エピローグ
結婚してから数週間後、エラは王室のバルコニーから庭を眺めていた。春の柔らかな風が吹き抜け、空は雲一つない青空だった。
「これが自由……とまでは言えないけど、まぁ、悪くはないか。」
エラはつぶやきながら紅茶を一口飲む。隣にはポエミー構文を炸裂させる夫、王子の姿がない。それだけで、この静かなひとときがどれほど貴重か、エラは痛感していた。
彼女の結婚後、継母と義姉たちは予想通り、城に押しかけてきた。
「エラ! 私たち、あなたを応援しに来たの!」
義姉Aが大きな荷物を抱えて城門で叫ぶ。
しかし、王室の衛兵たちが彼女たちを静かに制止した。
「妃殿下は現在お忙しいため、面会の予定はございません。」
「ええっ! そんなこと言わないでよ!」
義姉Bが鏡を持ちながら必死にアピールする。
「でも私たち、妃殿下の家族なのよ! ほら、この美貌を見て!」
「関係ありません。」衛兵たちはプロフェッショナルな冷静さで門を閉じた。
継母と義姉たちはあれ以来、王室に近づくこともできず、地元のSNSコミュニティで「私たちの娘は王室の一員です!」と叫び続けているという。
その頃、城の図書室では、王子が新しい構文を考えていた。
「エラ、聞いてくれ。僕は愛について新しい表現を思いついたんだ。」
エラは微笑みながら椅子に座り、ゆっくりと紅茶を飲んだ。
「どうぞ。」
王子は立ち上がり、胸を張った。
「愛は愛であり、愛そのものであるがゆえに、愛そのものなんだ。」
「……いいですね。」
エラは適当に相槌を打つ。彼女はもう、このポエミー構文に慣れつつあった。
エラが新しい生活の中で勝ち取ったのは、「自由」というよりも「適度な距離感」だった。
王子のポエミー構文に巻き込まれつつも、彼女は自分の時間を確保し、義姉たちや継母との距離を徹底的に取ることで、平穏な生活を手に入れたのだ。
「まぁ、これも悪くない。」
エラは微笑みながらバルコニーから庭を見下ろす。そこには、王子が靴を手に持ちながら家臣たちと愛の象徴について議論している姿があった。
「次はどんな運命が待っているのかしら。」
エラはそう呟きながら、紅茶をもう一口飲んだ。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
この短編小説は、現在執筆中の長編異世界転生ファンタジー小説の筆休めとして、ふとイメージが浮かんだアイデアを元に、勢いで書き上げた作品です。
ギャグテイストを全面に押し出しつつ、登場人物の個性を極端に尖らせたことで、原作の持つ雰囲気とはまた違った魅力をお届けできたのではないかと思っています。
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現在執筆中の長編異世界転生ファンタジー小説は、膨大な設定資料を基に構築した壮大な物語です。
年内には連載をスタートできる目途が立っていますので、そちらもぜひ楽しみにしていただければと思います!
ファンタジー好きの方にも刺さる、緻密な世界観とキャラクターの成長を描く予定です。
それでは、またどこかでお会いできる日を楽しみにしております!
ありがとうございました!
朽兎