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神無月の守護者  作者: なまこ
文月
19/53

文月(3)

「ねぇ、旭飛。大……丈夫?」

後から追いかけてきた小春が尋ねる。

「……うん、大丈夫。心配かけてごめん」

目をグジグジと(ぬぐ)いながら答える。


「あれは間違いなく……邪神様の手下とか、そういうのだったと思う。そして、やっぱり兎夜先輩が資料に書いてある()()()()()()()()で間違いないよ」

「興味本位で調べてた事が、ここまで本当になるなんて思ってなかった。ちょっと正直ビックリしてる」


旭飛は目を瞑る。また少しして、目を開く。覚悟を決めたような目だった。

「私たちにも何か出来ることがあるかもしれん。なにかしてみよう!」

小春は首を縦に振る。

「うん! 私、ちょっとまたできるだけ早く色々調べてくる!!」

二人は顔を見合わせて頷くと、それぞれの方向に走り出した。






どうしたらいいんだろ……。俺が何とかしなきゃ。

とりあえず魚の化け物にもう一回銃を撃ってみる。何とか当たりはするんだけど、パーツが落ちてまた戻ってを繰り返すだけ。どうなってるんだろこれ……。


「ふふっ、君らなんかじゃどうしようもないでしょ?」

絵谷がまた何かを出てきた。何あれネジ?

「兎夜君それ爆弾!!」

「ば、爆弾!?」

気がついた時にはもう遅くて、俺はただ吹き飛ばされる。壁にぶつかった背中が痛いったらありゃしない。


「いった……」

立ち上がろうとする所に魚の化け物が飛んでくる。とりあえず銃を撃とうとしたけど……カチャッカチャッと音がするだけで、弾が出ない。

「うっそ弾切れ!?」

やばいやばいどうしよう……。どうにもできずに腕で防ごうとする俺の目の前に白い虎が通って、魚の化け物を真っ二つに食いちぎった。柚希先輩の虎、めっちゃ強ぇ……。


「大丈夫!?」

「あっ、はい! ほんとありがとうございます」

それでも魚の化け物はまた再生した。何あれほんとに無敵……?


……前に黒川と戦った時ってどんなだったっけ。前の出来事からヒントを得ようと思って、過去のことを思い出す。

「えっと、確か……」

黒川を倒した……いや、あの倒したのは俺じゃないけど、あの男の子が倒した時、黒川の心臓に当たる所から刀が出てきた。ということは……


「兎夜先輩! 核です! それら不思議な生物には、核になる部分があるって資料に書いてありました!!」

「小春ちゃん!?」

「私も居ます!!」

冬樹に向かってバットが振り下ろされる。冬樹は鉄の盾みたいなものを作り出して防いでいる。

「えっ、旭飛まで!?」

「旭飛ちゃん! 逃げてって言ったよね!?」

「柚希先輩を置いて、逃げれるわけないじゃないですか……! なにか少しでも、少しだけでも力になりたいんですよ!!」

もう一回バットを振り下ろすけど、絵谷は軽々と避けて、小さめの爆弾で旭飛は吹き飛ぶ。

「旭飛ちゃん!!」


……旭飛に小春ちゃんまで。俺がやらなきゃ、みんなを守らないと!!

「はぁ、びっくりした。君、(した)われてるんだね。何かと思ったらさっきの後輩さんじゃん。……この子も厄介だね」

「やめて、旭飛ちゃんには手を出さないで!」

鉄の部品を繋ぎ合わせて出来た歪な鋭い棒を、旭飛に向けてる。

「くっそ……当たれ!!!」

必死で銃を撃つ。その弾丸は絵谷の右腕に命中した。

「いっ!?……ほんと、痛いなぁ」

さっきは弾が出なかったけど、今度は出た。一定時間開けないと次の弾が出ない仕組みなのかな……? にしても、弾丸は当たったはずなのに血が出ているような感じはない。当たった所から黒い煙みたいなのが出てる。


右腕に弾が当たったからだろうけど、次の物を作る速度が落ちたと思う。それでもまた魚の化け物が迫ってくる。やばい、さっき弾使ったから一時出ないかも。そう思っていた時に、魚の化け物を旭飛がバットで砕く。

「兎夜先輩! 私も役に立でしょう?」

「立ってるよ、ほんとありがとう!」

バラけた魚の化け物の部品の一部に、赤く輝く所を見つけた。多分あれが核だ。弾が出るか分からないけど、一か八かで!

