表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神無月の守護者  作者: なまこ
水無月
16/53

水無月(5)

雷斗はただ一人、校内の廊下を歩いていた。三年生の教室がある二階、そこを目指している。彼の目当てである絵谷冬樹は、定時退校日にも関わらず、時間ギリギリまで教室にいるのだと言う噂があった。


「あんまり人に見られるのは好ましくねぇな……。早いとこ片付けたい」

彼は独り言を言いながら、階段を下った。


二階教室三年二組。雷斗がドアを開けるとそこには、窓側の端、一番前の席に座った少年が居た。グレーがかった黒い髪と、時期外れな白いマフラーが、窓から入る風に少しなびいている。


「……絵谷冬樹か」

「……そうだよ。ボクに何か用?」

窓側を向いたまま、彼は答えた。

続けて雷斗は言う。


「お前の噂を聞いてきた。なんでも最近調子がいいらしいな。でも最近の絵はなんか変だ……と」

「あぁ、そうだね。でも、最近本当に楽しく描けてる。とってもね」


雷斗は絵谷に近づき、机の上にあった紙をみる。

どうやら絵を描いていたらしい。なにかの機械だろうか。


「……あぁ、そりゃよかったな」

雷斗が絵に触れようとしたその時

「絵に触れるな……!」

途端絵の中の棘のような部分が紙から飛び出し、雷斗の手をかすった。


「てめぇやっぱり……!」

「最初から分かってたよ、君は神崎雷斗だね。二年の中で異質な空気を放つやつだって聞いた事ある。どうせ邪神様の事でしょ? 何が目的?」

「アイツについて何か知ってることがあったら教えろ」

「さぁ。邪神様はボクらに何かを教えてくれる訳じゃないしなぁ……なんにも。て言うか、そもそも知ってても教えないよ」

「あぁ、そうかよ。じゃあ早いとこそのくっそ趣味悪ぃ絵をどうにかしやがれ。元々綺麗な絵ぇ描いてたんだろうが」

「……ボクの絵を、貶すな!!」

先程の紙を裏返しにして、何かを具現化する。バクテリオファージのような機械だろうか。


雷斗は自作の札を投げつける。すると具現化された機械の動きが止まる。

冬樹は少し微笑んでいる。

「へぇ、凄いね。ボクの作品止められるんだ」

「ったりめぇだ。お前みたいな半人外は俺の相手じゃねぇよ」

「ふーん。じゃあ一つ、いいこと教えてあげる。七月に入ってすぐ、この高校の美術部は隣の山葉高校と交流会するんだよ。会場はあっちの方。……言いたいこと分かるかな」

雷斗が青ざめる。

「まさか……お前……!?」

「わかった? それじゃあね」

「おい、まちやがれ!!」

絵谷は白く長いマフラーをなびかせながら、窓から飛び降りた。雷斗も追いかけようとして窓から飛び降りようとしたが


「やめとけよ。あくまで生身なんだから」

体が引っ張られて飛び出せなかった。雷斗の体に糸のような物が絡まっている。これは雅之の仕業である。

「おい何すんだよ」

「彼本体は君の札じゃどうにもならない。月明刀がない今、追いかけたってどうしようも無いことくらいわかるじゃろ?」

雷斗は黙り込むと舌打ちをしてその場を去った。


「あいつ、山葉で暴れる気だ……」

帰路、突然雨が降り出した。まだ梅雨は綺麗に明けきれぬまま、六月は終わっていく。

神無月まであと三ヶ月。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