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神無月の守護者  作者: なまこ
卯月
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卯月(2)

……さっきはなかなか普通に話せてたんじゃないか?

転校初日にしてもう友達出来るとか…俺ツイてるんじゃない?


正直ペン返して何事もなく帰るんだと思ってた。まさか向こうから話振ってくれるとは思ってなかったから本当に嬉しい!


ルンルン気分でまっすぐ家に向かって歩いていく。陽の光がいつも以上に輝いて見えた。


鼻歌を歌いながら帰っていると、反対側からやけに全身黒い服装の、長髪の男の人が歩いてきた。……なんかちょっと不気味だな。

春は不審者とかでやすいらしいし、気をつけないと……。


警戒しながらすれ違う。幸い、普通の人だったみたい。安心した。


家まであと五分位のところまで来た。帰ったらクッキーでも作ろうかなとか考えていたその時だった。


「なぁ少年よぉ、邪神様のお話って知ってる?」

ゾッとした。なんせ、周りには誰もいない。イヤフォンも付けてない。人間の声なんてするはずないのに……。

「あれ? 知らねぇんスか? そんなことあるとは。ほんとにこのフワフワ君なのかねぇ……」

いや、間違いなく聞こえる。男性の声。


「すみません……誰かいるんですか!?」

言ってることも訳わかんないし、めっちゃ怪しい。というかそれ以前に姿見えないってどういうこと!?


「そんなに怯えなくていいっスよ……。さっき会ったじゃないか」

目の前にさっきの全身真っ黒男がいきなり現れた。ちょっとまってこれ俺夢見てるのかな……


「夢じゃねぇっスよ……紛れもない現実。ところであんた、邪神様についてなんも知らねぇんスかね?」

邪神様……? 何この人こじらせた厨二病……なわけないよね。てか、心読まれてるよねこれ!?


「はぁ……まぁいいか」

そう彼は呟くと、手に持っている分厚い本をパラパラとめくって、呪文のようなもの唱えだした。

さすがにやばいと思った俺は一目散に走り出した。しかし、いきなり全身の力が抜けて派手に転んだ。


「えっ……なんで……クソっ動けない…!!」

最悪どころの話じゃない。死ぬかもしれない。

「そういえばあんた、今日は引っ越してきてからの初登校の日だったっけ? 運がなかったね。まぁ、選ばれたのが悪かったんっスけど」


もう訳わかんない。どうしたらいいかもわかんない。彼はまた分厚い本をめくってなにか言い出した。死ぬ覚悟を終えた次の瞬間、


「やめて」


明らかに黒い男の声じゃなかった。女性……かな?

視界がぐるぐる動いて、世界が逆さまになった所で動きが止まった。

俺の前には華代と同じ制服を着た女の子が立っていた。彼女は筆を動かしていた。こんな状況で……絵?


するとその絵からネズミの大群が飛び出してきた。

黒い男を襲う。

「めんどうなことになったなぁ…まぁいいや、今回は引いてやるよ」


次の瞬間、男の姿が消えた。その次にネズミたちも消えた。俺もやっと力が入った。

ぱっと起き上がると俺は白黒の虎の上に乗っていた。


「あっ、えっと……助けてくれてありがとうございます!!」

「あーいやいいよ。それより怪我とかない? 大丈夫?」

「はい、大丈夫です。」

「よかった。ところであなたうちの生徒? 見ない顔だね」

「えっと、最近引っ越して来ました!」

毛先だけが白い黒髪がやわらかい春風に吹かれて揺れている。

「そっか。私若草柚希(わかくさ ゆずき)。高三です」

「柚希先輩…すみません、ほんとありがとうございました」

「うーん、どういたしまして?そういえば歩けそう?家帰れる?」

「あっはい! 大丈夫です! 家もう近くなんで」

「そっか、じゃあ気をつけてね」

そう言うと柚希先輩は、絵に描いた大きな鳥に乗ってどこかに行った。こっちもなかなか信じ難い…

なんだろう。なんか不思議な町に来てしまったかもしれない。





「なぁ、ほんとにあいつであってんですかねぇ」

「あいつだよ。まぁ見てなって黒いの〜、多分面白いことになるぜ?」

「全く、とんでもねぇ()()だな。

あと俺、黒川涼空(くろかわ りく)っすよ。黒いのじゃないっス」

「いや、名前も服装も真っ黒じゃん」

暗闇の中、笑い声が響いていた。

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