「そこだ!!」

銃を撃つ。辛うじて自動リロードが間に合ったみたい。やっぱり赤く輝くところが核だったみたいで、再生しかけていた魚の化け物は、変な叫び声を上げて朽ちていった。

「なんかほんとに変な魚だったなぁ……」


絵谷がピクっと動く。

「……変なんかじゃない! どいつもこいつもボクの絵を貶しやがって!!」

絵谷は大量の歯車を具現化してこちらに向かって投げてくる。俺は近くにあった机を倒して防ぐ。柚希先輩達は、壁を作って防いでいた。


ふらふらと柚希先輩が立ち上がる。旭飛が心配そうに見ている。

「君の絵、とっても綺麗だったよ。色が鮮やかなのにトゲトゲしていない優しい絵だ。でもそれは昔の話だよ。今の君の絵は芸術性には優れている。けど、前みたいなあたたかさはない。黒い感情が見える」

「うるさいなぁ!(たた)えられ慕われるお前なんかにボクの気持ちが分かってたまるか!!」


大きなバクテリオファージのような機械を具現化して、こちら側に向かって迫ってくる。

……絵谷がどうしてこうなってしまったのか俺にはわかった気がした。バクテリオファージの核だろうと思われる場所を撃ち抜いて、

「絵谷冬樹。君のその能力を生まれ持ってのものでは無いとと考えて言うね。君は……今まで普通の人間だった。でも、絵を貶された事をきっかけに邪神様の手下になった。違う?」


絵谷が目をそらす。

「……はぁ、絵も描かない君になにがわか」

「全ては分からない。でも、自分が一生懸命頑張ってることを貶される事が辛いことはわかる。俺もそういうことあるから。俺が経験した嫌だなって気持ちと、君が経験した嫌だなって気持ちが同じだとは思わない。でもさ、なにか別の力に(すが)るのは、きっと違うと思う」

続いて、柚希先輩も語った。

「そう。兎夜君の言う通りだよ。君はとってもいい絵を描いていた。今の絵よりもあたたかくて、一目見ただけで作者が優しい人なんだろうなって分かるような、そんな絵。君の周りは、たまたま君の絵を気に入らなかったのかもしれない。でも、それでも、君の絵を好きだと言う人はいるんだよ。君のそのあたたかい絵が好きだって言う人が居たんだよ。少なくともここに一人、私がいた」


冬樹が体制を崩す。

「ボクはただ……認めて欲しかっただけで。こんなことがしたかったわけなんかじゃ……」

「……大丈夫、分かるから。君は悪いやつなんかじゃない。俺もさ、君が描くそのあたたかい絵を見てみたいって思うよ」

絵谷に歩み寄る。すると絵谷は微笑んで言った。

「……本当にありがとう。柚希さん、そして守護者くん。部内でずっと貶されてきたくらいで気が滅入って、おかしな方向に走り出したのが間違いだった。……さぁ、守護者くん。ボクを撃って」

「いや……でももう君は……」

絵谷は首を横に振る。

「邪神様の力が残っていたら、元の絵は多分描けない。それ以上に、この力はもう僕には要らないから」

もう悪くない人を撃つのにはすごく抵抗がある。それでも……。

「ごめん」

銃声が鳴る。絵谷が倒れていく。心臓なんて撃たれたら痛いはずなのに、彼は笑っていた。そして、絵谷から黒い靄が出たと思ったら、次の瞬間には消えていた。周りに突き刺さった歯車や、鉄の破片も消えていく。どっと疲れが押し寄せて、俺まで倒れ込む。全く気がついてなかったけど、俺、初めて本物の銃をまともに使ったんだ。意識ははっきりしている。ただ疲れて動けない。緊張の糸が解けるって言うのかなこういうの。


近くに柚希先輩がしゃがみこむ。

「ごめんね兎夜君。ありがとう。本当に助かった。」

「いえいえ、俺はそんな大したことしてないですよ。むしろ柚希先輩に沢山助けて貰って……こちらこそありがとうこざいます」

柚希先輩は綺麗に微笑んでいた。


「人間ってこれだからダメなんだ」

俺らじゃない声がする。何とか顔を動かして、声のした方を見ると、小学生くらいの女の子が座っていた。


「君は誰……? そもそも、人間ではなさそうだね」

柚希先輩が立ち上がって尋ねる。でも、もう柚希先輩も疲れてるはず……。柚希先輩が戦おうとしてるのを察したのか

「いいよ、そんなに身構えなくて。君たちもうボロボロだし。まぁ、頑張ってよ」

そう言って、その女の子は飛んでいってしまった。


その後、部員とか先生とかが来て、保健室に運び込まれて、起きるなり色々と話を聞かれた。本当のことを話しているのに、先生達は一切信じてくれない。まぁ……当たり前か。その日は話を聞かれて、それが終わり次第すぐ帰らされた。美術部交流も中断したらしい。そして、この一件は謎に包まれたことにされたまま、時間は流れていった。

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