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双青の都  作者: 吾瑠多萬
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戦いの日常

はるか昔、この国は別の大陸にあった。人々は言葉なくとも通じ合い、幸せに暮らしていた。いや幸せが当たり前すぎて幸せとは何か知らない程に平穏で明るく皆楽しい日々を送っていた。


 ある時、外つ国から攻撃を受けた。攻撃という概念を知らぬもの達は彼らを歓迎しようとしたのだが、多くの民が殺され略奪される様を見て、これは何か違うのではないかと思い始めた。恐怖や悲しみ辛い思いを始めて知ったのだ。それが分かったことは一つの歓喜だったが、このままでは皆が生き残れないと思った当時の王は、姫君と残った国民と共にそこを脱出した。


 それから放浪の旅が始まった。戦うという概念が芽生えると軍隊を作り侵略者と戦いながらも、度重なる侵略により徐々に国は小さくなっていった。そこが維持できなくなると、また別の地へと移住することを繰り返し、ある南の島へと辿り着いた



「で、どうなんだよ」

隊長は外で煙草に火をつけながら副隊長に問う

「芳しくありません。敵の前線はすぐ側まで来ています。すでに威力偵察を南端で何度が受けました」

「いつもの奴らか?」

「いえ、西南方面からきた新参者です」


隊長は煙を吐きながら上を見ていた

「上手くねぇなー、このままだと数日中に敵さんやってくるか」

「おそらくは」


隊長は暫く無言だったが、何か思いついたように副隊長の顔を見た

「こっちもちょっとやってみるか」

「何をです?」

「偵察だよ、偵察。何、ちょっと言って挨拶すれば敵さんも誰を相手にしているかわかるだろ」


副隊長は嫌な予感がした

「それを誰がやるのですか」

「俺しかいないだろ?何、ちょっと行ってくるだけだって。装備を借りるぞ」

「やめてください」

「なら、できるやつがいるか?このままだとこっちにも被害が出るぞ」

副隊長は反論できなかった。隊長の言う通りだからだ

「1時間です。それ以上は駄目です」

「分かったよ」


隊長は嬉しそうに返事をすると、はたと何か思いついたように言う

「姫王様には内緒にしてくれよ。心配かけたくないからな」

副隊長は答えることも出来ず頷いた


隊長は装備室に入ると武装した。管理官は何度も執拗に副隊長が許可したことを聞いた

「本当に大丈夫ですよね。後で怒られるのは私です」

「大丈夫だって。ちゃんと許可取ってるよ。じゃ、行ってくる」

隊長はそう言い残すとその場から消えた


副隊長は南端の物見台から敵がいると思われる場所を見ていた。突然火柱が上がったかと思うと地面が揺れた

「総員、突風に備えて伏せろ!」

副隊長が叫ぶと皆慌てて伏せる。その後直ぐに大きな衝撃音と突風が吹き荒れた。風が治まるとその地の上に一人の人影が浮かんでいる。消えたと思ったら、唐突に副隊長の横に人が現れる


「終わったぞ。いや全然手応えないな。あれで軍隊か?俺に気付きもしない」

「あなたが異常に強いだけです。全滅ですか?」

「ああ、全部燃やしておいた。多少人が残っていてもそのまま帰るだろ」

「やりすぎです。こっちは結構揺れました」


それを聞いた隊長は顔を青くする

「やっべ、姫王様に感づかれる。言い訳しないと」

「何を言い訳するのですか?」

その声に隊長は壊れた機械人形がギギギと音を立てそうな仕草で振り返る。そこに目が笑っていないにっこり笑った姫様が、手招きして立っていた

「是非ともこちらで詳しく聞かせてくださいな。その言い訳とやらを。ラズワード?」


これは駄目だ。絶対に許してくれない。そう思った隊長が観念してトボトボと姫王様の傍に行くと、姫王はラズワードの襟元をしっかり掴み引きずるように連れていく。副隊長はその姿を見送りながら、尻に敷かれた旦那とはああなるのかな、とどうでもいいことを思っていた


こっぴどく叱られた隊長は、48時間姫王様の側から離れることを禁止される事で、ようやく許された。それまで2時間ばかり説教されたことを考えれば50時間だろうか。だが隊長が敵を殲滅したおかげでこの国に被害は出なかった


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