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オープニング

(軽快でありながらも荘厳さを感じさせるファンファーレが鳴り響く。画面には、ダ・ヴィンチの「モナ・リザ」の神秘的な微笑み、ミケランジェロの「ダヴィデ像」の力強い肉体、ピカソの「ゲルニカ」の叫び、黒澤映画の疾走する馬群などが、万華鏡のように映し出される。それぞれの名前と「LeonardodaVinci」「MichelangeloBuonarroti」「PabloPicasso」「AkiraKurosawa」の文字が刻まれ、最後に番組タイトル『歴史バトルロワイヤル〜芸術頂上決戦!時空を超えた美の祭典〜』が、黄金の光と共に大きく表示される)


(照明が明るくなり、コの字型に配置されたテーブルセットが映し出される。中央には司会者席。背景には番組ロゴが輝いている。すでにテーブルには、時代も雰囲気も全く異なる4人の男たちが座っている。レオナルド・ダ・ヴィンチは穏やかな表情で手元のメモに何か書き込んでおり、ミケランジェロは腕を組み険しい顔で正面を睨んでいる。パブロ・ピカソは退屈そうにあくびを噛み殺し、黒澤明は背筋を伸ばし静かに前を見据えている。異様な緊張感と期待感がスタジオを満たしている)


(軽やかな足取りで、司会者あすかが登場。華やかながらも知的な雰囲気の衣装を身にまとっている)


あすか:「皆さーん、こんばんは!そして、ようこそお越しくださいました、時空を超えた物語の交差点へ!わたくし、あなたと偉人たちの間に立って、ちょっぴりお節介を焼いちゃう『物語の声を聞く案内人』、あすかが今宵もご案内します!」


(カメラに向かって、にっこりと可憐なお辞儀をする)


あすか:「いやはや、スタジオの空気がピリッとしてますねぇ…それもそのはず!今宵の『歴史バトルロワイヤル』は、超!超!特別企画!テーマはなんと『最高の芸術』ッ!!」


(効果音:ジャーン!)


あすか:「絵画、彫刻、そして映像…それぞれの分野で歴史にその名を刻み、美の頂点を極めた、まさにレジェンド中のレジェンドたちが、このスタジオに奇跡の大集結!それぞれのプライドと美学を賭けて、『最高の芸術とは何か?』を語り尽くしていただきます!まさに、前代未聞の芸術頂上決戦!ついに、ゴングの音が鳴り響く時がやってまいりました!」


あすか:「それでは、この歴史的な対談に臨む、偉大なる芸術家の方々をご紹介いたしましょう!まずは、向かって左端!科学の眼で万物を見通し、その筆は神の領域に達したと言われる、ルネサンスが生んだ万能の天才!レオナルド・ダ・ヴィンチさんです!」


(ダ・ヴィンチ、紹介されると穏やかな笑みを浮かべ、ゆっくりと会釈する。その隣のミケランジェロが、フン、と鼻を鳴らすのが聞こえる)


ダ・ヴィンチ:「(落ち着いた声で)お招きいただき光栄です。議論を楽しみにしております」


あすか:「続きまして、そのお隣!大理石に生命を刻み込み、神の威光と人間の苦悩を描き出した、情熱と信仰の巨匠!不屈の彫刻家にして画家!ミケランジェロ・ブオナローティさん!」


(ミケランジェロ、あすかの方を一瞥するだけで、表情は硬いまま。腕組みを解こうとしない)


ミケランジェロ:「(低く、不機嫌そうな声で)…時間の無駄にならねばよいが」


あすか:「(苦笑しつつ)は、はいっ!きっと有意義な時間になりますとも!さて、お次は右側のテーブルへ!美しさの常識なんて俺が塗り替える!と言わんばかりに、生涯、既存の価値観を破壊し、新たな表現を求め続けた20世紀最大の革命児!パブロ・ピカソさんです!」


(ピカソ、待ってましたとばかりに椅子にふんぞり返り、自信満々の笑みを浮かべる。ダ・ヴィンチとミケランジェロの方を挑発的にチラリと見る)


ピカソ:「(やや尊大な口調で)フン、やっと俺の番か。まあ、せいぜい退屈させないでくれよ、お嬢さん」


あすか:「(目をパチクリさせて)は、はい!退屈なんてさせませんよ!そして最後にご紹介しますのは、この方!七人の侍が荒野を駆け、羅生門の闇が人の心を映し出す…その映像は世界を変えた!映画の可能性を切り拓いた映像の魔術師!我らが日本の誇る巨匠!黒澤明監督です!」


(黒澤、紹介されても表情をあまり変えず、ただ静かに深く頷く。その眼光は鋭い)


黒澤:「(多くを語らず、一言)…よろしく頼む」


(第一声:我が芸術の『最高』たる所以)


あすか:「さあ、役者は揃いました!もうすでに火花がバチバチッと見えますが…!まずはウォーミングアップと参りましょうか!皆様、ご自身の信じる『最高の芸術』とは何か、そして、それがいかに『最高』たる所以なのか、お一人ずつ、高らかに宣言していただきましょう!」


(あすか、まずはダ・ヴィンチに視線を向ける)


