You On Stage
彼は夢の中に表れた。
特別意識していない彼が、記憶と見まがうようなはっきりとした夢で姿を見せる。
まるでその記憶をわざと見せたように。
夢の中で彼は上半身を横に揺らしていた。
何か夢を見ているのか、視線は上のほうを向き、ゆらゆらとしている。
と、彼がこっちを見た。一層の笑顔を向ける。
その瞬間、彼の姿はピシッと止まった。気を付けの姿勢。真っ直ぐな鉛筆みたい。
さっと右手を挙げた。何が始まるのかと思ったら、なんと周囲に火が。
そう、彼は業火に呑まれていった。
生前下手と言われた笑顔で。そう、このときにはだいぶ自然に見えた。
笑ってバイバイ。それは私がいつか望んだものである。
なんでこいつにやられなきゃいけないんだ。私が見舞いにも行かなかったせいか、夢の中まで侵食してきた。
ステージ上で立って死ぬなど、許されることではない。
だが、彼のプライドがそうさせたのだろう。
強い妬み、苦しみ、執着。それを終わらせに来た。
見て。あなたに見てほしい。
そんな言葉が聞こえてくる。
「私は」「あなたに」「勝った」。
いつも虐めてくるあなたに一矢報いることができた。
君は私のように生きられるかい?
挑発。
私のように君を愛せるかい?
――それを執着と言うのだが。
燃えるような熱さで人をバックアップする。
それを彼は使命とした。
私の使命はまた別。私が怒らなくてあなたは不満そう。
ごめんね。私は怒りが滅多に起こらないんだ。
またどこかで会えたら、きっと怒れるようになっているだろうさ。