第3話:ママの内緒(中)
学校に行くと昨日言っていたとおり、早乙女は仕事で休みだった。
早乙女とは今の関係になってからも、学校では何も変わらない。
多少前よりは話すようになったかもしれないけど、誰も気づかないくらいだろう。
「るりちゃん、よりによって今日仕事なんて……オレついてねぇなぁ」
「はあ?」
時刻は昼休み。
俺は友達の榊 誠也と昼メシを食べてんだけど、コイツは急に何を言い出すんだ?
「なんで今日早乙女が来てなかったらついてねぇの?」
俺が聞くと、変なものでも見るような目で見られた。
わけわかんね。
「お前……それでもるりちゃんファンクラブの一員か?!」
「違うんだけど」
「しらばっくれるな!!お前最近るりちゃんとの会話数増えてんじゃねぇか!!」
こんな近くに気づく奴がいようとは……。
「つぅか、で?今日って何かあんのか?」
「今日はな……なんとるりちゃんの誕生日なんだよー!」
なあんだ、そんなこと。
……って、なにぃぃぃーーーー!!!!
聞いてねぇ!聞いてねぇぞ!?
なんでアイツ言わねぇんだよ!!昨日のアレはそういうことかっ。
何も準備してねぇぞ? これヤバくね?
ちょっ……!マジどおしよ!
「この日にプレゼント贈って恋人になろうって奴は、星の数ほどいたはずだぜ?まぁオレもその1人なんだけどな。って慶真?どうしたんだよ?」
誠也が何か言ってたけど無視した。
学校が終わると、俺はある場所へと急いだ。
ある場所っていうのは、早乙女の家。
今日はやることがてんこ盛りだ。それもこれも早乙女のせい。
とびっきりの誕生日にしてやるから覚悟してろよ!
ピーンポーン。
「はーい。どちら様でしょう?」
インターホンを押すと早乙女の母親らしき人がでてきた。
にしても若くね?あれ?もしかしてお姉さん?
「ええと……、早乙女るりさんのお姉さん、ですか?あれ、でもお姉さんいるって言ってなかったような……」
キョドってる!
俺キョドっちゃってるよ!?
「ふふ、私はるりの母親よ。お姉さんだなんて嬉しいわ」
「す、すいませんっ。あっ、俺西条 慶真っていいます」
早乙女のお母さんのほほえみにタジタジだ。
早乙女がこの人血をひいてるとは思えん。
「それで、なにかご用かしら?」
おっと、本題を忘れるところだった。
「俺と俺の姪と甥が、いつもるりさんにお世話になってるのは知ってますか?」
「聞いてるわ」
「よかった。ええっと、それで俺……るりさんにすごく感謝してるんです」
なんか、気恥ずかしい。
「やっぱ俺1人じゃ限界ってあるから。でも、今更恥ずかしくって……礼とか言えないんです」
「それで?」
早乙女のお母さんは楽しそうに優しい笑みを浮かべている。
「今日はるりさんの誕生日だって聞いたんで、3人でお祝いしてあげたいんです。日頃の礼も兼ねて」
俺は早乙女のお母さんの目を見て言う。
「責任をもって送りますから、るりさんにうちで晩ごはんを食べてもらっちゃダメですか?」
娘の誕生日、だもんな。やっぱもう準備とかしちゃってるかなぁ……。
「いいわよ?るりもきっと喜ぶわ。今日だけるりの門限を、11時に延長しちゃう!」
えっと……。これはオーケーってことだよな?
「あ、ありがとうございます!門限必ず守ります!!」
さあ、ここからが大変だな。
俺は走った。もうメ○スばりに走ったね。
まずは晴香達を迎えに行って、次に食材やらケーキやらいろいろと買いに行った。
今は今で料理作りに専念してるわけだ。
晴香も早乙女の誕生日ってこと教えると、空連れて自分の部屋に行っちゃったし。
何かプレゼントでも作ってんだろうな。
そんなことを考えていると、料理が完成した。
あとは飾り付けか……。とりあえずテーブルクロスひいて、買ってきた花を花瓶に入れて置いてりゃそれっぽいだろ。
俺にそういう美的センスみたいなのは求めないでくれ。
母さんの腹の中に置いて来ちまったんだよ。
ゴクリ。とは、俺が唾を飲み込む音。
俺と晴香と空は今リビングで待機中。
ちなみに俺と晴香の装備はクラッカーのみ。空はなし。
弱小パーティーだな。 あっ、パーティー違いか……。
すみません。オヤジギャグでした。しかもウケないやつ。
「ママ来ないね」
晴香が不安そうに言った。
「遅くなるって言ってたからな。でも来るって言ってたし、絶対来るよ」
「あっ、あうっ」
空が嬉しそうな声をあげた。
「おじゃましまーす」
来た!!俺と晴香が気合いを入れ直す。
「遅くなってごめんね。すぐ帰られないといけないんだけど……」
「「たんじょう日、おめでとおっーーー!!!」」
パアーン!パアーン!!
「え……?」
早乙女が目を見開いて固まっている。
「主役が遅いんだよ。ほら、料理だすからさっさと座れ」
俺は空を早乙女に手渡してそう言った。
さて、温めなおさないといけねぇな。
つぅか、料理がテーブルに並んだっていうのに、早乙女はボーッと突っ立ったままだ。
「ママ、ごはんさめちゃうよ。はやくすわろう」
「でも、あたし帰らないと……」
「今日だけ門限11時に延長だってさ。ちゃんと了解とってきた」
「ていうか、なんであたしの誕生日って知ってるのよ?!」
逆ギレっ!
普通そこ感謝するとこじゃねぇの?
つぅか説明すんのメンドイ。
「それはいいから早く食べるぞ。せっかくの料理が冷めたらショックだ」
俺の言葉に早乙女は渋々といった感じで席についた。
なあ、なにその態度。今日は照れ隠しとして認識しとくけど、違ったら怒るからな。
何はともあれ、みんなで手を合わせる。
「「「いっただっきまーす」」」
「なにこれ!?おいしい!なんで男のくせにこんなに料理上手いのよっ!」
「お前それ男女差別。やってりゃ誰だってこれぐらいできるようになるっての」
こんなこと言いながら、実は嬉しかったりすんだけど……それは秘密の方向で。
文句っぽく言いつつも、めっちゃおいしそうな顔で早乙女は食っている。
まぁ、なんつうか……かわいい、のかもな。
そんなふうに、俺は空に離乳食をやりながら思ったわけだ。




