黒曜の瞳の男
今回は、ヨウコが少しずつ町に馴染んでいく中で、運命の出会い(?)を果たすお話。
黒曜石の瞳を持つ青年登場です。
※まだ正体は秘密ですが、最初から傲慢オーラ全開です(笑)
翌日から、私はイザークさんに連れられ、町のあちこちを案内してもらった。
朝市の屋台では、陽気なおばちゃんが山盛りの果物を試食させてくれ、鍛冶屋では大きな槌を振るう職人たちが汗を光らせていた。
最初は人目を気にしていた私も、何日か経つうちに町の人と冗談を交わせるようになっていた。
「すっかり馴染んできたな」
「まぁ…人間、慣れるの早いんですよ」
イザークさんの笑顔に、私もつい笑い返す。
そんなある日、長老たちが珍しく険しい顔で集まっていた。
「近くで帝国の皇子を筆頭に戦があったらしい」
「皇子…?」
私には縁遠い話だと思った。戦も皇子も、テレビの中のニュースみたいなもので、自分には関係ないと。
だが、それは油断だった。
夕暮れ時、村外れの小道を歩いていると、ふと足元に赤黒いしみが見えた。血――。
「え…?」
その痕跡は途切れ途切れに、藪の奥へと続いている。胸の奥がざわつきながらも、私は無意識に足を進めていた。
やがて、草むらの影に人影が見えた。
黒髪。土埃と血で汚れた衣服。そして、石のように冷たい黒曜石の瞳――。
「……おい、誰だ」
低く掠れた声が私を射抜いた。
「誰って…こっちのセリフです。こんなところで何して――って、ちょっと!動かないで!」
「触るな」
「はいはい、死にたいなら勝手にどうぞ。でも私、放っておけないんですよ」
返事も待たず、私は彼の腕を引き、自分の肩に担ぎ上げた。
「……は?」
驚愕の声が耳元で響く。
「歩けないんでしょ?じゃあ私が運ぶしかないじゃないですか」
「女の腕力じゃ――ぐっ…!」
「ほら、言ったでしょ。大人しくしてて」
体温と血の匂いを背中に感じながら、私は村への道を踏みしめた。
後ろで彼が小さく呟いた。
「……なんだ、この女は…」
---
第一印象は最悪でも、ヨウコの「担いで運ぶ」という暴挙(?)で距離は強制的に縮まってしまったようです。
次回は村での看病回を予定しています。
イザークさんの心配顔にもご注目ください。
感想・お気に入り登録いただけると、続きの執筆モチベが爆上がりします!




