学園へ(3 馬車のメンバー)
初めて小説を書いています。
プロローグで勇者や異世界の背景を小出しに説明をしています。
書いてる途中で辻褄が合わなくなることも多々あり、勇者や異世界の背景修正が多くなっています。
しばらくの間、ご容赦をお願いします。
王族の一人で、第6位王位継承者のカミン・フランギル殿下が編成に異を唱えた。
「私は昨夜、神託を受けました。
『黒髪黒目の勇者に従え』と。
私が思うにきっと黒髪黒目の勇者とは、勇者ミノル殿のことかと。
私は神の啓示に従い、ミノル殿の従者になるべく、ミノル殿の馬車に移りたいと思う」
これに驚いたのはカミン陛下御付きのクレシア執事だ。
「殿下、発言をお許しください。
信託を受けたのであれば、いずれは神の御心に従うのが必須と考えます。
しかし、此度は殿下をジェノス殿の馬車に乗せるようにと陛下から申し付けられております。
軽々に判断できることではありません。
しかも慌てずとも、神の啓示に導かれれば、自ずと道はミノル殿に向かって行くでしょう。
ここは学園までジェノス殿の馬車に乗るのが良いのではないでしょうか?」
勇者たちを見送るために来ていたイニゴ・アリスタ大司教からも意見がでた。
「うむ。
クレシア殿の申すこと、もっとも。
されどカミン殿下は神託を受けておる。
陛下のお言葉も反故にはできぬ、であれば今一度、この場にて神託を願うことにしよう。
神託が下されなければ、ジェノス殿の馬車に乗り学園に向かおう。
今一度私に神託が下されたら、ミノル殿の従者になり、ミノル殿の馬車に乗ろう。
神の啓示を疑うことは許されない。
殿下も神託が下されれば納得していただけるであろう。皆も心して見届けるがよい。
ここはジレス司教に神託を受けてもらいましょう。ジレス司教協力を願います」
空を仰ぎ見るカミン。
ゆっくり跪き祈りを捧げる。
「神よ!
神よ!
我らの神よ!
私は、御心に正しく従いたい。
私は、この時この場所より、勇者ミノル殿に従えばよろしいのでしょか?
今一度、ジレス司教に正しい道を示していただけるよう、お願いいたします」
カミンの隣で祈りを捧げるジレス司教に天からの光が射し込む。
厳かな光を纏うジレス司教。
やがて光は薄れ消えた。
イニゴ・アリスタ大司教が神託の確認を促す。
「ジレス司教、いかがでしたか?
神託はいただけましたか?」
「はい、カミン殿下、イニゴ大司教。
神託は下されました。
『この時この場所より、勇者ミノル殿に従え』と」
にこやかにほほ笑むカミン。
幼くして既に賢者との誉れ高い殿下だ。
そして大賢者の生まれ変わりと噂されている少年だ。
「神よ。感謝申し上げます。
ジレス司教、私が勇者ミノルの馬車に乗れるように調整を願います」
カミンは神に感謝をした後、立ち上がるとその足でミノルの馬車に向かった。
そのカミンに従い子供が一人付いていく。
「アサヒよ、お前も付いてきてくれるのか?」
アサヒと呼ばれた黒髪グリーンの目を持つ子供は、日に焼けた浅黒い顔に白い歯を見せながら答えた。
「もちろんです。
殿下のあるところが、私のあるところです。」
幼少ながら刀を挿す姿も様になっている。
カミンは嬉しそうに答えに応えた。
「うむ。
私は得難き友を得ている幸せ者だ」
2人は連れ立ってミノルの馬車に乗り込んだ。
各馬車にも騎士の子供たちが乗り込んでいる。
ミノルはカミンの声を聞いて、謁見の時に割り込んできた声と似ていると感じていた。
馬車に乗り込む際ににっこり微笑む少年。
(まさかこの少年があの時の?
あれは何だったんだろう?)
騎士の子供たちが乗り込むと、次に馬車に乗り込むのは平民の子供たちだ。
平民の子供が乗り込み終わると、いよいよ出発だが。
ここで、先に平民の子供の立場を確認しておく。
選抜組の子供たちの多くは貴族だ。
もともと貴族は武勇や魔法に優れた者を取り込み歴史を重ねている。
なので自然と才能が豊かな子供が生まれてくる。
平民にも少数ではあるが隔世遺伝や稀に才気あふれる子供が生まれる。
しかし、才能に恵まれた平民の子は幸福かと言えばそうでもない。
ここは身分差別のある世界なのだから。
この世界の魔物討伐パーティ内訳についてもう少し知っておく必要がある。
もともと魔物討伐パーティに人数の制限はない。
むしろ多い方が良いと言う意見が多い。
ただし、人数が多いと勇者との繋がりが希薄になりがちな従者が増えることも確かだ。
パーティメンバーには、
敵の正面に陣取り、後方パーティメンバーに行くのを妨げる盾役
剣士などの近接攻撃役
魔法や弓などの後方攻撃役
盾役や近接攻撃役を回復や防御魔法をかけるなどサポートする後方支援役
これらは戦闘を主に行う戦闘メンバーだ。
罠や敵を感知する索敵役
自由に動き仲間を支援する遊撃役
パーティの移動や食事支援役、夜警役、武器や魔道具のメンテナンス役、本国との連絡役など
これらは支援を主に行う支援メンバーだ。
さて、パーティの主要メンバーは戦闘メンバーで貴族の子供がなることが多い。
貴族の子はいろいろと優遇されている。
平民の子が同じ程度に優秀なだけでは、戦闘メンバーに入ることができない。
平民の子は、支援メンバーになるべく修行を強いられ、支援メンバーとして参加させられる。
貴族と平民、どこに居ても、何をしても、身分差別がある。
現代社会においてもエベレスト山に登山者を導くシェルパーの多くは名前が残らない。
縁の下の力持ちとして参加しているからだ。
才能に恵まれた平民の子も同じで、縁の下の力持ちとして生きて行くしかない。
平民はやはり労働者扱いをされることが多い。
平民の子供には基本的に選択肢はない。
話を馬車に乗り込んだ時に戻す、次は平民の子供の番だ。
平民の子供は騎士の子供が乗り込むと、一斉に目的の勇者の馬車に駆け寄り、貴族子弟の許可を得ようとアピールする。
運次第だが、貴族子弟と仲良くなれば家族が恩恵にあずかれるので、裕福そうな力のある貴族に知被けるようにかなり真剣にアピールしている。
貴族子弟たちは平民の子供の情報が有るわけでもないので、役に立ち扱いやすそうな平民の子を、周りの貴族子弟と相談しながら決めている。
そして貴族子弟間で合意が取れたら、平民の子供に許可を与えて馬車に乗せている。
多くの平民の子らにも避けられたミノルのところにも、子供が2人、駆け寄ってきた。
どうやら彼らは、世俗や勇者のことに疎いらしい。
ミノルのことはもとより、カミン殿下のことも良くわからないようだ。
2人は馬車の中のハジメたちに許しを乞うた。
「勇者様、貴族様、騎士様。
私たち2人が馬車に乗ることをお許しいただけますか?
ぼくたち大人しくしています。
お願いします」
ミノルは思う。
(8歳にして身分の違いをしっかり理解しているのだな。
おれが許可を出しても良いのだろうか?)
ミノルがカミンの方を見ると、カミンが頷く。
そして、にこやかにカミンが応える。
「もちろんですとも。
10日間よろしく願います」
2人はホッとした表情を浮かべ、馬車の端の方に控えて座った。
全ての子供が馬車に乗り込み、少し荷物の調整移動が行われた。
その間、各馬車の子供たちは各々自己紹介をした。
ハジメの馬車のメンバーは。
勇者 ミノル・サトウ
殿下 カミン・フランギル
騎士 アサヒ・パウエル
平民 ロバート・グラウバ
平民 マービン・エッジ
この5名で馬車の旅を行うことになった。
幌馬車の一団は順調に進んでいく。
アサヒやロバート、マービンが緊張の面持ちに対して、カミンはにこやかにほほ笑み風景を楽しんでいる。