あすか:「では、トップバッターはやはりこの方、レオナルド・ダ・ヴィンチさんからお願いします!」


ダ・ヴィンチ:「(穏やかに、しかし確信を持って)ふむ。よろしいでしょう。最高の芸術、それは疑いなく絵画です。なぜなら絵画こそ、自然界のあらゆる事象…光、影、空気、そして何よりも人間の複雑な心の動きまでをも、二次元の平面に凝縮し、永遠に記録できる唯一の手段だからです。それは、単なる手先の技ではない。解剖学、光学、幾何学といった科学的探求に裏打ちされた、知性の極致なのです。目に見える世界の本質を捉え、それを最も完璧に再現できる。これ以上の芸術がありましょうか?」


(ダ・ヴィンチ、隣のミケランジェロを意識しつつ、静かに言い切る)


あすか:「なるほど…絵画こそ科学に裏打ちされた知性の極致!いきなり深いお言葉、ありがとうございます!さあ、これを聞いて黙っていられないのは、やはりこの方でしょう!ミケランジェロさん、どうぞ!」


ミケランジェロ:「(ダ・ヴィンチを睨みつけ、吐き捨てるように)科学だと?フン、小手先の理屈に過ぎん!最高の芸術とは、彫刻に他ならない!なぜなら、我々彫刻家は、ダ・ヴィンチ殿のような絵描きが平面に描く『まやかし』ではなく、実体ある物質…すなわち、神が創造したもうた大理石や木の中から、真の形、魂の姿を『解放』するのだ!それは三次元の存在感を持ち、空間を支配し、観る者の魂に直接語りかける!絵画のように、ある一点からしか完全に見えないような不自由なものではない!これぞ、神に最も近い創造行為!絵画など、彫刻に比べれば取るに足らん!」


(ミケランジェロ、拳を握りしめ、語気を強める)


あすか:「うわー!早くもバッチバチですね!彫刻こそ神に最も近い創造行為!ダ・ヴィンチさん、何か言い返しますか?」


ダ・ヴィンチ:「(冷静に)ふむ、彫刻は確かに力強い。しかし、それは色彩の豊かさも、空気の透明感も、遠くの風景の奥行きも表現できぬ。いわば『色のない芸術』。それに、制作には多大な肉体労働を伴う。芸術というよりは…」


ミケランジェロ:「(声を荒げて)何だと!?この…!」


あすか:「(慌てて割って入り)わー!わー!ストップ、ストップ!まだオープニングですから!その熱い議論は後ほどたっぷりお願いしますね!さあ、このルネサンスのお二人の主張を聞いて、20世紀の巨匠はどう思われるか!ピカソさん、お願いします!」


ピカソ:「(肩をすくめ、嘲るように)ハッ!面白いな、二人とも。まるで何百年も前の話をしているようだ。最高の芸術だと?そんなものは常に『今』生まれる新しい表現に決まっているだろう!あんたたちが必死に守ろうとしている『写実』だの『理想美』だの、そんなものは写真でも撮ればいい。芸術家は、見たままを描くのではなく、感じたまま、知っているままを描くのだ!形を壊し、色を爆発させ、魂の叫びをキャンバスや粘土に叩きつける!古いルールなんぞ、壊してナンボだ!あんたたちの芸術は、博物館にはいいかもしれんがね!」


(ピカソ、ルネサンスの二人をまとめて挑発する)


ミケランジェロ:「(怒りで顔を赤くし)この若造が…!神をも恐れぬ不敬な!」

ダ・ヴィンチ:「(眉をひそめ)…破壊が創造だと?短絡的ではないかね」


あすか:「あららら…!革命児ピカソさん、爆弾発言ありがとうございます!さあ、そして最後は、この混沌とした状況を、映像の魔術師はどうご覧になるのか!黒澤監督、お願いします!」


黒澤:「(静かに、しかし強い意志を込めて)…最高の芸術、か。難しい問いだ。だが、あえて言うならば、それは映画だ。なぜなら映画は、ダ・ヴィンチ殿の言う光と影、ミケランジェロ殿の言う立体感、ピカソ殿の言う感情の爆発、そのすべてを内包し、さらに『時間』という要素を加えて、一つの『物語』として観客に届けることができるからだ。絵画は動かない。彫刻も動かない。だが映画は動き、語り、音楽を奏で、人間の喜怒哀楽そのものを描き出す。それは、現代における最も強力で、最も総合的な芸術表現だと、私は信じている」


(黒澤、他の三人を順に見渡し、静かに言い放つ)


あすか:「映画こそ、全てを内包する総合芸術…!なるほど、それぞれの立場からの『最高』宣言、実に興味深いです!始まったばかりだというのに、この熱気!これは、とんでもない議論になりそうですね…!」


(あすか、ワクワクした表情でカメラを見つめる)


あすか:「さあ、ウォーミングアップはここまで!この後はいよいよ本格的な討論ラウンドに突入します!万能の天才か、情熱の巨匠か、破壊的革命児か、映像の魔術師か…!果たして『最高の芸術』の栄冠は誰の手に輝くのか!?歴史バトルロワイヤル、最初のラウンドをお楽しみに!」

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