表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神無月の守護者  作者: なまこ
文月
21/53

文月(5)

あの美術部の事件から一週間が過ぎた。


最初のうちはこの事件の話題が周りを飛び交ってたけど、それもすっかり薄れてしまった。

あの事件の中心にいた俺ですら、あれは夢だったんじゃないかと思うこともある。

けど、それが現実だということを、カサブタが証明していた。


「ねぇさぁ歌田? あんたさぁ、美術部事件あったすぐの頃にさ、結構怪我してたぢゃん? あんたもあの事件の中にいたの?」

班活動中、また赤沼さんと二人きりになっていた。

「いや〜? ちょうどその時期くらいに自転車乗っててコケちゃったんだよね」

普通の生徒に俺が事件に巻き込まれていた、いや、中心にいた事は知られない方がいい。なんとなくそう思う。


「ふーん。にしては不自然な傷とかあったね。あんた、嘘ついてない?」

「ついてないよ、大丈夫。てか、俺帰宅部だからさ、土曜に学校いるわけないじゃない?」

「あーまぁ、それもそうか。いや、悪いね」

赤沼さんは、邪神様関連のことに関して少し鋭い所がある。霊感……みたいなやつだっけ。すごいけど、勘づかれたくはないなぁ。


その授業も終わり、次の時間も一瞬で終わっていった。他のこと考えてるとすぐ終わるもんだな。

……いや、授業に集中しないといけないのはわかってるんですけどね。

そして昼休みになった。ひなみはまた休んでるから、華代と二人で昼を過ごすことになった。


「ひなみちゃん、ほんと休みがちやね。大丈夫かいな。」

「うーん……また前みたいに寝坊しすぎた! ……とかだと、良くはないけど安心するよね」

少し会話に時間が空き、華代が口を開いた。


「とやまるさ、お祭りとか好き?」

「ん? うん。一応好きかな。人が多すぎるのは嫌いだけど、お祭り自体は好き」

「あのさ、八月の初めにこの町で花火大会あるっちゃん。よかったら一緒行かん? ド田舎の小さい花火大会やし、人も少ないんよ」

この町に来てから、初めて休日に友達と遊ぶ予定が出来た。それが嬉しくて俺は

「うん、行こう!」

すぐに返事をした。

「よかった。この前ひなみちゃんも誘ったんやけど、その日は用事があるってやけん来れんのって」

「そうなんだ……。じゃあ、来年は三人で行けたらいいね!」

「……そうやね」

華代は微笑んでいた。


その日の夜、またいわしっちに電話を繋いでみた。花火大会って聞いて、いわしっちも誰かと行くのかなって気になった。

でも、いわしっちは電話に出なかった。


「あれ? 寝てるのかな」

まだ九時前だけどなと思いながら、俺は電話を切る。

花火大会か……中学生の頃に行ったっきりだなぁ。

昼間までずっと美術部事件のことばかり考えていたのに、今はずっと花火大会の事を考えてる。自分が思ってる以上に、自分はこの花火大会を楽しみにしてるんだと思う。

そんなことを考えながら、一人窓の外を眺めて鼻歌を歌っていた。







午前三時を過ぎた頃。空はどんよりと曇っていて、今にも泣き出しそうだった。そんな中、雅之は一人、屋根の上で町を見下ろしていた。


「……この町も少し変わったねぇ。別に、僕はずっとこの町にいたわけでもないけど」

古い本を手に持ち、そう呟く。すると、ふわっと風がふき、隣にサナが現れた。


「久しぶりだね。こんな時間に何してるの」

「うーん、それはまぁお互い様じゃろ?」

「まぁ……そうだね」

サナは少し傾いた髪飾りを整えた。


「君は……まだ()()の所にいるんだろ?」

「まぁそうだね、私はずっといるよ」

「そうか。アレはまだ何かしようとしてるわけかい?」

「何って、いつも通りだよ。生贄をもらって、五年間大人しくしておくだけ。ただそれだけだよ」

「ただそれだけ……ねぇ」

「言ってしまえば、貴方だって私たちと()()()()みたいな所あるんじゃない?」

呵呵(かか)……それはもう時効じゃろ。僕は過ちを正すだけだよ」

そういうと、雅之は屋根から飛び降りた。しかし、そこに彼の姿はない。


「過ちを正す……か。正しさってなんなんだろうね」

サナはそう呟き、何処かへ消えてしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