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神無月の守護者  作者: なまこ
神無月
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神無月(9)

タコのバケモノみたいな姿をしていた邪神様は、大きなドラゴンへと姿を変えた。ひときわ大きかった今日の月も隠れてしまっている。視界の薄暗さが増す。

さっきまででもだいぶ苦戦していたのに、自分より何メートルも大きい化け物を相手に、どう戦うのがいいのか、少し考えてもいい案は出ない。思っている以上に焦っていることを自覚した。


「……これ、どう戦えば」

口から漏れた言葉がこれだった。どうすれば正解かわからない。雷斗も下を向いて目を閉じていた。

どうにかしないと、なんとかしてこの状況を打開する方法を考えないと……。そう考えていると、横でふわっと風が吹いた。さっきまで横にいた雷斗がいなくなっていた。


「どんな形状になったって変わんねぇよ!」

迫る触手を刀ではじきながら前に進む。触手が数本、地面に落ちて暴れているのが見える。雷斗が切り落としているらしい。ある程度攻撃を仕掛けたら、少し引いてもう一回突っ込んでいた。また数本の触手が落ちる。邪神様にとっては結構ダメージが大きいはずなのに、苦しむ様子を一切見せなかった。……嫌な予感がする。


邪神様の本体に向かう雷斗の目の前に、血みたいな色の彼岸花の花束が向けられた。さすがに雷斗も足が止まっていた。あんなのに爆発されるとさすがにまずいと思って銃口を向ける。でも、すでに雷斗は膝から崩れ落ちていた。雷斗の足元に出来た彼岸花畑は、出来てまもなく爆発し、彼を吹き飛ばした。血の気が引く。


「雷斗! 大丈夫!?」

土の上に雑に落ちた雷斗は、フラフラとしながら立ち上がって

「あぁ……目の前に彼岸花が見えた時は死ぬかと思った。けど、あれは爆発しなかった。大丈夫だ」

って言ってるけど、明らかに雷斗は限界を超えている。雷斗が放つ大丈夫は大丈夫として機能していない。……どうしようってあんまり考え込んでても仕方がない。横から伸びてきた触手を撃ち抜いてから前に進む。


迫ってくる触手をかわして前に前に進む。足元に咲く彼岸花が爆発する音が聞こえる。止まったら終わりだろうな。邪神様の本体に近づければ、なにか弱点みたいなものが見つかるんじゃないかって思って近寄るけど、目に見える範囲では何も無い。闇雲に撃っても仕方ないってことか。

そんなことを考えていると片足が動かなくなって視界が逆さまになった。

「あっ……」

邪神様の赤く光る目が俺の姿を捉えている。それでも構わずに弱点らしき場所を探すけど、何かを見つけることも出来ず、悪あがきで弾いた引き金も、ただカチッと音がしただけだった。為す術なく地面に叩きつけられる。全身が痛くて仕方がない。


今までのことを思い出す。普通に考えれば、心臓を撃ち抜けば邪神様を倒すことが出来るはず。でも、あんなに大きな体をしているんだから、一回撃ち抜いたくらいじゃどうしようもない気がする。アイツは一体どうやったら倒せるんだろ。


「いつまでも寝てんなや守護者」

「あぁごめん。いやてか、むしろあなたは寝ててください」

「寝ねぇよ。んで、なんか見えたか」

サッと三枚くらい起爆札を投げて爆発させながら言った。触手が迫っていたみたい。

「いや、特に何も」

「……ダメか」

そう言うと雷斗はまた邪神様に向かって走り出した。けど、邪神様は一向に雷斗を狙う気配がない。すごく、嫌な感じがする。

「なんか変だ、一旦戻って……」

邪神様の目が微かに歪んだのが見えたと同時に雷斗が倒れ込んだ。むせては喘ぐのが聞こえる。本当にヤバいって誰が見てもわかるような状態。


「お前、雷斗になにした?」

「別にぃ? ……んで、体内から崩れる感じはどうだクソザコ。吹き出た血が花みたいで綺麗だろ。さてあと何分生きてられるかな」

「お前……!」

手当も出来ないし、助ける術もない。すごく悔しい。こんなに近くにいる人も助けられないのがすごく悔しい。けど、今俺に出来ることは……。そう思って真っ直ぐ邪神様に突っ込む。迫る触手をかわして、咲く彼岸花には目もくれず、今できる最善を尽くす。近づいて邪神様の心臓と思われる部分を撃ち抜く。一瞬だけ動きが止まったのを見た。心臓を何回か撃ち抜けば勝てるかもしれない。


自動リロードが完了するまで触手をかわす。何度か掠って至る所から痛みがするけど、そんなのを気にしている暇はない。たまに雷斗の方を見ながら攻撃をかわし続ける。……息、してるよね?

自動リロードが完了したと同時に二発目を撃ち込む。邪神様の口からヴゥと声が漏れたのが聞こえた。あと一回くらい撃てれば……!


触手の攻撃の速さが増す。さすがに舐めてはいられないってことだろうきっと。俺を狙って振り下ろされた触手が地面に叩きつけられる。地面が少し揺れたような気がした。あんなのに上から叩かれれば、間違いなく頭が潰れて死ぬ。そう考えるとゾッとした。


リロード完了の音が鳴る。闇雲に撃って外すことだけは避けたいから、リロードが終わってもなお攻撃を避け続け、隙が出来るのを待った。何度も傷ついた腕を伸ばして、目を見開いて照準を合わせる。何もかもが合ったその瞬間、引き金を弾いた。スローモーションのような感覚に襲われる。一瞬どうなったか分からなかったけど、しっかり邪神様の心臓を撃ち抜けていた。邪神様の唸り声が聞こえる。そして、そのまま邪神様は動かなくなった。


「やった……のか?」

……終わった。これで終わったんだ。緊張していた訳では無いけど力が抜ける。けど、いつもみたいに倒れるんじゃなくて、雷斗の元へ向かった。

「生きてる……?」

返事はない。でも、微かに息を吸う音が聞こえる。出血が酷くて、急いで手当しても助かるかわからない。でも、何もしないよりは……そう思って手を伸ばした瞬間、体にものすごい衝撃が走った。


何が起こったのか理解出来ない。伸ばしていなかった方の手が血で真っ赤に染まっていた。

……いや、手だけじゃない。足元付近まで真っ赤になっている。何が起こったのか把握する前に視界が揺れて倒れ込んでしまった。目を凝らしてみると、さっき倒れたはずの邪神様が冷たく俺たちを見下していた。動く一本の触手が赤黒くなっているのがわかる。恐る恐る目線を下に向けると、自分の体に大きな穴が空いていた。あぁ、あれに貫かれたんだ。


「愚かなやつ。お前の攻撃、痛くも痒くもなかったわ」

何か言い返そうとしても、喉から出るのはドロドロとした鉄の味をした液体だけ。吐き出すことは出来ても、息が上手く吸えない。自分の体からヒューヒューと音が聞こえる。

「血で出来た花畑なんてなぁ。この様見せたら、朱花(あやか)も笑ってくれるだろうな」

頭が回らない。体も動かない。

「でも、見飽きたから終わりだ。俺の前から消えろ」

今まで見た事がない攻撃が来る。赤い光が大きくなっていくのがぼやけた視界の中で何となくわかる。

もはや抵抗することも出来ない。


……ごめん華代。約束、守れなかった。

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