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双青の都  作者: 吾瑠多萬
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静奏(しずく)


隊長は忙しく飛び回っていた。360度全方位から攻めてくる敵を守備隊に負担がかからない程度に間引いていく。海上の敵が上からの攻撃に翻弄され、上手く連携が取れず右往左往している。だが何ぶん数が多かった。島周囲の海を埋め尽くし、水平線の彼方まで船がある。


「こりゃやばい。こちらが休みを取れないぞ。もうちょっと減らしておくかね」

隊長は夜が明ける前から敵の数を減らす為、さらに船を沈めていった


夜明け頃、空が段々明るくなってくると島の周囲の海は沈没した船が大量に浮かんでおり、まるで子供がおもちゃ箱をひっくり返したような有様だった。島からかなり遠い海上では隊長がやったと思われる火柱と水柱があちらこちらで上がり、島の近くにはまともな船は見当たらない。副隊長は総員に一時的に休みを取るよう伝えると、隊長へ念話を送る


「こちらは一息つきます。そちらはどうですか?」

「もうちょっとしたら戻るわ」

隊長からの返事に副隊長は安堵し、食事を取るために食堂へと向かった


副隊長が食事を始めると、隊長が戻ってきた

「いや、本当に数が多いな。どっからこんなに集めてきたのやら」

隊長は食事の乗ったお盆を副隊長の横の席に置くと、食べ始めた

「こっちの被害は?」

「軽傷者は大勢いますが、重症者は皆無です。昨夜の訓練のおかげか敵がよく見えていましたよ」

「そりゃ良かった」

隊長が答える

「島の周囲は沈没船で船が近づけません。このまま諦めてくれると良いのですが」

「それはないな。この後は船の攻撃はなくて、空からだ」

隊長は食べならがら上をさす

「隊長以外に空から攻撃できるものがいるのですか?」

「わからん。だが何がしかの攻撃はしてくるぞ。対岸からな」

隊長は声を落とす

「あの石の大きいものを使えば可能だ」

副隊長は手が止まった

「そんなことが可能なのですか?」

「ああ」

隊長は何ごともないように食べている。副隊長も我にかえり続きを食べ始めた



敵は誤算に次ぐ誤算で大混乱に陥っていた。奇襲が成功しなかった為に精鋭部隊を多く失った。そこへ空から船を沈められるし、島の防衛力は予想以上に固くて歯が立たない。


敵の将軍はどうしたものかと考えあぐねていたが、このままでは海から攻撃はできないと判断し、本来は別の目的で製造されていた新兵器を使うことにした

それは大きな痛手だったが、島の命を獲れるなら致し方ないと思ったのだ。それはまだ未完成で試運転すらした事がなかった。準備に二日程度かかるとのことだったので、それまで待つことにしたのだった


隊長は対岸に何かあると睨み、上空から偵察を試みたのだが、なんと結界が張られて近づく事ができなかった

「こりゃやばいよ、奴ら想像以上にあの石の使い方を知ってるな」

石で結界が張れるのなら、相当大きな石を製造する技術があることを示していた。だとすれば砲撃の技術も開発しているに違いない


「どうすっかな、これ壊すの結構しんどいよな」

壊すことは可能だが、その後まで自分の力が続かないことを隊長はわかっていた。命から作られた石を破壊するには己の全精力を注がなくてはならないだろう。せっかく結界を壊しても砲が壊せなければ意味がない

「撃つときは結界を外すだろうから、その時が狙い目か」

隊長は結界の位置と地形から、砲がありそうな位置を割り出した

「ここまで分かればいいか。こっちも結界が張れるといいのだがなぁ。さて戻るか」


隊長は島に戻ると、副隊長に敵の様子を話した

「あっちが砲を撃つ寸前に結界を外すはずだ。その時、俺が砲を破壊する。問題は結界がなくなった時に何が出てくるかだがな」

「何がとは?」

「奴らも馬鹿じゃない。結界を外せば攻められることはわかっている。大きな砲は撃つのに時間がかかる。その間、攻撃を防ぐ手段を考えているはずだ。それが何かは分からない」

隊長はあまり良い予感がしなかった。おそらく人外の何かがこちらを襲ってくるだろう

「海の上を渡ってですか?」

「おそらく空を飛ぶ何かだと思うぞ。生き物のような」

隊長は古代文明が行った実験を思い返していた。奴らの作った中に空を飛ぶ生き物があったはずだ

「その時は空からの攻撃に警戒させろ。撃ち落とせればいいが、数が多けりゃ恐らく無理だな。駄目なら全力で避難させるしかない」


「空飛ぶ生き物、ですか」

副隊長は想像がつかなかったが、隊長がそう言うなら危険な生物なのだろう

「その生き物の弱点はあるのですか」

隊長は古代文明が作り出した空飛ぶ生き物を思い出していた

「恐らくない。だから隠れるしかないな。あの沈没船を利用して身を隠し、時が過ぎるまで待つしかないだろう。これは、もう作戦なんかじゃない。今からでも遅くないから、島の中に逃げたい奴は軍務から外せ。降伏すれば多少は何とかなるかもしれん」

隊長も自分で言ったことを信じていなかった。敵が命あるものを放置する訳がない。降伏してもその場で食べられるに違いない


「それは無理では?軍務から外す件は皆に話しますが、奴らの狙いは命ですからね」

「まあ、そうだよな」


隊長は空を見上げた


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