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神無月の守護者  作者: なまこ
長月
34/53

長月(2)

朝以降は、夏休み前のように三人で過ごした。

最初、ひなみは一限の前に俺と華代が普通に話してるのを見て不思議そうな顔をしていたけど、すぐにまたいつも通りのひなみにもどった。多分何となく察してくれたんだと思う。


なにごともなく時がすぎて放課後を迎えた。教室内はすぐにガラガラになって、賑やかだった教室も一気に静かになった。


「ひっさしぶりの学校長かった〜!昼までだからまぁまだいいけどさぁ〜。ねぇ早く帰ろ〜? 学校あつーい」

ひなみがそう言ってるのを聞いて、本当にいつも通りだなって感じがしてフっと笑ってしまった。

隣を見ると華代も笑っていたから、きっと同じようなこと考えてたんだと思う。


「そうだね。帰ろうか」

そう言ってガラガラになった教室をあとにした。


「そうそう、二人はさ、夏休みなんしよったん?」

「わっちはもう延々とグダーってしてたよ。部屋のエアコン、ちょっと効きが悪いから十九度とかにしてたらさすがに怒られちゃったけど」

「十九度!? それは電気代が怖いわ……そりゃ怒られるよ」

「んーやっぱそうか〜。んでさ、兎夜はなにしてたの?」

「うーん……動画とか見てた……かな?」

他愛のない会話をしながら歩いていると


「あっ、兎夜先輩達がいる! こんにちわー! お久しぶりです!」

後ろから旭飛が俺たちのことを呼んだ。旭飛と柚希先輩がこちらに向かってくる。

それを見るなり、ひなみがそっと俺たちの後ろに隠れた。


「やぁ、お久しぶり。元気にしてた?」

「はい、元気です」

「柚希先輩たちは部活ないんですか?」

華代が聞くと


「そうそう。今日まではおやすみしてていいよ〜って先生が。まぁ三年はもうすぐ卒部だから、言っても片付けするだけなんだけど」

と返してくれた。


「あー! 先輩の口から卒部って言う言葉聞きたくないんですよぉ。寂しくなるじゃないですか!」

そっか、もうそんな時期になってしまうのか。自分たちは二年生だから何も考えずに生活してたけど、三年生はもう高校生活が終わりに向かっていく時期だったんだ。


「まぁね、時間は流れ行くものだから……。卒部してもたまに遊びに来るね」

「約束ですよ? あっ、兎夜先輩たちも絶対来てくださいね?」

華代と顔を見合わせて笑って、うんうんと頷いた。


「あっ、そうそう。話は変わるんだけどさ、ひなみちゃん、ちょっと出ておいで」

柚希先輩がそう言うと、ひなみはちょっとビクっとしておそるおそる俺たちの後ろから出てきた。


「はい、なんですか……?」

旭飛と柚希先輩は顔を見合わせてうなづいた。


「ひなみちゃん、夏休み前のこと本当にごめんね。怪我させておいてごめんで済ませるのも申し訳ないけど……」

「ふぇっ!? いやいやそんな大丈夫です! 大した怪我じゃなかっですし!」

「ひなみ先輩……私も本当にごめんなさい。そもそも殴ったのは私ですし」

「旭飛ちゃんも! 大丈夫! 大丈夫だよ! 全然気にしないで!」

「七月のこともあって以降、気を張りすぎていたんだよね……申し訳ない」

「もう大丈夫です! 大丈夫ですよ! わっち悲しくも怒ってもないですから!」


「……すみません、何があったんです?」

華代が困惑した様子で聞いた。この場において、あの時いなかったのは華代だけだった。


「簡単に話すと、柚希先輩と旭飛ちゃんがわっちのことを邪神様側の妖怪だと思ってやっつけようとしたけど、勘違いだったって話だよ」


華代の頭の上にハテナが大量に浮かんでるのが目に見えてわかる。

「えっと……? え? まず、ひなみちゃん妖怪……? ん?」


「そう! わっち妖怪! あっ、言ってなかったね。ここにいるみんな知ってるんだよ」

華代が固まってた。

「そうなん……? 全く気が付かんかったわ……」


「そう……それでなんだけど、この場にいる全員、立場が明確になった上に、ある程度例の神無月のことについては知識がある人の集まりってことよね。だから一切伏せずに話すんだけど、あと一ヶ月で神無月が来る。この馬鹿みたいな昔話でこれ以上犠牲者は出したくない。だから、私もなにか出来ることをやりたいと考えてる」


「私も、皆さんとは違って全然一般人ですけど……こんな身近で大問題が発生してるのを放ってはおけないです。だから、私にも出来ることがあれば全力でお手伝いします!」


少し考えてから

「……ありがとうございます。できるだけ危険が及ばないように考えていきたいって考えてます」


話が進むにつれて華代が複雑そうな表情を浮かべてるのがわかった。

声をかけようとしたんだけど


「華代ちゃん、きっと自分のせいだって思ってるんでしょ? 先に言っておくよ。私たちは自分の意思でやってるし、あえて言うなら、華代ちゃんを助けるためじゃなくて、このくだらない昔話をどうにかしたいだけ。それに偶然華代ちゃんが巻き込まれちゃった。それだけだから大丈夫だよ」

俺が言おうとしてたことよりも、はるかにいいことを柚希先輩が言ってくれた。


「さて、どれだけ作戦を練ったとしても、結局主力は兎夜くんになるわけだ。じゃあよろしく頼むよ兎夜くん。またこの件については話し合おう」

そう言って柚希先輩と旭飛は帰っていった。


二人が去ってからも、張り詰めた空気感はちょびっとだけ残っていた。


ひなみが、ちょっと笑って

「そうだ! どうせ二人にわっちのことがバレてるなら、わっちの妖術見せたげるよ! ちょっとまってね……」


ひなみが姿を消した。妖怪の姿に戻ったんだと思う。それから数秒後に、立っている道路から先が一気に凍りついた。

「えっ、やばぁ……」

華代がとてもびっくりしていた。


ひなみが再び姿を現して

「んふーすごいでしよ? これでスケートしながら帰ろっ! 普通の靴でもスーッスーッて滑れるから大丈夫!」


そうして、三人で季節外れなスケートをしながら帰った。


この後の二、三日、学校で、道路の一部が凍りついていたことが話題になった。

この話題が聞こえる度に、俺たちはくすくすと笑っていた。

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