文月(4)
山葉高校で美術部交流会があった日、華代は家にいた。雲行きの怪しい中、庭のししおどしの音が鳴る。照明をつける彼女の近くには少年が座っていた。
「こうやって家で会うのは久しぶりやねぇ。高校入ってからは初めてなんやない?」
「……だな。お互い色々あって、会えてもすぐ帰らないと行けないこととか多かったもんな」
華代は部屋に飾ってある写真を見る。二人が幼い頃の写真である。
「なぁ華代、最近学校どんな感じだ? 新年に入ってから新しい友達ができたとは聞いてたけど」
「あぁ、兎夜くんとひなみちゃん? ほんといい子たちよ。兎夜くんは優しくてさ、ひなみちゃんは明るくてめっちゃ面白いんよ。やけん最近は学校バリ楽しっちゃんねぇ」
「そうか、楽しいならよかったよ」
「そっちはどんな感じなん?」
「あー……俺は別に。いつも通りかな?」
「えー、なんよいつも通りって」
華代が笑っている。
しかし、華代の目にカレンダーが映り込み、笑顔が少し歪んだ。
「……辛いよな」
「いや、いいんよ。だってみんな順番やもん。今回は私ってだけよ。雷斗ん所だってさ……」
雷斗は苦い顔をした。
「……いや、今回は絶対守ってやる。俺の命に変えてでも、絶対」
「……出来ん。いいとよ、もう。自分のこと大切にしぃ」
静かな空間の中、降り出した雨の音だけが響いていた。
暗い空間の中、サナは奥へ進む。
「あっ、サンサンじゃーん! おっかえりー!」
暗闇の奥にいるなにかは、笑っているのだろうが、その笑顔は少々気味が悪い。
「……とりあえず、絵谷冬樹君をちゃんと送り届けて来たよ」
「あっ、彼戻っちゃったか〜。そうだよね〜、だって彼に与えた力が一番弱いやつだもんなぁ。なっかなか力の適正なくてね? 根っこが綺麗なのかねぇ」
「さぁね。人間に私たちみたいな力を使わせること自体難しいんだからさ」
「まぁ、それもそっか!」
「そういえばもう七月だね」
「あ〜、七月ねぇ。まぁまだ彼岸花は咲いてないね」
「邪神様……ほんとに彼岸花好きだね」
「いやまぁ、そりゃぁ……」
そこで言葉が止まる。
「……あーそうそう。ふと思い出したんだけど、この間のやつ、多分まだ効果切れてないわ」
「んぇっ、この間のって……」
「うーん、まぁそういうことなんだけどさ。彼、多分ここには戻ってこないかもしれないけど、まだ使える」
サナの表情が少し曇る。それを邪神は見逃さなかった。
「んー? サンサン? どうした?」
「いいや、なんでもないよ」
「……俺がしたいのは、この町の人間への復讐。……わかるだろ?」
「……わかるよ。私も、異論はないよ」
一瞬凍りついた空気が元に戻る。サナはその場を去り、雨が降る暗い夜に消えていった。




