略称のお勉強
「模試で全問正解だったら、ママに新しいソフトを買ってもらうんだ!」
「あっ、そう」
「パパには、お正月映画に連れてってもらう約束もしてるんだ」
「ふぅん」
「どう? 合ってる? マークシートじゃないからさ、漢字の間違いが無いかだけ不安なんだよね」
「略称の問題、全滅だよ」
「えっ、ウソ! ……あぁ~、そっちかぁ~」
「そこまで惜しい内容じゃねぇよ。まず、これ」
「ジーディーピーだろ? 銀座・ダンス・パーティー」
「グロス・ドメスティック・プロダクツ。国内総生産だ。次、こいつ」
「ピーケーオー。ポリス・ノック・アウト」
「叩きのめすな。ピース・キーピング・オペレーションズ」
「タバコに関係ある?」
「無い。国際連合平和維持活動のことだ。最後に、ここ」
「これは簡単だよ。信長公のことだろ?」
「オフィシャル・ディベロップメント・アシスタンス。政府開発援助だ。お前、覚える気ゼロだろ?」
「興味ねぇんだもん。もっと身近な単語の方が良いって。オリジナル・ビデオ・アニメーションとか、ソリッド・ステート・ドライブとか」
「ロール・プレイング・ゲームとか?」
「そうそう。そういうジャンルのテストって無いの?」
「有るわけねぇだろ。この調子じゃ、家庭教師を変えた方が良い。俺には、お前の成績を伸ばせない」
「そんな冷たいこと言うなよ~。あちこちで箸を投げられて、先生だけが頼りなんだからさぁ」
「それを言うなら、匙を投げるだ。箸を投げてどうする」
「じゃあ、札束を投げる。週三コマに増やしてもらうから、見捨てないでよ。最近、サークルでカノジョが出来て、出費が多いんでしょ?」
「……模試までだからな」
「やったー。バンザーイ! バンザーイ! バンザーイ! そうと決まれば、明日から頑張るぞ!」
「コントローラーをしまえ、馬鹿者。今日から頑張るんだ」