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神無月の守護者  作者: なまこ
長月
35/53

長月(3)

土曜の朝、小鳥が鳴いてる。でもまだ眠たくて、布団に潜り込んで寝ようとする。


「……や、あれ? まだ……」

ひなみの声がする。多分夢の中でも意識があるやつだ、なんだっけこれ……明晰夢?


「と〜ぉや! ねぇねぇ起きた?」

……? 夢の中でも寝てるのかな。どんだけ眠いんだよ俺。


「……うーんじゃあしょうがない、えーい!」

「うっわ!? 冷た!!」

凍りつきそうな冷たさの風が顔にかかって飛び起きた。すごく心臓がドキドキしてる。布団との温度差で死にそう。


「えへ〜おはよう、兎夜。目は覚めた?」

窓からひなみが覗いていた。

「……ひなみ? あれ、どうしたのこんな早くから。ていうか窓からって」

「だってピンポン押しても誰も出ないんだもん。居ないかな〜って思ったけど、窓から覗いたらいたんだ〜」


にへーって笑ってたけど、二階の窓から来るあたりは人間味に欠けるよなぁ。いや、もしかしたらこれは雷斗が悪いのかもしれないけど……。


「あっ、なんで来たかを言い忘れてた! あのね、雷斗が作戦会議するぞって言ってたの。だから連れに来たよ!」

そういえば、九月に入ったら会議しようって言ってたな。ひなみを通したり、スマホで連絡取ったりして予定立てるものなんだと思ってた。


「なるほどね……わかった。なるべく早く準備してくるよ。ちょっと待っててもらってよろしい?」

「はーい! 溶けちゃわないくらいでよろしくね〜!」


いつも以上にサッサと準備を済ませて家を出る。忘れ物とか、そういうのはないと思う。そもそも、忘れるって何を? って感じだし。


「おまたせ、ごめん待たせちゃったね」

「んふ〜大丈夫だよ! じゃあ行こっか!」


少し静かになったセミたちが鳴いてる。空がちょっぴり曇ってるおかげでめちゃくちゃ暑いって訳でもなく、比較的楽に動けてるんだと思う。

ひなみ曰く、俺の家から雷斗の家まではそうそう遠くないらしい。歩いて二十分かかるかどうかくらいだとか。


「これね! これが雷斗の家! でも表から入ると雷斗のお父さんがうるさいらしいから、裏から入ろ」

ドデカい和風の屋敷。純粋にすごいなーって思った。

家の横側を回ってても、明らかに普通の一軒家ではない感じがする。ただただまじまじと見てしまう。


表の入口の三分の一くらいの戸をひいて敷地内にはいる。庭までしっかりしていて、アニメで見るような家だなって感じがすごい。


「なんか……すごいね」

「んー、雷斗の家系って昔から偉い所だから、今でも凄いみたいだね。よくわかんないけど」

そう言ってひなみは笑っていた。


外にある渡り廊下から家の中に上がる。雷斗の部屋は屋敷の渡り廊下の先にある建物の二階らしい。

もう、ちょっと一般人の感覚では分からない。


「らっいと〜、連れてきたよ〜」

階段を登って、ひなみがドアを開けると、そこには雷斗と、黒髪の少年が居た。

「おじゃましま〜す……」

「来たか。いきなりですまなかったな」

「いや、全然いいよ……で、そっちの人って」


「あぁ、僕だよ。織田原雅之。前に君と会った時の姿になると、君が疲れるだろうから」

「はぁ……」

前が雷斗と戦った日のことだって言うのはわかる。あの時より少し俺たちの年代に近い見た目をしている。


「えっとね、なんとなく察しは着くと思うけど、雅之も妖怪なの。で、わっちが普段人間に化けてるみたいに、雅之も今は化けてるの。わっちも雅之も、化けてる状態じゃないと、今の兎夜には見えないから」


そういえば、リストバンドを銃に変えると妖怪が見えるようになるって前に旭飛が言ってたっけ。たぶん、二人とも元の姿に戻ると、俺が逆に力を使わないといけなくなるってことか。


