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始まり

「すいませんでした。部下には私からよく言っておきますので…。」

「頼むぞ。第一に君の指導が悪いんじゃないのか?君はいつもーー」


オフィス街のよくあるビル。その7階にはひたすらに頭を下げるパッとしない男と大きな腹と禿げあがった頭をした男の姿があった。

慣れた様子で頭を下げるのは 「藤村太一」 しがないサラリーマン。顔を真っ赤にしながら怒鳴り散らすのは太一の上司である。

「私は嫌がらせをしたくてこんな話をしているんじゃないぞ。この会社と君のことを思ってーーー」

(こんな事ばかり言ってるけど俺に当たりたいだけなんだよな…。)

太一は上司が今日ミスをして怒られ不機嫌なのを知っていた。


もはや毎日のデイリーミッションとなっている上司のストレス発散に耐えていると上司の携帯からアラームがなる。


「もう終電の時間じゃねえか!俺は帰るからちゃんと閉めていけよ!」

足早に立ち去る上司を見送り太一は片付けを始める。

「やっと終わったか…。この時間があれば一件片づけられたのになあ。」


片付けを終え自分も終電に遅れるわけにはいかないとさっと身支度を済ませ駅へ向かう。

(明日も出勤しなきゃ終わらないかなあ。)

休日がまた消え去ることを確認していると駅についた。

金曜日の終電前だけあって駅まわりやホームには酔っ払いがひしめき合っている。


(明日は早く行かなくてもいいし俺も帰ったら飲むかなあ。ビールとから揚げ…いや、こないだ頂いた日本酒と焼き魚ってのもありだな…と言ってもコンビニのだけど。)


晩酌のメニューに思いを馳せながら電車を待っていると、フラフラと歩いてきた酔っ払いが目の前の女性にぶつかった。


「危ない!」


無意識に伸ばした手は女性を引き寄せたが、その反動で太一の体はホームから落ちてしまった。


「嘘だろ・・・?」



ーーー女性の悲鳴と鳴り響く警笛に包まれながら太一の人生は幕を閉じた。ーーー




「我ながらうだつのあがらない人生だったなあ。大学受験や部活の大会はここぞというときに失敗したし、好きな女の子と仲良くなっても肝心な時にはいつもヘマばかりして結局のところ1度も付き合うことはできなかったもんな…。」


真っ暗になった世界で時間に自分の人生を振り返る


「1回くらい物語の主人公みたいに輝きたかったな…」

「まあ最後に人助けできたし、俺の人生も無駄ではなかったのかな」



最後の最後で誰かの命を助けたことを誇りに思い、死を受けいれて目を閉じようとした。





「ちょーーーっとまったーーーー!!」

大きな声が太一のまぶたを止めた。


太一が驚いていると目の前が光り始めた。


「な、なんだ?」光の中から美しい女性があらわれた。

暗闇から出てきたのはふわふわとなびく金髪と水色の瞳はこの世のものとは思えないほど美しかった。


「あぶない!間に合ったーー!」女性は慌てながら話を続ける。


「いきなりだけど…太一君ごめんね?」その女性は太一に頭を下げた。


「えっと…あの…どちら様でしょうか?失礼ですが僕にはあなたの事がわからなくて…」

いきなりすぎる展開にあっけにとられていると女性は言葉を繋げた。


「私は女神のエリュン。私あなたに酷いことをしてしまったの。私達神様は人間に才能やなんかを授けるんだけど、あなたには私の一存で能力を発揮できないっていう才をさずけちゃったの。せっかくあなたの能力が高かったのに毎度失敗ばかりいってたのはそのせい。あなたの人生を見てきてんだけど不憫すぎて…今は深く反省してるわ。」


(女神…どおりで普通の恰好じゃないと思った。)

不思議とこの状況を太一は疑わなかった。


「そんな漫画みたいな設定ホントにあるんですね…なんで僕にそんなことを?神様の気まぐれってやつですか?」


太一は純粋な気持ちで質問した


「えっとー…すんごい言いづらいんだけど…」


エリュンと名乗る女神はもじもじしながら話をはじめる


「あなた…別れた彼氏に似てたのよ。育った姿が。当時フラれたての私はこのまま育てば彼に似るであろうあなたに嫌がらせをしてしまったの。ごめんね?」


あまりのしょうもない理由に太一はポカンとする。


「まあ。でもそれも仕方ないことですよ!終わってしまったものは気にしてもしょうがないです!!」

太一は目の前のダメな女神のために無理に笑ってみせた。


「だから!!私はあなたに第二の人生を与えようと思います!」

「はい?」

突拍子のない発言に太一はついていくのがやっとである。


「違う世界にあなたを生まれ変わらせて、そこでしあわせな一生をおくってほしいの!」

エリュンはキラキラとした眼で太一に訴えかける


「それっていわゆる異世界転生じゃ…」

太一はオタクとまではいかなくても漫画やアニメはそこそこに楽しんでいるタイプであった。


「そう!!異世界転生!好きでしょ?その主人公にあなたはなるの!私のギフト付きで!!!」

この女神のギフトには少し怖さを感じつつもアニメのような雰囲気に心がおどりはじめる。


「いきたそうね!よかった。」エリュンは嬉しそうに太一をながめる。


「じゃあ早速だけど太一のいく世界についてざっくり説明するわね!地球とはまったく違う世界 エーツ。この星であなたは過ごしていくことになるわ。人間以外にも種族がいたり魔物、モンスターみたいのもいるし魔法だってつかえるわよ!」

ありがちな世界観だがそれがいいのだとエリュンは胸を張る。


とりあえず言われたことを頭に入れるだけで忙しいが太一は少しずつ笑顔になった。

(剣と魔法のファンタジー…それに神様からのギフト。これは楽しくなりそうだ…でも)


「元居た世界はどうなるんだ?恋人…はいないけど田舎の両親や職場の人とか不思議に思うんじゃ」


「そこらへんは適当にうまくやっておくわ。あちらのあなたはもう死んでしまったからあちらの世界では生きていけないし…申し訳ないけど向こうの世界に行かないならこのまま静かに人生を終えてもらうしかないの。」

エリュンはしゅんと下を向く。


「生き返ることもできないのなら迷う必要もないな。転生お願いするよ。」


太一の言葉を聞くとエリュンはぱあっと笑顔を取り戻した


「あの世界じゃ太一ってのはなんだか合わないわね…私が名前を考えてあげるわ!うーんと…そうだ!アレオノール!あなたはアレオノールと名乗りなさい!いきなりおじさんでスタートってのもあれだから年齢はもう少し若くしておくわね!」


ルンルンと設定を決めるエリュン


「やっぱり使命とかあるのか?魔王を倒すとか、世界を統一しろ。とか」

「ううん。そういうのを頼んで世界を渡らせることもあるけど、今回は特殊なパターンだし自由に生きてくれればいいわ。できれば大量殺戮とかはやめてほしいなって思うけどね。」


(そうか…自由っていうのもいいか! …ってかこいつ今さらっととんでもないこと言わなかったか?)


「そろそろいくわよ。細かいことは向こうにいけばわかるわ!」

そう言うとエリュンは太一に抱きついた。中身はともあれ美しい女神に抱きつかれた太一はしどろもどろしている。すると辺り一面が光り始めた。



「さあ。物語の始まりよ。」




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