眼 上
絵を描くことが好きだった。
この地球という美しい世界によって作り出された幻想的な風景、我々人間が数々の挫折と苦難を乗り越えて作り出された人間の技術の結晶たち。
それらをキャンバスに落とし込むのがたまらなく好きだった。
私はこの世界が好きだ。
こんなにも美しいものを数えきれないほどの物を生み出してくれたのだから。
もしこの世界に神様がいたのだとしたら私は神様にお礼をしたいほどに。
しかし私はのちに神を恨む。
ある朝私が目を覚ますと視界の中に黒いもやがかかっていた。
最初のうちは軽い飛蚊症かと気にせず1日をすごした。
しかし次の日もその次の日も視界から黒い靄は消えず、逆にどんどん面積が広がっているようにも見えた。
流石に両親に相談し医者に診てもらったところ網膜剥離だと言われた。
まだ14歳である私はその言葉の意味がわからず医者と両親の話について行けなかった。
医師との話が終わったのか母が私に向いて告げました。
「お前は目が見えなくなったんだよ」
何を言ってるのか理解が追いつかなかった。
しかし、逃れようのない事実にただただ悲しみが込み上げ、ついには病室を飛び出してしまった。
それからただただ辛く文字どうり光のない日々を過ごし、私は視覚障害者となったのだった。