水無月(3)
次の日、俺は少し早めに学校に来て考え事をしていた。
この邪神様関連の話、これは、一人で抱え込んで生活していくにはちょっと重たい。引っ越して来て、普通の生活を送っていくんだと思ってたけど……現状は明らかに普通じゃない。
柚希先輩や旭飛たちも何か知ってそうだし、力にもなってくれると思う。でも俺だけでこの話をしに行くとか、なんかなぁ……。
「とーやっ! おっはよ!」
とびきりの笑顔で話しかけてきてくれたのは、ひなみだった。
「おはよ……ってか、だいぶ休んでたけど体調とか崩してたんじゃない? 大丈夫?」
「うーん平気だよ。なんかね、起きたら昼だった事がだいぶ続いてね、五時間目とかから行くのはめんどくさいな〜って思って休んでた!」
「えっ、起きたら昼!? 何時に寝てるの?」
「そうだな〜、朝の5時?」
「あーだからだよ、もっと早く寝なさい」
「うへへ、ごめんなさーい」
そういえば、ひなみはこういう不可思議なことって話しても大丈夫なのかな。雰囲気的には大丈夫そうだけど……。
「そういえばさ、ひなみはなんかこう……変な話とか、不思議な話とか、怖い話とか……そういうのって平気?」
「うん! 全然平気。面白いよねそういうミステリー? みたいなやつ!」
「おっ、そうなんだ! じゃあちょっと不思議な話とかしてみてもいい?」
「なになに?」
あんまり話すべきでは無いんだろうなって分かってはいた。それでも、身近にこれについて相談出来る人が欲しかった。
「この町にはさ、なんか昔の言い伝えみたいなのがあって、邪神様のお話って言うんだけど……」
「あっ、邪神様! 知ってるよ! あれでしょ? 五年に一回生贄云々でしょ? 知る人ぞ知るうちの町の怖い話だよね〜、本当なのか分からないけど」
「ひなみ知ってたんだ! じゃあ、この言い伝えみたいなのに、守護者が出てくるのは知ってる?」
「あー、なんかいるらしいねそういうの」
「結構知ってるんだ! ……あの、中二病と思われるかもしれないけど……俺、その守護者かもしれない」
「……んんー?? 守護者なの?」
「……かも……しれない。」
「そうなの?! えっじゃあさぁ、なんか武器みたいなの出たりした?」
「……一応。リストバンドが……銃に。」
「まっ!? それすごいね! なんかカッコイイ」
この時、ひなみの反応は少し遅れていた気がする。流石にあんまり信じれないかな。
「いやでもまぁ嘘っぽいし、信じれないかもね」
「いや、わっちはそれ信じるよ! てか、そういうのって信じた方が面白いじゃん!」
……信じてくれないかなって思ったけど信じてくれるんだ。とりあえずこの話ができる人が身近に居てくれるようになった。少し心強い。
「ねぇーなになに、あんたらさっきからすごく楽しそうに話してんぢゃん? 俺も交ぜてっ」
赤沼さん…!? いつからいたんだろ。
「あー、ちょっと今はダメっ。兎夜はちょっと大事な話してくれてたから」
ありがたい。けど、ひなみにしては珍しい反応かもしれない。
「あ? 何あんた。てか、あんたすっごいにおうね。あんた本当に人間?」
「失礼な! わっち臭くないもんね!!」
「ちげーよ、あんたお化けっぽいって言ってんのよ。自分で分かってんでしょ?」
「おっ、お化けじゃないし! ちゃんと生きてる!!」
「あっそ、まぁ、少なくてもあんたとは合わないわ俺。邪魔したね」
そういうと赤沼さんは去っていった。なんでたろ、二人が話してる時やけに寒気がした。空気感のせいかな。
「あれ〜、今日めっちゃ早いやん。おはよ〜」
華代が来た。話変えなきゃな。
「華代ちゃんおっはよー!」
「おはよ〜」
「あー! ひなみちゃん来とるやん! いままでどうしとったん? 大丈夫やった?」
「うん! さっき兎夜にも話したんだけどね……」
さっき俺に話してくれた事を同じように言ってた。自然な流れで空気が変わっていく。何とかなりそう。
途中ひなみはこっちをみてウインクしてた。
上手くやったでしょ? って感じで。
……あれ、そういえばひなみって華代が怖い話ダメなの知ってたんだっけ?
ある日の海響高校での話。ある噂が広まり、回ってきた。
「ねぇ聞いた? 三年の絵谷冬樹先輩、最近絵の調子が絶好超みたいで、賞状沢山貰ってるらしいよ!」
「らしいね! だけどさ、なんて言うんだろ……階段の所に飾られてる絶好調前の絵谷先輩の絵と、廊下に飾られてる絶好超なうの絵谷先輩の絵ってなんか全然違うよね」
「そうなんよね〜。最近絶好超って言われてるけど、最近の絵、全体的に暗くない?」
「まぁ、それが芸術ってやつなのかも? ウチらには分からないよね」
「……だってよ。あれ怪しいよな」
「呵呵、さぁね。てかあれだろ? 君がそれを見つけたって、今の君は無力に等しい。どうもできないだろ。月明刀が帰ってくるまでは大人しくしてるといいさ。君、ずっと気を張ってるからおやすみだよおやすみ」
「……いや、休んでる暇なんてない。とりあえず放課後そいつの所に行く。ったく、俺も馬鹿だった。なんで自ら武器壊すことしたんだか」
昼休みの終わりを告げるチャイムがなる。
その時、一階下にいる絵谷も椅子から立ち上がった。
「……描かないと」




