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双青の都  作者: 吾瑠多萬
3/19

「いやー、参った参った。姫王様にこっぴどく叱られた。その上48時間その場に座っていなさい、と言われて。あんなに辛いとは思ったのは新兵訓練以来だぜ」


隊長は食堂で一人飯を食べていた。誰に聞かせる訳でもなく独り言だったのだが、周囲の兵士達は必死に笑いを堪えている。大体、隊長のような佐官は別に佐官室があり、そこで食事を取るのが普通なのだが、現場から一番近いからという理由でよくここで食事をしていた


「ラズワード総司令官殿。お食事中失礼します。少しお聞きしたいことがあるのですが、よろしいでしょうか」

隊長が視線を上げると、そこには直立不動で立っている若者がいた。彼はただの兵士なのだが、隊長自ら誰でも聞きたいことがあれば直接聞きにくるようにと日頃から訓示しているので、誰も止めなかった


隊長の正式な役職は軍総司令官兼近衛隊長であり、本来なら総司令官と呼ばれるはずだが、本人はその肩書きが嫌いなので周囲には隊長と呼ばせている。因みに副隊長は軍副司令官兼近衛副隊長である。


「隊長でいいよ。いいぞ、そこに座れ」

「はっ、ありがとうございます」

彼は隊長の前の席に座る


「それでどうした。何かあったのか」

「はっ、なぜ我々は敵に襲われるのでしょうか」


食堂は一気に静かになった。こいつ一体何を聞いてるんだと思ったが、その疑問に答えられるものはいなかった


「誰か他の奴に聞いたのか?」

「いいえ、隊長殿が初めてです」


隊長は彼の目をじっと見ていたが、やがて答えた

「命だよ。奴らは姫王様や我々の命が欲しいのさ」

若者は表情が変わらないものの答えの意味がわからない様子だった

「わからんか?なら説明してやる」


遥か昔、神は人の未来が見える鏡を作った。未来を知ることで今を認識し、更に己を深めていくことが出るようにという神の思いからだったのだが、人々は全く異なることを考えた。鏡の中の自分が今の本当の自分だと勘違いしたのだ。


未来の自分を不満に思い、未来を変えたいと試行錯誤を重ねた結果、己を深めるのではなく、他人の霊的な力、つまり他者の命を改変し取り込むことで未来が変わり、強大な力を持てることに気づいた。それから命の略奪が始まった。周囲の命を喰い尽くすと、さらに遠くへと命を探し求めた


「我らは先祖から命を持つものだからだ。それが狙われる理由だ」


食堂は物音一つしなかった。隊長は煙草に火をつけると若者が話を落とし込めるまで待っていた


「それでは我々はずっと奴らと戦い続けるしかないのでしょうか」

「それが道ならな」


隊長はそう答えると、椅子をガタッと言わせて立ち上がる

「お前も喰われたくなければ抗え。それが今、俺たちにできることだ」

そういうと、隊長は静かに食堂を後にした。残された兵士達はただ呆然としているだけだった


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