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神無月の守護者  作者: なまこ
皐月
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皐月(2)

ゴールデンウィークが開けてだいぶ経つ。

季節は少しずつ夏に向かっていて、俺達の制服も夏仕様に変わった。前の街に住んでた時はこの時期は既に暑くて、寒いなんて感じなかったんだけど……田舎だからかな、少し肌寒い時がある。


そんな中でもひなみだけはまだ長袖のセーターを着ている。寒がりらしくて、セーターなしではやっていけないとの事。


ある雨の日の昼休み。

「あっ、そうそう。ちょっと今日の放課後、また美術室行こうと思うんやけど、とやまるとひなみちゃん()ん?」

「美術室!? 行く行く!! たまに前通る時あるんだけど、あそこなんかすごいよね!」

「じゃあ俺も行こうかな」

こうして、俺達の放課後の予定は決まった。


放課後、三人で美術室に向かう。そこには、この間とは違う絵を描く柚希先輩がいた。

「いらっしゃい、今日はどうしたのかな」

「いえ、ちょっと先輩の絵が見たくなったので」

華代が笑顔で答えた。

「えっと、兎夜くんともう一人……その子は?」

「初めまして! わっちは氷見ひなみです。よろしくお願いします!」

「あぁ、よろしくね。……今日はちょっと肌寒いね。二人は半袖だけど寒くない?」

「私は全然大丈夫です。とやまるどう?」

「いや、なんか今日ちょっと寒いな〜とは思ったけど、特に問題ないですね」

こういう友達に返事してるのか先輩に返事してるのか分からない時って、ちょっと話し方に迷うんだよなぁ。

「そう。なら大丈夫だね」


柚希先輩は、部活専用ジャージの袖をこの間はまくっていたんだけど、今日はおろしていた。正確に言うと、俺達がきてからおろした。そんなに寒かったのかな……?


「あっ、柚希先輩! 誰か来てるんですか??」

俺達以外の声。美術部の後輩かな?

「おっ、旭飛(あさひ)ちゃんかな」

旭飛。そう言われた少女は俺達より少し小柄で、俺が言うのも変だけど、制服が真新しくて初々しい。


「はい、旭飛です!」

「こちら、私の友人たち。華代ちゃん、兎夜くん、ひなみちゃんだよ。全員二年生」

「あっ、二年生の先輩だったんですね!初めまして!翁長旭飛おいなが あさひです」

それぞれ挨拶を交わす。ハキハキとしていて礼儀正しい感じの後輩さん。運動部でも通用しそう。


「あら、中学の時旭飛ちゃんって美術部おったかね?」

そういえば、華代も中学生のときは美術部だったって聞いた。たしかに、この街に中学校はひとつしかないから、知らないってことないはずなんだよね。

「私、もともと剣道部やったんです! やけど高校では

絵が描きたくて……」

ニヒッって文字が隣に出てきそうなくらいの明るい笑顔で答えていた。てか、俺の予想的中してない……?


「……ん、兎夜先輩。変わったリストバンドしてますね。それ、いつから持ってるんです?」

「んぇっと……中学生のころ、友達に貰ったんだよね〜、どこで手に入れたとか、そういうの分からないんだけど……」

黒ベースに濃い目のピンクのラインが二つ。真ん中にウサギのマーク。たしかにこんなブランドないし、変わってるっちゃ変わってるかも。


「これ、なんか気になるの?」

「うーん、これですね、前に友達に見せてもらったこの町の資料に出てくる絵に似てるんですよ……。まぁもちろん、こんなにオシャレな感じではなかったんですけど」

この町の資料? なんで俺の私物が資料なんかに載ってるんだろ……。

「先輩方、ちょっと兎夜先輩借りていいですか? どうしても気になるので……」

えっ、そんなに? そんなに気になる?

「……? うん、構わないけど。とやまる大丈夫?」

「あーうん、俺は大丈夫!」

よく分からないけど、この子、俺のリストバンドそんなに気になるんだなぁ……


「あっ! ごめんわっち今日用事あるんだった!! わっちちょっと先に帰るね!」

ひなみは急用らしい。タッタッタッと走って帰って行った。


「柚希先輩、私ちょっとここにいていいですか?」

「全然構わないよ。ちょっと黙っちゃう時あるかもしれないけどいいかな?」

「全然大丈夫です!ありがとうございます」

こうして、三人バラバラになることになった。

……いやでも俺のリストバンド、ほんとにそんなに変?






ある道の端、少女が一人。

「……うん。うん……いや、まだそれっぽい感じないよ。普通の男の子って感じだね」

誰かと連絡をとっていた。

「……いや、でも今日後輩の女の子が何かに勘づいた感じだったよ。リストバンドかな? 多分あれが()()になるんだと思う。…………うん。分かった。とりあえず今から帰るね。またわかったことあったら伝えるね」

そして少女は去っていった。その少女がいたあとには、季節外れの雪が降っていたという。

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