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終焉の詩姫  作者: 立川マナ
第一章
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私、恋してる

「カヤ!?」


 お母さんは手を腰に当てて怒鳴った。


「こんな時間になんなの?」


 あやしまれるのは覚悟の上だった。


「劇の練習」


 もう、うまい言い訳をする気すら起きない。それでも、今怪しまれたら……あの電話の男に連絡されてしまうかもしれない。

 だから、演じなきゃ。そう、劇の練習。

 私は、自分に言い聞かせた。我ながら、子供じみた発想だ。でもそうでもしなきゃ、私は今にも母に問い詰めてしまう。「契約ってなに? お金って何? 電話の男は誰?」と。


「劇の練習って……こんな時間にしなきゃいけないことなの?」

「近江さんが急に思いついたことがあって、すぐにでも話し合いたい、て」

「男の子まで部屋にいれるなんて……」

「藤本くんは、主役なの」


 本当は、小道具係。


「明日、学校でしょう?」

「……」


 いつものお母さんだ。急に、苦しくなった。どういうことなの? 一体、何がどうなってるの?

 ダメ。涙がでてきそう。


「大丈夫。ちょっと話すだけだから」

「え? あ、カヤ!?」


 たまらなくなって、私は逃げるようにリビングを去った。怪しまれたかもしれない。でも……大丈夫よね。まさか、私が電話に盗聴器しかけたなんて、夢にもおもわないはず。


 それに、二階には、アンリちゃんと……和幸くんもいる。

 そう。和幸くんもいる。

 私は階段を上っていた足を止めた。いつのまにか、自分が微笑んでいることに気づいた。


「……」


 こんなときに……なに、喜んでるんだろ。自分が情けなくなった。でも、嬉しい。和幸くんがいてくれるなら大丈夫、て不思議と安心するの。

 アンリちゃんが和幸くんと現れたときは、なんだか悲しかったけど……偶然会った、て聞いて安心した。


「あはは……」


 自然と妙な笑いがこみあげてきた。私は両手で顔をおおった。

 こんなときに、思わぬことに気づいてしまった。


「私……恋してる」


 相手は、劇の小道具係だ。

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