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神無月の守護者  作者: なまこ
神無月
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神無月(2)

十月一日の昼過ぎ頃、彼岸町で古くから御三家と呼ばれていた塩月、若草、神崎家では、夜に行われる儀式の準備が進んでいた。


「華代ちゃん、とりあえず今日のやつこれなんだけど」

柚希が華代の前で大きな包を開ける。中には綺麗な着物が入っていた。

「ほんとこれ綺麗ですよね……柚希先輩が作ったんですか?」

「いや、私が作ったのはデザインだけだよ。あとはうちの親がやった。次回から私も作らされるらしいけど」

柚希がそう言うと、

「まぁ、次回なんてないんですけどね」

と華代が小声で言った。


「華代ちゃん、だいぶ気の持ち方が強くなったんじゃない?」

柚希が少しからかうような感じで聞いた。それを聞くと、華代は少々イタズラな笑みを浮かべて

「私は、信じているので」

と言った。

「ふふっ、そっか。じゃあ、大丈夫だね」


「そうだ、今日の流れはどんな感じでしたっけ?」

「えっと、儀式までは私達御三家は普通に過ごす。そして、華代ちゃんを除く御三家の二人は大人たちの目を盗んでそっちに向かう感じだよ。儀式終わったらすぐ兎夜くん来てくれるからね」

「ふふっ。で、その後私はひなみちゃんと行動するんですっけ?」

「そうそう、邪神様からできるだけ遠ざかってもらおうかなって」

「柚希先輩はどんな感じで動くんですか?」

「私? 私は儀式を抜けたあと、華代ちゃんの無事を確認したら兎夜くんのところに加わりに行くよ。確実性を上げるには人数が必要みたいだし」

「そうなんですね。うーん、なんだろ……自分だけ無力なのが本当に申し訳ないです」

「いいや? 華代ちゃんは一番重要な役目を果たしてるでしょ? そこだけで十分なんだよ」

柚希は華代の頭を軽く撫でた。華代は少し恥ずかしそうに笑っていた。


「華代ぉ、着付けしようかね」

「はーい! 今行きまーす! 柚希先輩、またあとで」

「うん、また後で会おうね」

華代が部屋から出ていって、柚希が部屋に一人で残った。途端目付きが変わり、柚希は塩月家を出た。


若草家の自室に帰るなり筆を取って、大きな絵を描き始める。

「……これは切り札だね。本当にどうしようもない時だけに使おう」

描き終わったその絵を床に寝かせて、柚希は墨で描いたネズミを二匹程具現化させた。

「この絵、乾くまで見張っててくれる? 結構時間かかっちゃうかもしれないから」

柚希がそういうと、墨で描かれたネズミたちはお互いの顔を見合って頷いた。

それを見てから、柚希は安心した表情を浮かべ、自室を後にした。





夕方を少しすぎる頃、雷斗は会場設営の時に着ていたジャージから制服に着替え、薄暗くなった道を歩いていた。もうすぐ儀式が始まる。

「はぁ……ギリギリまで起爆札作ってたのが悪かった。時間やばいな」

そうは言いつつも、一切急ぐ気配がない。

「どーせ全員揃わねぇとやらねぇんだろ。これだけは走ってまで行く気になれねぇよ。てか、月明刀どこに置いとくかな……取りに帰るだけでロスタイムだから持ってきてはいるが……」

ブツブツと一人言を言っていると、彼の足元に何かが突き刺さった。

「ん、なんだこれ」

手に取ったものは、塔の絵が描かれたカードであった。絵は少々不気味である。


「それ、あんたの行く末っスよ」

雷斗が辺りを見渡す。誰もいない。

「……何処にいやがる。隠れてねぇで出てこい」

そう言い終わったすぐに、雷斗の足元に刺さっていたカードから強い衝撃が発生した。それに吹き飛ばされ、ブロック塀に体をぶつける。


「五月はどうも世話になったッスね」

雷斗が起き上がると、そこには黒川が立っていた。

「お前、まだ邪神の力使えんのか」

「あぁまぁ、あんたのお陰っスよ。ザコ刀で刺されたくらいで、この力は消えたりしねぇみてぇでね」

そう言うと、黒川はカードをシャッフルして、それを三つに切ってまた一つに戻した。

「ふぅ、まぁ別に、邪神様からの命令ではねぇんだが……恩は返しとこうと思って」

一枚のカードを取って、ニタッと笑っていた。


「俺はお前みたいなザコの相手してる暇なんかねぇんだよ、去れ」

それを聞くなり黒川は手に取った1枚のカードを宙に投げた。それはすぐに消えてしまい、その数秒後、八本の槍に変わって、雷斗に向かって降り注ぐ。

「さて、ザコはどっちなんでしょうね……」

全てかわして、軽く一息をついてから

「は? 貴様なんぞソッコーでケリつけてやるよ」

そう言って、彼は刀を抜いた。

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