『王宮の祝宴と影 ―恩人ヨウコを巡る視線―』
皇帝陛下を救ったヨウコは、王宮で盛大なパーティーに招かれます。
華やかな祝福の裏で、冷たい視線や陰謀の影が忍び寄る――。
光と影が入り混じる王宮で、物語はさらに緊迫した展開へと進みます。
事件の唯一の証人である医師は、尋問のため檻に入れられていたが、食事に仕込まれた毒によって命を落した。これにより事件の真相は一時的にうやむやとなり、第2皇子ガラントも平然と「自分は関係ない」と言い切った。
混乱の中、王宮では皇帝陛下を救った恩人としてヨウコをもてなす盛大な祝宴が開かれていた。
「うわぁ……すごい人の数……」
ヨウコは緊張と期待が入り混じった胸の高鳴りを感じながら、足を踏み出した。今日という日は、恩人としての光栄な日——それでいて、どこか落ち着かない気持ちもあった。
皇帝陛下は穏やかな笑みを浮かべ、優しくヨウコに話しかける。
「ヨウコ、よくぞ私を救ってくれた。君の勇気に心から感謝する」
「い、いえ……陛下のお役に立てただけで……!」
思わず言葉が早口になる。胸の奥が熱くなり、体が小さく震えているのを感じた。
その様子を、ギルヴァントは静かに見守りながらグラスを掲げる。誇らしさの影に、ほんの少しの独占欲を滲ませて——誰にも見せぬ横顔だった。
イザークとナディールもそれぞれの言葉でヨウコを安心させる。
「ヨウコ、もっと気楽に楽しめ。俺が何があっても守るから」
「そうだよ、せっかくの祝宴なんだから、堅苦しく考えなくていいじゃん」
少しだけ緊張の糸を解き、ヨウコは二人に微笑んだ。
「うん、ありがとう……二人とも」
だが、祝福の光に紛れるように、冷たい視線もあった。アレクサンドラ妃たちの目は、ヨウコを心底良く思っていない。
「……皇帝陛下まで惑わすなんて、許せないわ……」
鋭い視線が、ヨウコの肩越しに刺さるようだった。
ヨウコは思わず体を強張らせる。だが、イザークの笑顔と肩の温もり、ナディールの軽い肩叩きが、少しずつ緊張をほどいてくれる。
『女神様……私、こんなに守られてばかりで本当に大丈夫?』
その胸の奥で、小さな疑問が生まれる。
光と影の入り混じる王宮——ヨウコの試練は、まだ終わったわけではなかった。
読んでくださり、ありがとうございました!
ヨウコは皇帝陛下からの祝福を受け、少し心を休めることができました。しかし、背後にはまだ冷たい視線と陰謀が潜んでいます。
これからの王宮での試練や事件の展開も、どうぞお楽しみに。




