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神無月の守護者  作者: なまこ
長月
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長月(5)

週が明けてまた学校に行く。神無月が刻々と迫ってきているけど、この神無月のことについて知っている人達以外はなにも変わらず、普段通り生活しているように見えた。


こうやってきっと、何十年何百年と……一部の人たちの犠牲と苦労で普通の生活って成り立ってたんだろうなとか考えてしまう。

……もう、あんまりそういうのは考えないようにしようって思いながら、一日を過ごした。


「えーじゃあここの問題を……赤沼、答えてくれ」

「えっマジ? うっわー、わっかんなー」

赤沼さん。昨日いわしっちと話してる時に名前が出てきた。うちの学校の生徒だし、いわしっちが言ってる赤沼さんとは別人なんだろうけど、別人にしては共通点が多すぎて、気になってしまう。


新学期早々席替えしちゃったから赤沼さんとは席が遠くなっちゃったけど、幸にもまた俺は一番後ろの席が当たってたから、教室内は見渡し放題だった。

だからずっと今日は赤沼さんのことを見てしまってる。周りから見たらちょっと変な人っぽく見えてしまうのかもしれない……だけど今日は勘弁して欲しい。


授業が終わって配り物をしてる時に、赤沼さんに自然に近づける機会があった。

同一人物なわけないから、聞いたら絶対変なやつだと思われちゃうのは分かっているんだけど、話しかけてしまった。


「ねぇ赤沼さん」

「お? 珍しいぢゃん? 何?」

「あのさ、この町から少し遠い所にある、私立西映(せいえい)高校って知ってる?」

西映高校は、いわしっちが通っている高校。この町とは少し距離があるから、こっちの地域じゃ認知されているかも曖昧。


「……あぁ、西映か! 知ってる、あんたが前通ってた白城(しらしろ)と近い所ぢゃん? んで、それがどうした?」

「いや、友達が西映高校通っててさ、こっちでその名前全然聞かないから、こっちの人ってここ知ってるのかなって」

「さぁ? 俺は知ってるけど他のやつは知らね」

「まぁそうかぁ。でさ、俺のその友達が岩岡滋俊って言うんだけど、そいつの友達が赤沼さんと同じ名前だったからすごいなって思っちゃって」

「へぇ、面白いこともあるもんだな。つーかお前、俺なんかと喋ってる暇、あんまりないんじゃねぇの? 」

授業が終わってるから、時間が無いなんてことは無いんだけど……と思っていると


「とやまる〜、配りもん終わった? 昼ごはんたべよ〜」

「あっ……はーい、 今行きまーす! ごめん赤沼さん、ありがと」

「おーよ」


そうして赤沼さんの所を去った。西映高校のことを知ってるあたり、どうしても同一人物感が抜けきらない。でも、仮にいわしっちの友達の赤沼さんと、こっちの赤沼さんが同一人物だとして、赤沼さんになんの目的があるんだろう。そう考えると、やっぱり同一人物じゃないよなって思う。

こんなことを、帰りの会がある時間まで考えていた。


今日は珍しく帰りが一人だった。華代は美術室に行くらしく、ひなみは海響高校に顔を出しに行ってくるらしい。

一人で帰っていると、普段は見てないところにも目がいって面白いなって思う。ここにこんなものあったっけ……みたいなの。

そんなこと考えながら平和に家にたどり着けるんだと思ってた。けど突然、屋根の上からなにか飛んできた。それを咄嗟に避けて様子を見る。


「おー、地面殴ってもあんまり痛くねぇなこれ」

砂埃の中をよく見ると、少年が立っていた。赤いシャツを着ていて、上から黄緑のパーカーを着ている。顔がよく見えないなって思っていたら、黒っぽいヒーローみたいな仮面を付けていた。……少年の右腕は、鉄なのか鱗なのか分からないような見た目をしていて、普通の人間じゃないことは明らかだった。


「……何者?」

そう聞くと、その仮面の少年は手からビームを出した。それは俺の真横をスレスレで過ぎ去って、後方で爆発した。


リストバンドを変形させて、銃口を少年に向ける。

「やっぱそうだよなぁ。まったくよ、いつか闇討ちして楽に倒してやろうと思ってたけど……まぁ、こうなったら暴れた方が楽しいよなぁ」


そういうと彼はこちらに向かって殴りかかってきた。こちらも避けながら引き金を引く。右腕の一部に弾は当たったんだけど、カーンと弾かれた。

彼もまた地面を殴る。よくみたら、その地面に亀裂が入っていた。あんなのに殴られたら骨折れる所の話じゃ済まない。


「あぁこのアーマー式カッコイイけどやっぱ重てぇなぁ。軽い方がいいかな」

そう言うと、少年の両腕が変形した。グニョグニョっとなって、今度は完全な鉄素材になった。その鉄素材の指先に当たる部分をこちらに向けて飛ばしてくる。一、二個掠ってあとはなんとか。もう一回同じ攻撃をしてこようとしたから、腕を狙って引き金を引いた。

「うおっ」

少年の右腕が跳ね上がった。左腕の指先はこちらに向かって飛んでくるので、それを電信柱で防いだ。


「あー、凹んでら。いやでもほんと、思ってたより強えぢゃん? 今日この辺にしとこうぜ?」

「えっ、ちょっと待ておま」

「じゃーね、また明日」


そう言って彼は消えてしまった。掠めて出来た傷の痛みが今更でてきた。

「今のは男の子だったけど……あの言い方ってやっぱり」

カァカァとカラスが鳴いていた。不吉な予感がする。

明日は平和に終われない……そんな気がした。

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