「イザークと巨人の世界」
ついに名前が判明しました。
筋肉ガチムチイケメンの名は――イザーク!
優しくて、紳士的で、それでいてデカい(物理)彼に導かれて、
ヨウコは初めてこの異世界の“巨人の村”に足を踏み入れます。
「ふう……びっくりした。落ち着いたかい?」
鼻血をぬぐいながら、大男――いや、イザークは私にそう声をかけてくれた。
彼はその大きな手をそっと差し出してくる。
「立てるかい? 君、軽そうだから、抱えて運んでもいいけど」
「け、結構です! 自分で歩けますからっ!」
全力で拒否。だってその手、顔ぐらいの大きさあるし!
でもその手が妙に優しくて、ちょっとドキドキしてる自分もいる。
なんなのコレ。身長差でときめくって、どういう感情?
「……僕はイザーク。巨人族の村に住んでいる者だ」
彼は改めて名乗ると、腰をかがめて私の目線に合わせてきた。
近い、顔が近い……! 肌も瞳もなんかこう、異世界の男! って感じで、やたらキラキラしてる。
「君の名前は?」
「あ、三浦ヨウコです。日本から来ました」
「にほん……? 聞いたことのない国名だな。
やはり君は“渡り人”……別世界から来た者ということか」
「渡り人……」
その単語、どこかファンタジーの匂いがして、私は自分がほんとに異世界に来ちゃったんだって実感しはじめていた。
イザークは私の話をちゃんと聞いてくれて、無理に詮索もせず、歩幅もあわせてくれる。
3メートルもあるのに、やたら気遣い上手で優しい。
そんな彼に連れられて森を抜けると、視界の先に、木造の巨大な建物が見えた。
「ここが僕たちの村だよ。君のような子が一人で森にいたら、危険すぎる。しばらく、保護させてほしい」
「えっ、えっと……すみません、なんか迷惑かけてばっかで……」
「いいんだ。君のような“小柄な娘”を放ってはおけないからね」
「小柄……」
185cmで小柄って、人生で初めて言われた。
ていうか、この世界、どんだけデカいの!?
私、これからどうなっちゃうの――!?
「可憐で小柄な成人女性」って、ヨウコにとっては未体験ゾーン。
そんな扱いをしてくるイザーク、ただの天然? それとも……?
ようやく舞台が動き始めたところです。
次回も気まぐれ更新になるかと思いますが、どうか気長にお待ちください◎