皐月(4)
結局、あの日は華代と合流することなく帰った。
この町にある邪神様の昔話。これが、あの全身真っ黒男に襲われた理由に繋がるのか……? でもなんで? 俺になんの関係が……?
六月を迎えようとしているのに珍しくカラッと晴れた日。日差しが眩しい。
そういえば今日はひなみが学校を休んだ。体調崩したのかな……。
一日中邪神様のことについて考えてたら、いつの間にか放課後を迎えていた。時間の流れ、早すぎません?
「とやまる〜、帰ろ〜」
華代がいつもみたいに話しかけてくれる。
華代には邪神様とか、そんな変な話ししちゃダメだから気をつけないと。
「うん、帰ろっか」
そう言った時
「とーやせーんぱいっ!! ちょっと来てください!!」
旭飛が教室に飛び込んできた。
「あぁ……ごめん、先に帰ってて!」
「はーい、わかった! じゃあね〜」
旭飛の様子からみてまた邪神様関連のことだと思う。華代に聞かせたらダメだ。
旭飛に連れられて廊下を歩く。
「いきなりすみません……この間のやつに新しい資料見つけたのでつい…」
ちょっと申し訳なさそうにしていた。
「いやいや、全然いいよ! で、なにがあったの?」
「それがなんですけど……あっ、小春ーー!! あれ見せて!!」
そういうと小春ちゃんが見せてきたのはとても古い紙に文章が書かれたものだった。
「兎夜先輩、これ綺麗に一ページ飛んでたんです。これ……」
書かれている文章は
この負を断ち切る力を未来に託す。
これだけ。
「ん、これだけ?」
「そうなんです。でもこのページにしっかり当てはまるんですよ……」
……ふと気がついた。
「小春ちゃん、制服やけに汚れてない?」
「そーなんですよ! 小春ったら学校サボって資料探し回ってたんです。勇気ありますよね〜」
「ははは……どうしても気になってちょっとサボってしまったっちゃん。でもどうしても調べないかんって思って…」
「なんでそんなに?」
純粋に疑問だった。どうしてこの小春ちゃんは邪神様関連のことにとても興味関心を持っているのか。
普通の子ならここまで気にする事じゃないと思うんだけど……。
「私、小学生のときにこの町に引っ越してきたんです。そのとき、自然豊かなこの町が大好きで色々調べていたんです。その時に見つけたのがこの邪神様のお話なんです。最初は私も信じてなかったんですけど、5年前の秋に見たんです。生贄を捧げる儀式のようなものを。それ以降ずっと気になって……」
儀式を見た……じゃあこの話はまだ今でも続いてるってことか。
「そんな訳で、私もたまに手伝ってたんです。ほんと、この町いい所なのにそういうところ怖いですよね。」
いやもう怖いってレベルじゃない気がする。
「じゃあ……俺はどうしたら?」
ここでまた下校のチャイムが鳴った。タイミングが悪すぎる。
そうして俺は一人帰路に着いた。
とにかく、俺にはこの負を断ち切る力ってやつがあるらしい。いやでも、どうして俺なんだろう……。
そんなことを考えていた時だった
「お久しぶりっスね。元気にしてたかい?」
この声は間違いない……!! あの時の全身真っ黒男!!
「……黒川っスけど。まぁいいか。んで、邪神様のこと、何かわかったっスか?」
この人絶対邪神様に関係してるやつだ……。ん、これ……?
「どうせ真っ黒とかなんとか言われてるだろうと思って軽く心を覗いたんッスよ。案の定だったが」
心の声が聞こえてる……!? どうしたらいいんだろこんなの。
「どうもこうもないっスよ。ただ、死にゆくだけで」
途端また足が動かなくなった。
どうしたらいい、どうすれば……この間みたいに誰が助けてくれるなんて期待できない……。
黒川はあの本をめくってる。ほんとうにやばい。
でももし、その邪神様伝説が本当なら、俺にその負を断ち切る力みたいなのがあるのなら……!!
全力でリストバンドに念をこめてみる。
「なんとか……なってくれ……!!」
次の瞬間リストバンドがピンクに光った。そして
「うわっ!えっ、なにこれ……銃!?」
リストバンドが、俗に言うハンドガンになった。
「へぇ……やっと目を覚ましたって訳っスね。面白いじゃねぇっスか……!」
黒川がそういうと足が動くようになった。代わりに数本の矢が飛んできた。間一髪でなんとか避ける。
「これくらいならかわせるんっスね、じゃあ、どれくらいまで避けれるか見せてくれよ!!」
ページをめくってなにか言ってる。すると空中に今度は槍とか剣とかとにかく沢山浮いてる。
てか、ずっと逃げてばっかでもどうしようも無い。何とかしないと!!
飛んでくる数本の槍を若干かすりつつ避けて、あとは電信柱を使って防ぐ。銃を出せたところで、マンガみたいに身体能力が跳ね上がるとかではないみたい。
「撃たなきゃ、じゃないとやられる……!!」
電信柱の裏から、あいつの足元を狙う。マンガとかでは、相手の動きを止めるために足を撃つシーンがある。これだ……。
腕が震える。本物の銃なんて使ったことない。
狙いを定めたそのとき
ガタガタガタ……地面が揺れた。
「クソっ……これじゃ狙えない!!」
「あんた、戦ったこととかないっスよね? こんな状況じゃ狙えないだろ?」
じゃあこの地震もあいつの……!! これどうしたらいいんだ。
突然後ろから爆発音と強い衝撃がした。為す術なく吹き飛ばされる。
やばい、ほんとにやばい。今の爆風で銃がどっかに行った……。最悪すぎる。
あいつが寄ってくる。やばい、ほんとうに死ぬ……!!
「こんなやつが守護者に選ばれるなんて、この町も終わりっスね。ほんと」
「……なぁ、あんたはどうして俺を狙うんだよ。あんたにとってなにか不都合でも……」
黒川がため息を着く。
「まぁ、冥土ノ土産ってやつっスかね。教えてやるよ。邪神様の話において、あんたは勇者のような立場なんっスよ。ようするに、俺からすると邪魔そのもの。消えて欲しいわけ」
何か言ってるすきに銃を探すけど見つからない。もうダメだ。
「あんた、本当に運が悪かったっスね。あの世でゆっくり悔やみな」
そう言ってあいつがページをめくった時……
あいつの胸から青白く光る物が突き出てきた。あれは、何……?
「ヴっ…!!…………まさか、後ろをつかれるなんてね……。俺としたことが……」
「チッ、クソザコが。さっさと人間に戻りやがれ」
青白く光る物体を引き抜かれたあいつは、その場に倒れ込んで、黒い霧と共に消えた。
「えっ…あっ…………」
敵か味方かわからない。ただ、青白く光る刀を持った、緑髪の少年がそこに立っていた。
「お前が守護者か。ほんと、大したやつじゃねぇな」
なんだろ……すごく冷たく見下されてるような感じがする。助けてもらってるのにお礼がなかなか言い出せない。
「これ、お前だろ。銃持っててこのザマかよ、情けねぇ」
彼は俺の所に銃を投げ捨てる。正直雑。
「あっ、ありがとう……ござい……」
「あ? お前みたいなやつ、すぐ死んじまうからな。クソザコが」
そういうと、少年は道の向こうに消えていった。
何とか助かった……。でも、あの人誰なんだろ。




