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終焉の詩姫  作者: 立川マナ
第一章
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もし

 それは、帰り際だった。

 カヤは俺たちを門まで見送りに来た。ここに来るまで、「来てくれてありがとう」と何度か笑顔で言っていたが……無理しているのは明らかだった。


「そうだ、そうだ」と、アンリは門の前で、急にカバンから台本を取り出した。


「これ。カヤっちのクラスの浜田に渡してくれない?」

「え? 浜田くん?」

「興味あるから、台本みせてくれ、て言ってきたからさ」

「まだ人員いるのか? もう充分だろ」


 俺は呆れて言った。そんなに大掛かりなものでもないだろうに。


「いいのよ。大規模であればあるほどいいの。

 だって……目立つじゃない!」


 冗談だろ。こちとら、目立たず、ひっそりと終わらしたいのに……


「浜田くんね。わかった」


 カヤはまた無理した笑顔をみせて、台本を受け取った。


「……」

 

 冷静になって明日考えよう、と俺たちはおさめた。だが……カヤは元気がないままだ。

 まあ、そりゃそうだよな。両親が自分を売ろうとしているかもしれないなんて……たとえ、実の両親じゃなくてもずっと育ててくれたわけだし、ショックだよな。


「ねえ……アンリちゃん」


 ふと、カヤは台本を見つめながら、か細い声で言った。


「なに?」と、アンリは軽いノリで返事をする。


 なんだ、台本のダメだしか? と、冗談でも言おうかと思ったが……どうも雰囲気が重過ぎて、そんな勇気はでなかった。

 カヤは目を細めて、愛おしそうに台本を見つめていた。さっきの表情とは全然違う。


「もし」と、カヤは静かにつぶやいた。

「え?」

「もし、私が売られても……

 カインが迎えに来てくれるんだよね?」

「!」


 カヤは台本をぎゅっと抱きしめて、アンリを見つめていた。とても悲しそうな笑顔を浮かべて……。

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