プロローグ
「諦めるな! 俺が必ず君を助ける!」
俺は、見ず知らずの女魔術師の手を取った。彼女はもはや自力で立つことさえできない。このままダンジョンに置いていけば、間違いなく死んでしまうだろう。
しかし、彼女は俺の手を振り払った。
「だめです……私を……助けないで……」
「ど、どうして?!」
「お金……ないんです……。貴方に、お金……払えないから……」
彼女は涙をにじませながらそう言った。死ぬのは誰だって嫌だ。でも、ダンジョンで生き残れるのは強者だけなのだ。腕力、魔力、財力……、それらを持たない弱者は、救助すらしてもらえない。
……でも、俺はそんなの嫌だ!
「金なんていい、一緒にダンジョンを出よう!」
正直、俺1人で帰還するのも難しい状態だ。聖職者である俺は、戦闘において支援以外では何の役にも立たない。しかもMPは尽き、女魔術師を戦闘復帰させることもできない。
それでも俺は、もう一度彼女の手をとった。
「言うんだ、【助けて】と! 君は、誰かに助けを求めていいんだ!」
俺の言葉に、彼女はついに涙をこぼした。それは、諦めの涙ではない。生きようとする者の希望の涙だ。
「たす……助けて……。私、死にたくない……!」
「もちろんだ。必ず君を助ける!」
「助けて……! 助けて……!」
心のダムが決壊したかのように、彼女は繰り返し俺に助けを求め、か弱い力ですがりつく。俺はその願いに応えるべく、彼女の体を抱きしめるように支えた。
「生きて帰るまでが、ダンジョン探索だ」
俺は彼女に、そして自分自身に言い聞かせるよう呟いた。絶対にこの子を連れて帰る……、俺は強く決意した。
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