文月(6)
蝉が鳴くある日、雷斗は大輝の元に向かった。
「よぉ」
「おぉ来た! 出来たよ修理! 時間かけちゃってごめんな」
「いや、とんでもない……。俺こそ無茶ぶりさせたのに」
「いいよいいよ! 結構楽しかったからさ」
そう言って渡された短刀は、見違えるほど美しくなっていた。
「……すげぇ。大輝やっぱ天才だな」
「だろ? ……なんちゃってね」
大輝は笑いながら言っていた。雷斗はただ、輝く短刀をじっとみていた。
七月も半ばを過ぎて、蝉が鳴き出した朝の道。ここを通るのも七月は今日が最後。待ちに待った夏休みがやってくる! めっちゃ嬉しい!! ……けど、そう喜んでられないかもしれない。
夏休みの間に、また邪神様関連の人に襲われるとちょっと困る。一人で対応しきれる自信がまだ……。
教室に着くと、華代とひなみがいた。華代はともかく、ひなみがいることがちょっとめずらしい。いつも休むか遅刻スレスレかなのに……。
「あー! 兎夜だ! おはよー!!」
「おはよ、今日は早めだね」
「今日はちゃんと起きれた! 嬉しい!」
ひなみはぴょんぴょん跳ねながら言っていた。
「朝からちゃんと起きれたーって、ひなみちゃんばり喜んどるんよ。来てくれたら賑やかで楽しいけんいいわぁ」
ふたりとも笑っていた。
普段通り楽しく話してると、チャイムが鳴って先生が入ってくる。ほんと、話してると時間があっという間に経つんだよなぁ。気がついたら三十分とかザラにある。そういう時だけ時間が伸びればいいのにとか考えることもある。
休み時間に話はするけど、学校にいる間は結局勉強ばっかりでつまらない。他のこと考えて時間を潰そうとすると、やっぱりまずは邪神様の事が頭に浮かんで来る。
「俺……守護者なんだ。はぁ……」
声が漏れる。どうして俺が守護者になったのか分からない。どうしてこのリストバンドが銃になるかもよく分からない。ただ、守護者って言うからには何かを守る役目があるんだと思う。……守るって何? 何を? 誰を……? 謎は深まるばかりだった。
「歌田〜? 歌田聞いてるのか〜?」
「……あっ、はい。」
「そうか〜、しっかりしろよ〜」
あっぶな。苦手な数学で当てられようもんならそれはもう公開処刑だわ。ほんとに運が良かった。
もう一回考えてみよう。……負を断ち切る、負って言うのは、その生贄を捧げるっていう文化のことだとする。そしたら俺はその生贄を助けるって事なのかな? それが守護者? なんかどっちかって言うと勇者だよなぁ。
ここで、チャイムが鳴った。
「とーや! はーなよちゃーん! 知ってる?? 八月にさ、この間言ってたかき氷屋さんとは違うアイス屋さんが出来るんだって! しかもそのアイス屋さんね、都会の美味しいお店の支店らしくて……」
ひなみはアイスの魅力を多分ここから五分は語ってた。冷たいスイーツが好きなんだなぁって思って笑ったら、華代も笑ってたから多分同じ気持ちになったんだと思う。
「アイスね、いいやん。夏休みみんなで食べに行かん?」
「マっ!? いくいくーー!! 午前中はかき氷行ってさ、午後になったらアイス行こっ!! わーめっちゃ楽しみすぎる!」
一日に二軒アイス屋さんかぁ…
「一日も何個も食べたらお腹壊すでしょ? 冷えちゃうよ?」
「ん〜そうかぁ。一日五個はいけるからなぁ。わっちが好きすぎるだけかっ!」
ひなみ、それは流石に強すぎる。でも、ちょっと笑えた。
その後の五、六時間目は寝て過ごした。って言っても集会だし、なんなら横にいるおじいちゃん先生だって寝てる。文句言われることなんてない。
気がついたら閉会式が終わろうとしていた。ほんとよく寝た。
その後の放課後、ふと気になって華代に聞いてみる。
「そういえばさ、美術部って今どうなってるの? 柚希先輩とかからなんか聞いてる?」
「そうやね……部室がちょっと壊れたから、今工事中で部活あってないっていいよったかな。柚希先輩も旭飛ちゃんもちょっと怪我したって言いよったし。あれ結局なんやったんかね? 爆発?」
あぁそっか。このことって曖昧にされてたからみんな詳細は知らないんだよね。墓穴を掘ったかもしれない。
「兎夜〜、華代ちゃーん、帰ろ〜」
ひなみナイスタイミング!! 話がそれて、このことはうやむやに終わらせることができた。
校門を出てすぐ、華代は
「今日ちょっと用事あるけん、逆方向行くわ。夏休みのこととかはまた連絡するけん。じゃあね」
そう言って、反対方向に歩いていった。
「あれでしょ? 美術部事件って邪神様関連の……」
「そう。自分から聞いてしまったのほんとやってしまったなぁ……って」
「んー、まぁ、何とかなったし? 大丈夫!」
そういいながら歩いていると、道の先に、柚希先輩と旭飛がいた。
「あっ、柚希先輩と旭飛! あれから大丈夫……」
二人の表情に笑顔がない。なんだろう、少し恐さを覚える。
「ありがとう兎夜くん。大丈夫」
「私たちが今日用事があるのは、ひなみ先輩の方なんです」
ひなみが驚いた表情をした。正直俺も驚いた。柚希先輩と旭飛が、ひなみに用があるって言うのは珍しい。
「なんですか?」
ひなみは笑顔を崩してはいない。でも、若干焦りのようなものが見えた。
心臓の音が聞こえそうな緊張感が走る中、柚希先輩が口を開いた。
「……ひなみちゃん。貴方、人間じゃないんでしょ?」




