帝国の使者は強引です!? ~ギルヴァント、ついにヨウコを連れ去る日~
※本編の本格的な物語進行回です。
ギルヴァントがヨウコを帝国へ連れて行く宣言をしてから、ついにその日がやってきました。
緊張と心のざわめきに満ちた回をお楽しみください。
数日が経ち、村の空気は張り詰めていた。
ギルヴァントがヨウコを帝国に連れて行くと宣言してから――ついに、その日が来た。
広場には帝国兵が整列し、槍の穂先が陽光を鋭く跳ね返す。
その中央に、黒髪を風になびかせたギルヴァントが、鎧姿で立っていた。
「ヨウコ、迎えに来た」
低く響く声。冷たい響きの奥に、微かに揺れる温度。
ヨウコは一歩退き、視線を逸らした。
「嫌よ……私は、イザークさんといる方がいい」
唇は震えていたが、その目には拒絶の光が宿る。
ギルヴァントは迷わず歩み寄り、彼女の手を掴む。
「イザークだと? あいつに何ができる。お前を守るのは俺だ」
指先に込められた力は強すぎて、抜け出そうとすればするほど、熱が伝わってくる。
「やめて! 勝手に連れて行かないで!」
声は必死なのに、胸の奥がわずかに高鳴る自分に気づいてしまう。
ギルヴァントは口の端をわずかに吊り上げ、囁いた。
「拒んでもいい。だが……俺のものは逃がさない」
その言葉に、ヨウコの肩が小さく震える。
ギルヴァントの眉が一瞬だけ揺れ――だが、すぐに鋭い光を取り戻した。
「皇子殿下!」
駆け寄ったイザークが叫ぶ。
「ヨウコはこの世界の者ではありません。無理やり連れて行くべきではない!」
ギルヴァントは冷ややかに視線を流す。
「邪魔をするな。俺は変わらん」
そしてヨウコを抱き寄せ、そのまま歩き出した。
鎧の金具が冷たく鳴り、兵たちが静かに道を開ける。
――恐怖、戸惑い、そして抗えない心のざわめき。
ヨウコは、その全てを胸に抱えたまま、ギルヴァントの背に引き寄せられていった。
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読んでいただきありがとうございます!
ついにギルヴァントが本格登場。ヨウコを連れ去る強引さと、胸の奥の揺れが描かれた回です。
次回以降、二人の関係やイザークの動きもさらに波乱に……お楽しみに!