「ちなみにね、リストバンドの力使ってる時の兎夜、目がちょっとだけピンクっぽく光ってるんだよ」

「えっ、なにそれ知らなかった……ちょっとカッコよ」

「自分で言うなよ」

「そう言われるとちょっと恥ずかしくなるからやめて……」

ひなみと雅之が笑っていた。


雷斗がはぁ……とため息をついてから

「んで、本題に入るんだが……」

と話し始めた。


「神無月に入って最初の日曜に、生贄を捧げる儀式がある。で、その時、その儀式に出席しないといけないのが、俗に御三家と呼ばれている塩月、若草、神崎の人間。分家は対象外になった。今どき生贄なんて国に知れたら大事(おおごと)だから、参加者の人数を減らしたんだろ。そして今回の生贄は塩月華代。俺の幼なじみであり、お前の友人。ここまで大丈夫か?」


「うん。大丈夫」

初めて知ったこともちょびっとあったけど、基本的には今までで知ってきた情報を軽くまとめてくれてるような感じだった。


「じゃあ続ける。ここからは具体的に御三家しか知らない情報と、神無月に入ってからの行動について話していく。まずは、儀式の時間帯と場所。場所は家の近くにある山を登った所にある祠の周辺。時間は夕方以降。暗くなってからしかやらない。五年前、俺がこの家を出たのは十時過ぎ頃。祠まで多分三十分くらいはかかる。まぁ、それくらいの距離だと思って欲しい。ただ、お前は山道とか慣れてねぇだろうから、少し余裕を持って動いていた方がいいかもしれねぇ。気をつけろよ」


「いかにも自分は慣れてるような言い方をしてるけど、別にそうってわけじゃないから大丈夫だよ。まぁ、余裕を持っていくことは大事だけどね」


雅之が笑いながら補足していた。雷斗は余計なこと言わなくていいんだよと言った感じで雅之を見ていた。


「……で、ここからが本題だ。まぁ、神無月に入ってからの動きだな。俺は儀式に出ないといけないから、多少遅れて来ることになる。というか、会場に一度は行くんだが、そのまま残っておくことが難しい。だが、会場がスッカラカンになる時間帯に、その場に誰も居ないんじゃあ多分邪神様がすぐ華代を殺してしまう。だから、お前には儀式が終わるまでなるべく近くで待機していて欲しい。」


「なるほどね。たしかに俺はその儀式に直接的に関係してないからその時まで待機することができる。そういえば気になったんだけど、その儀式、見張りみたいなのはいないの?」


「俺が覚えてる範囲では大丈夫だ。少なくとも、人間は見張りについていない」

「……邪神様の手下がいる可能性はあるってことかな」

「まぁそうだな。大概潰してきたとは思うが、まだいる可能性が高い。その辺は気をつけた方がいい」


「わかった。周りを警戒しつつ待機しておくよ」

「あと、人が居なくなったら……」

「まず華代かな。俺たちは戦えるからいいけど、華代は危ないから、まず安全な場所にいてもらわないとね」

「あぁ、その通りだよ。華代第一優先な。そうそう、祠の鍵は当日柚希さんが貰うことになってるから、それを上手く利用するんだが……またこれも伝えとかなだなぁ……」


「柚希先輩、協力してくれるって言ってたから大丈夫だと思うよ。てか俺からまた伝えとくし」

「あぁそれは助かる。よろしく頼んだ」


それからも軽く話し合いをしていた。妖怪の二人もずっと聞いていてくれた。


だいぶ話し込んだと思う、ちょっと気を張ってて疲れてきたなって思った頃に、誰かが階段を登る音がした。


「やっほ〜、よかった! お友達まだいた!」

「ね、姉さん……!」


お姉さん……? あ、この間お饅頭がどうのっていうときのお姉さんかな。けどあんまり似てないと言うか……

「うわーちゃんと男の子の友達だ〜、いつぶりだろ、大輝くんが前に遊びに来た以来じゃない? 向こうの家の方が広いのにこんな狭いところでごめんね〜」


「あ……いえ。全然です」

俺がちょっと不思議そうにしてるのが分かったのか

「兎夜兎夜、この人は雷斗の親戚のお姉さんで、美奈子さんって言うの」

ひなみがこっそり教えてくれた。これだけ家がでかけりゃ親戚とかも集まるのか。


「そうそう! ケーキ持ってきたから四人で食べて! それじゃあね! 雷斗の事よろしく〜」

「……はぁ、行ったか。ほんとに俺もうガキじゃないから大丈夫だって言ってるのに」


なんかちょっと微笑ましい光景見たような気がするなと思いながらケーキをいただいた。


それからまた日がだいぶ傾くまで話していた。我ながらよく話が続いたなとも思う。

というか、後になって考えたら、なかなか不思議な光景だった気がしなくもない。

家に帰って夕飯の支度をしながらそんなことを考えていた。

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