物語、いかがでしたでしょうか。

今回は「期待」と「不安」が交錯して、彼女の心が大きく揺れる回になりました。


次回は、トウジの胸に秘められた想いと、ヨウコとの過去に少し触れていく予定です。

ドキドキしながらお待ちいただけたら嬉しいです✨


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