第2話:ママの内緒(前)
ママの内緒は
前・中・後と続くつもりです。
あの日から、早乙女はよくうちに来てくれるようになった。
噂は本当だったようで、早乙女はモデルをしているから来れない日もあったけど、放課後はほぼ毎日来てくれる。
で、今日もそうなわけだ。
「おじゃましまーす」
「ママだ!」
早乙女は一度家に帰ってから来ている。つまり、ちょうど俺が晩メシの準備で晴香や空の相手ができないときってわけだ。
だから仕方ないとは思うよ。
思うけどやっぱり、早乙女が来たときの晴香の瞳の輝きには嫉妬しちまう。だって俺もパパなんだぞ?
「晴香ってば急ぎすぎだよ」
笑顔の晴香に腕をひかれながら早乙女がやって来た。
別うらやましいわけじゃないぞ?俺だって腕ひいてもらったことくらいあるんだからな!
「あのねママ。はるかようち園で絵かいたの!」
「どんな絵?」
絵って……!俺には見せてくれてないじゃん!?
晴香の中で、パパ=ママじゃなくて、パパ<ママの式が成り立ったのか?!
ついに恐れていた事態が……!
「パパとママと空とはるか!!せんせーがね、ほめてくれたんだよ」
晴香……。俺は、パパは今ジーンときてます!少しでも晴香を疑ったパパを許してくれ。
「ホントだ!すごく上手に書けてるね。天才だよ!」
早乙女の奴、1人で見やがってずりぃぞ!
俺だって見たい!!
「早乙女ー、俺もー俺にも見せてくれぇ」
しょうがないなあ、なんて言いつつも早乙女は見せに来てくれた。感謝。
「おっ!マジでうまく書けてんなぁ」
やっべ。嬉しすぎてニヤニヤが止まんねぇんだけど?
「えへへ、そうかな?」
早乙女にくっついて来たらしい晴香が照れながら言った。
「そうだよ。早乙女なんか実物よりかわいく書けてるじゃないか!」
「んなっ!あんただって、晴香の絵の方が100倍かっこいいじゃない!!」
なんだってぇ?いや、否定はしない!否定はしないぞ?
だが、許すまじ!!
「絵の早乙女の方が1000倍おしとやかだ!」
「なによっ!絵の西条の方が10000倍優しそうじゃん!!」
くそぉ。言いたい放題じゃねぇか。人のこと言えねぇけど!
「ねえ」
俺たちがにらみ合っていると、晴香が俺たちの服を引っ張った。
「パパとママ、けんかばっかりしてるけど、チューはしないの?」
「「!!」」
「なみちゃんのパパとママは、いつもしてるんだって言ってたよ?あいしあってる2人はチューするんだよって」
なみちゃんのパパさんとママさんっ!
幼稚園児の親代表として言わせてもらおう。
子どもの前で、んなことしてんじゃねぇぇーー!!!
「あの、な、晴香。そおいうのはだなぁ……」
「んぎゃぁ、うんぎゃあ」
ナイス空!なんていいタイミングなんだ。将来いい男になるぞ!
「悪い早乙女、空見に行ってくんねぇか?」
「わかった!まかせといて!!」
早乙女の言葉にいつも以上の気合いが入っているのは、きっと気のせいじゃないんだろうな……。
晴香の言葉をなんとかはぐらかし、俺はいつも通り早乙女を送るために外に出た。
早乙女にはメシの準備の間だけ、2人の世話をしてもらっている。まぁ、メシぐらい食べてってもらってもいいんだけど、早乙女にも自分家があるから。
んで、1人で帰すわけにもいかないし、晴香に留守番頼んで俺が送ってるわけだ。
早乙女は誰もが認める美少女だからなあ、ちょっと…いやかなり口悪いけど。
それも見た目にはわかんねぇし。
「今日はさすがに焦ったなぁ……。まさかチューとは。なみちゃんのパパママに抗議したい気分だ」
「お願いだからしないでね。……でも、確かに焦ったかな」
「俺、赤ちゃんはどこからくるの?とか聞かれたら気絶するぞ。そんときはたのむ」
「あたしにどうしろってのよ?!気絶したら叩き起こしてやるから!!」
おお、おお、顔真っ赤にしてまあ。初々しいねぇ。
「あっ!着いたな」
話をしていたらあっという間に早乙女家に到着した。
「明日も来てくれるのか?」
「明日……」
いつもならすぐ答えるのに、どうしたんだ?
「用があるなら無理しなくていいんだぞ?」
「あっ、違うの!仕事があって遅くなるかもしれないけど、晴香と空に会いたいし行くよ」
あくまで晴香と空、ね。ま、わかってるけど。
「わかった。それじゃ、また明日な」
「うん、ばいばい」
読んでくださった方ありがとうございました。
次回も読んでくださると嬉しいです。




