水無月(2)
時が巡って三限目。
ついに恐れていた班活動が始まろうとしている……!
先生はふつうに「班で話し合ってください」って言ってるけど……見くださいこれ。完全に関係ない話してますよ……?
別に、真面目に授業受けたい訳じゃない。
でも、浮きすぎててとてもじゃないけど話に入れない。
これはこれですっごい嫌。
「はーい、班で話し合った意見を黒板に書いていってね〜」
いやだから先生、うちの班一切話し合ってないんですって。
でもラッキーなことに、あいつらが勝手に書きに行ってくれた。おかげで助かったっていうのも変だけど、なんとかなった。
班は四人。うち二人がふざけながら前に何か書きに行ったから今班に二人でいる。何か話した方がいいのかな。
「ねぇあんたさぁ、なかなか話せなかったでしょ? ごめんねぇ。あいつらチョーシ乗ると多分あーなっちゃうんだよね」
班員が話しかけてきてくれた。黒髪のポニーテールで、緑の瞳が特徴的。制服の着こなしと言い喋り方と言い、完全にギャルそのものなんだけど、言ってることがめっちゃいい人そう。
「いや、全然大丈夫だよ。あ、えっと……」
この人、名前なんだったっけ……?
「赤沼樹ね。転校してあんまたってないし? 名前覚えらんないよねー。あーあと、別に気ぃ使わなくていいよ。俺もあーいうのあんまり好きじゃない。DQNなんぢゃね?って言いたくなる」
あっ、意外と俺っ子なんだ。本物初めて見たかも。
「はぁ……」
思った以上に何も言葉が出てこない。うーん残念。
「てかあんた、なんかにおうね?」
「……えっ!? におう!? 俺そんな…?」
「あーごめん違う違う! そういう事じゃない。あんた、なんか…お化けかなんかついてる? そういう意味でにおうわ」
まさかの霊感女子……?
「……お化け?えっ、まじ?」
「いや知らねーよ。気になるから聞いたんだよ。まぁ、あれだよ、なんかしらそんな変な事に巻き込まれそうになったら気ぃ付けときな」
「わ、わかった」
そういうと前に行ってた人達が帰ってきて授業が再開した。なんだろ、キャラ濃い人だったな。
そうしてなんとなく授業が終わっていった。四限目は個人の授業だったし、特に誰と関わることもなく時間が過ぎていく。勉強は正直好きじゃない。でもやらなきゃいけないことだけはちゃんとやる。そんな感じで……。
気がついたら四限目が終わってた。
「お疲れ〜、あっち人多いけん動いてきたわ〜」
華代が俺の前の人の席に座る。この席の主はどうやら別のところでご飯食べるみたい。
「お疲れ様〜、今日も疲れたわ」
まぁ、疲れてはいるけど。死ぬほど疲れてる訳でもない。この疲れたって自然と出てくるもので、本当に不思議なものだよな。
「そうそう、三限目とか見よったよ。そっちの班変なやつ多かろ? 大変やない?」
「うーん。まぁ賑やかだね。あっ、だけど赤沼さんって人が優しいかも。一応気を使ってくれてたみたいで……」
「赤沼? おったかね……。まぁ、もともと違うクラスやったんやわ多分。私も全員まだ把握出来てないんやなぁ」
ん? うちの学校は確か人数少なくて三クラスしかないはず。把握しきれてない事ってあるんだ。赤沼さんとか目立っててもおかしくなさそうだけど……。
「あぁそうや! 昨日暇やったけん家でお菓子作ってきたんやけど……いる?」
そう言って華代が出したのはマフィン。綺麗にラッピングまでされていた。
「いいの!?」
「いいよ〜、上手く出来とるか分からんけど……」
「わーありがとう! 帰って夜食べよっ!」
入れてきた小さいバックの隙間からもうひとつ包が見えた。多分ひなみの分だったんだろうと思う。
ここ一週間来てないけど、本当にひなみ大丈夫かな……。
暗い空間に人型の何かがぽつり。
そこに白髪の少女が訪れる。
「黒川はちゃんと送ってきたよ。別にあなたの言いつけでもなんでもなく、自分でやった事だけど……」
「えーなに、黒いの人間に戻っちゃったの? つまんないのー」
「いや、それでいいんだよ」
「なぁ、サンサン……いや、サナ・ヴァインベルガーは人間の事本当に嫌いなの? なんか優しくない?」
「人間なんて大っ嫌いだよ。でも、別に元々の仲間? には冷たくしなくていいんじゃないかなって思っただけだよ」
「へぇ〜、やっさしー」
「そういえば、今回の生贄って結構いい子なんでしょ? どうするの」
「別に? 俺は人間食べる趣味はないし。いつも通りかな。いい子悪い子なんかどうでもいいからなぁ……」
少し冷たくニヤついた目が、サナを見ていた。




