皐月(5)
ところ代わり、とある空中にて。
「黒川、意外と早かったね」
白髪で、背中にコウモリのような羽が生えた少女が、青年のコートを引っ張って空を飛んでいた。
「いや、徹底的にあのウサギ野郎を潰そうとしたんっスけどね……。まさか自分も背後をつかれるとは……」
「あの緑髪の子は五年前の子でしょ? 大きくなったね」
「えぇ……五年前?」
「あぁそうだ。魔術師になったの三年前くらいだもんね。知らないか。」
「まぁ……俺もいろいろしてきたっスけど、お嬢さんに比べるとそうでも無いっスからねぇ……」
「そうだね。でも、あなたはそろそろ夢から覚める時間だね。彼の刀に刺されたことで、邪神様の呪いは消えてる。あなたはもうただの人間なんだよ」
「…………」
「黒川がこれをどう思ってるのか、私にはわからないけど、私はこれでいいと思ってる。今度こそ、真っ当な道を歩んでね」
少女はそういうと、青年を道の端に降ろして飛び去って行った。
「真っ当な道……人間って、そんな簡単なもんじゃないっスよ」
また一方、翌日の放課後、海響高校では、二年生の少年二人が一年生の工学科を目指して歩いていた。
「そういえば君、なんでまた刀を壊すようなことしたのかね」
「別に。壊したかったわけじゃねぇよ。最終戦争(邪神様を倒す)の前にザコ潰ししただけだ」
「それ、結局彼を助けたって事なんじゃ?」
「うっせぇ」
「はいはい。すまなかったすまなかった」
一年生工学科教室前。
「大輝、ちょっといいか」
「おぉ、雷斗じゃん。どうした?」
「いや……ここで話せることじゃねぇから、ちょっと来てくれ」
「お?」
校舎の裏路地。倉庫の列のさらに間。そこで雷斗は話始めた。
「いや……先に謝る。お前に直して欲しいものがある」
「どうした? またゲームのコントローラーでも壊したか?」
「いや……そうじゃなくてな」
そういうと、雷斗はカバンから布で巻かれた短刀を取りだした。
「家宝、月明刀。神崎家に代々伝わる刀。本体は元から錆びていた」
短刀は刃先が欠けているどころか、多くのヒビが入っていた。
「え〜刀か……しかも家宝」
「頼む。天才と呼ばれるお前にしか頼めねぇ」
「あーまぁわかった。やってみるよ。でも、時間かかるかもよ?」
「あぁ、ありがとう。神無月にさえ間に合えばいいから。大丈夫」
そういうと、大輝は教室へ帰って行った。
「にしてもまぁ……前々から思っていたが、そのボロ短刀が、よくあぁ綺麗な刀になるよな。人間なのに不思議な力だねぇ。これも陰陽師の家柄だからかね」
「さぁ。俺にもわからねぇ。家宝が反応するのは本家の跡継ぎになる者だけ。刀が凄いのか家柄が凄いのか。俺はそこまで考えたことはないな」
「人間は大変だな。血筋とか家柄とか面倒くさい」
「……あぁそうだな。お前はどれだけ人間に化けていたとしても、結局は妖怪なんだもんな。お前にはわかんねぇか」
二人は帰路につく。
神無月まで、あと四ヶ月。




