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愚痴をこぼしたいみのり  作者: みのり


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10/1【バレました】

 こんにちは、みのりです。


 今日、お見合いに行ってきました。

 少し良い日本料理のお店の、座敷で顔合わせをしました。

 相手は、私より10歳年上の、恰幅の良い男性でした。


 ずっと不機嫌そうで、とても空気が悪くて……私はずっと不安でたまりませんでした。


 私が地味なスーツ姿だったからかわいげがなかった?

 私が貧相で化粧もへたくそだから目も合わせたくない?

 私の魚の食べ方が汚かったから食欲が消えうせた?

 意地汚く、出された料理をすべて食べてしまったからドン引きした?

 母が暴露した私の失敗話が笑えないくらいきついエピソードだったから返事もしたくなかった?

 お仕事の話を聞いて、すごいですねを連発してしまったからイヤミに聞こえてしまった?


 最初から最後まで私の気遣いが空回りしていました。

 相手方のお母さんとは、比較的穏やかに会話できたんですけどね。

 私の気遣いの言葉を受け入れて笑ってくれていたし。


 仲人さんとお互いの母親が退席した後、お見合い相手と二人だけで残されたんですけど、すごく……きつかった。


 作り笑いバレてますよ、普通こういう場に来るなら華やかな装いできますよね、気が進まないからってそういう小細工やめてください、わざとらしい褒め言葉が鼻につく、あなたの話は偽善丸出しで不愉快だ、誰かの意見に合わせて前言撤回する人は無理、自分の意見がないんですか、母が仕事をやめろと言ったらやめますよね、君はこの先ずっと僕におんぶにだっこになるつもり?働きたくない言い訳を責任転嫁するのは幼い事だ、大人ならきちんと自分の生活費を稼いでもらわなければ、今は共働きの時代であり母親のいう専業主婦という考え方はナンセンスだ、結婚するなら働いてもらわないと困る、嫁入りする覚悟が足りない、いい歳をして親の言いなりなんてありえない、今後は僕の言う事に従ってもらわないとこの話を受ける気になれない……。


 私の全てを否定して、攻撃されて。

 なのに、上から目線で受けてやってもいいという態度。

 大嫌いな上司をさらに拗らせたような…身勝手な、年上だからって偉いと思い込んでる、自分は尽くされて当然と信じている、自信に満ちあふれた人でした。


 とてもじゃないけど、同じ時間を過ごすのは無理だと思いました。


 一秒でも早くこの場から立ち去りたい思いで、自分下げをしました。


 私は自分の意見を出すのはおこがましいと思うくらいダメな人間なんです、華やかな服なんか来たら服のメーカーさんのイメージが悪くなってしまうので着られなくって、喪服ですら似合わないんです、お目汚しになってしまってすみません、人に気を使わなければ私は存在してはいけないくらいできが悪い人間なんです、今日はかなり気を使ったのですが、やっぱり不愉快な感情を持たせてしまったみたいで申し訳ないです、誰かに従う事は私にとって楽なのですが、たぶんお母様もあなたも、私が従う事で計り知れない気分の悪さを感じてしまう事になると思います、一人で家にいると常に悪いことを考える癖が暴走してしまうので専業主婦にはなりたくないとは思っているのですが、こんなに無能ではいつ首になるかわからないのでお約束する事はできないです、嫁入りするという事はこんな底辺の出来損ないが家族になるという事ですよね、ご迷惑をおかけする事になるとしか思えません、それでもよろしいでしょうか、私には断る権限は与えられていないのでお手数をお掛けして大変申し訳ないのですが、ご判断をお任せしてもよろしいでしょうか……。


 相手の人は、軽蔑して汚いものを見るような目を向けて、この話はお断りしますと言って帰って行きました。


 心底疲れ果ててしまった私は、自宅アパートに帰って……つい先ほどまで、母親から叱られていました。


 なんで断られるの、あんたの話し方が悪かったんでしょう、どうして普通にコミュニケーションが取れないの、いつまでも独り者とか恥ずかしいでしょう、いとこはもう二人も子供産んでるのに、お兄ちゃんの上司が仲人なんだから心証が悪くなったらどうするつもりなの、アンタ仕事辞めて花嫁修業をしなさい、マナー教室と自己啓発セミナーに行くのよ、そんな根暗では誰にも相手にされない、なんでみんな明るくて溌剌としている我が家なのにあんただけいつもこうなの、私に余計な心配をかけさせないでちょうだい……。


 なんかもう、心の底から、どうでもいいやって思ってしまって。


 母親に……付き合っている人がいるから、これでよかったんだと伝えました。


 あれこれ詮索されましたが、いずれきちんと話すから今はそっとしておいてと言って電話を切ったんです。


 私は……嘘はついていません。


 実は昨日……彼氏から、電話がかかってきたんです。


 ……長い、長すぎるラインの文字を入力していた、真っ最中に。


「僕は!!みのりとは別れない!!」


 いきなりの宣言に、びっくりしてしまって。


 なぜなら、別れ話なんて……昨日のラインでは、全く出ていなかったのです。


 彼氏と和解をする前は不穏な事もありましたが、和解してからは一度だって別れるなんて話は出ていませんでした。


 私は昨日の夜まで、良い人のふりをして彼氏の前からいきなり消えるつもりだったので、最後に送ったのは今日もお疲れ様、明日もLINE楽しみにしてるねってメッセージだったし。


「と、突然、何?私は別れるなんて……言ってないよ?」


 別れるための文字を入力していた私は、ちょっとおかしな反応をしてしまって。


「(私の本名)は……【みのり】だよね?!」


 信じられない事ですが、彼氏は……私の【愚痴を吐きたいみのり】の、読者だったんです!!!


 彼氏は、いわゆる読み専なのだそうです。

 ヒューマンドラマジャンルのネガティブな小説を読みあさっては、自分なんか大したことないのだと安心するような人だったのです。


 九月に入って、毎日更新している私の作品に出合い、毎日チェックをしてくれていたのだそうです。


 はじめは……全く私の書いたものだとは、予想もつかなかったんだそうです。

 普段私は……ポジティブな事しか口にしていないので、わかるはずもないんですけどね。


 でも、最近私と【みのり】が……重なることが多くなって、おかしいと思うようになったのだそうです。


 昨日の投稿を見て、疑いは確信に変わり……すぐに電話をかけたのです。


 彼氏は、私の本音を……知ってしまったんです。

 彼氏にとって心地のいい言葉ではない、私の本性を知ってしまったんです。


 最近、ずいぶんひどい事も書きましたし、彼氏の傷心はどれほどのものだったでしょうか。


 恥ずかしさと、気まずさと、申し訳なさと……頭の中がいっぱいになってしまって何も言えなくなってしまいました。


 その沈黙が……私が【みのり】であることを物語ってしまって。


 でも……彼氏は、私の本音が知ることができてよかったと、泣きながら伝えてくれたんです。


 お願いだから、これからは良い事も悪い事も、思ったことは全部伝えてほしいと、嫌いになんかなったりしない、だから本音と聞かせてくれないかと……言われました。


 僕たちは絶対に分かり合える、寄り添い合える、支え合う事ができる、だから一緒に生きていきたい、これからもずっと…一緒にいたいんだと。


 今日のお見合いは……彼氏の言葉が無ければ、受けてしまっていたと思うんです。

 自分の感情を捻じ曲げて、気に入らない人に懇願して、へりくだって、言いなりになって……親の望む展開を受け入れて、他人のために生きるところでした。


 自分の人生を投げ出さないで済んだのは……彼氏のおかげです!


 ……ダイ君、本当に、ありがとう!


 今日の事、昨日のこと、思い切って全部書いたよ!


 この投稿を読み終わったら……電話、下さい(笑)




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